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不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2015年2月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

供給と価格動向から分析2015年マンション市場の現状と予測

首都圏では新築の供給戸数が大幅減コスト・地価アップで価格は上昇

 2014年の首都圏1都3県の新築マンション供給戸数は5万2455戸と、3年ぶりに6万戸を割り込みました。ここ10年間ではリーマンショック後の2009年に次ぐ少なさです。特に東京都は前年比約25%減と大きく落ち込み、神奈川県(同約25%減)や埼玉県(同約37%減)も大幅減となっています。千葉県だけは同4%減と小幅な減少にとどまりました。
 新築マンションの供給が低迷した要因について、東京カンテイ市場調査部主任研究員の高橋雅之さんは以下のように分析しています。
 「政権交代に伴い景気回復期待が膨らんだ2013年は、消費税増税の駆け込み需要も強まってマンションの供給が活発化しましたが、2014年はその反動で減少に転じた形です。都心部や東京湾岸など一部エリアでは好調な市況が維持されましたが、それ以外の近郊・郊外エリアでは消費税増税による生活費の負担増が影響し、一般勤労所得者のマンション離れが進んだようです」
 また、このところのマンション価格の上昇も、供給にはマイナスに働いたと考えられます。東京都では2014年の平均坪単価が300.8万円と、ミニバブル期のピークである2008年(281.7万円)を大きく上回りました。その他の3県も坪単価が軒並み上昇しています。東日本大震災の復興需要や、東京オリンピックを見越した工事需要の増加などで建築コストが上昇していることに加え、都心部を中心に地価上昇の動きが広がっていることが、価格上昇の要因といわれています。
 一方、中古マンション市場でも物件の流通事例数が減少しています。首都圏で最も落ち込みの大きかった東京都は2014年の流通事例数が前年比約20%減少し、4年ぶりに20万戸を割り込みました。
「2012年から13年にかけては中古マンション価格の割安感が強まり、売れ行きが好調で流通事例数が減少しました。加えて13年以降は地価上昇に伴い中古価格の先高感が強まり、売主が売り急がずに様子を見る動きが広がったことも、物件数の減少につながっているとみられます」(高橋さん)※【注意】参照

近畿圏では新築・中古とも価格上昇で物件数は減少

 近畿圏でも新築マンションの供給戸数は前年より大幅に減少し、大阪・兵庫・京都の2府1県の合計が5年ぶりに2万戸を割りました。ただ、前年の駆け込み需要からの反動減となった首都圏とはやや状況が異なり、近畿圏では2012年を直近のピークに2年連続で供給が減少しています。特に大阪府では2013年が前年比マイナス16%、2014年が同マイナス約32%と2ケタの減少が続きました。
「大阪市内では2012年に梅田や阿倍野周辺で大規模タワーマンションの分譲が活発化したこともあり、供給戸数が伸びました。しかし2013年以降は価格上昇に伴い、売れ行きが鈍化して供給にブレーキがかかったようです。ただ、京都では市内中心部の高額物件にセカンドハウス的なニーズが根強く、売れ行きが好調なため供給戸数が伸びています」(高橋さん)
 中古マンションの流通事例数は近畿圏も首都圏と同様、2年連続で減少しています。新築物件の価格上昇や消費税増税に伴い、中古物件の人気が高まり、物件の在庫数が減少していることが要因のようです。物件数の減少で価格は上昇しつつあり、大阪府や京都府では2年連続で中古マンションの平均坪単価が上昇しました。※【注意】参照

愛知県・福岡県も新築供給が減少割安な中古物件の人気が高まる

  愛知県では新築マンションの供給戸数が減少気味となっており、2014年は前年比約18%のマイナスとなりました。東京などと異なるのは、前年の2013年も供給はさほど伸びていなかった点です。
「名古屋市内では地下鉄名城線沿線など中心部から東側の住宅地でコンスタントにマンションが供給されていますが、新築物件の価格上昇に伴ってニーズが一戸建てにシフトし、供給が伸び悩んでいるようです」(高橋さん)
 新築価格の上昇により割安感が強まった中古マンションの人気が高まり、流通事例数は2年連続で減少しました。ただ、中古物件の価格は今のところ明確な上昇は見られません。
 一方、福岡県の新築マンション供給戸数も2014年は減少しましたが、こちらは東京と同様、2013年に供給が大きく伸びた反動で落ち込んでおり、前年比の減少率は約40%と大幅でした。
「福岡市内ではアジアを中心とした海外からの投資ニーズもあり、2013年に新築物件の供給が活発化しましたが、消費税増税と物件価格の上昇が反動減につながったようです」(高橋さん)
 福岡でも割安な中古マンションの売れ行きが好調で、流通事例数は減少傾向です。それに伴い、中古価格も上昇が続いています。※【注意】参照

史上最低金利が購入に追い風新築供給が回復する可能性も

 このように大都市圏では消費税増税や物件価格上昇の影響で新築マンションの供給が軒並み減少しています。建築コストや地価の上昇傾向が続いているので、物件価格は2015年も上昇傾向が続くとの見方が多いようです。住宅市場へのテコ入れのため、国では贈与税の非課税枠拡大や住宅エコポイントの復活などを打ち出していますが、効果は限定的との見方も多くなっています。
「ただ、住宅ローン金利が史上最低水準になっていることが、物件購入には追い風です。フラット35の金利引き下げ幅の拡充もプラス要因でしょう。低金利を活かして無理のない資金計画を心がければ、希望の物件が買いやすい状況といえます」(高橋さん)
 消費税率の10%への再引き上げが2017年4月まで延期されたこともあり、マンション市場は大きな波乱要因はなさそうです。「上半期の売れ行き次第では、新築物件の供給戸数がある程度は回復する可能性もあります」(高橋さん)との見方も。消費税が8%のうちに物件を取得するのも賢い選択といえるかもしれません。

【注意】

新築供給戸数および中古流通事例数の公表データについて新築マンション供給戸数に関して、2013年までは主にファミリータイプの住戸を対象にすべく専有面積30㎡未満の住戸を除いて集計してきましたが、今回からはより実態に即した集計を行うために、分譲した事実を確認した物件の分譲戸数を合計する方法に改めた“マンションデータ白書”の値を適用しました。なお、これに伴って中古マンションについても専有面積の条件は省かれているため、流通事例数に関してもこれまで公表してきた値よりも上振れている旨、ご留意下さい。

(データ提供:東京カンテイ)

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

大森 広司Hiroshi Omori

1962年東京生まれ。立命館大学法学部卒業。
編集プロダクション勤務を経て2005年より株式会社オイコス代表取締役。
現在、『SUUMO新築マンション』『スーモジャーナル』『月刊ハウジング』『都心に住む』などで、住宅問題全般にわたって取材・執筆活動を続けているほか、WEBサイト『AllAbout「マンション入門」』で、はじめてマンションを購入する人向けサイトのガイドとして記事を配信。
また、『日経トレンディネット』などで住宅・不動産最新トレンドの執筆を担当している。
主な著書に『はじめてのマイホーム買うときマニュアル』、『マンション購入完全チェックリスト』(共に日本実業出版社)『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。