不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産市場の動向マンションを中心とした2013年住宅市場の現状と今後(2013年1月号)

不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2013年1月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

マンションを中心とした2013年住宅市場の現状と今後

首都圏では増税にらみ供給回復へ新築への買い換え増で中古も拡大

 首都圏では2012年は前年に起きた東日本大震災による市場縮小の反動から、新築マンションの供給が大幅に増えるとの予測が年初の段階では大勢を占めていました。実際、年の前半までは前年よりも多い供給が続いていましたが、年後半から失速状態となり、最終的には前年を5000戸強上回る供給にとどまっています。その要因としては消費税増税をめぐる議論があると、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の中山登志朗さんは指摘します。
「2012年8月に消費税増税法が成立したことで、マンションデベロッパーが売り時を見極めるために供給を見合わせる動きが広がりました。ただ、年が明けて消費税増税後の住宅ローン減税の内容が明らかになったことを受けて、ようやく新築物件の供給が本格化すると見られます。住宅ローン金利が当面は超低水準で推移すると予測されることもあり、消費税アップ前の駆け込み需要を見込んだ供給増が本格化するでしょう」
 一方、中古マンションは過去に分譲されたストック戸数が増え続けていることもあり、流通市場の拡大が続いています。今後、消費税アップをにらんで新築物件への買い換えの動きが活発化すれば、さらに中古の売り物件が増えると見られます。
「中古マンションの流通価格は低下基調でしたが、地価が上昇に転じつつあり、今後は都心部を中心に価格上昇の可能性も高まっています。価格が反転すれば、さらに売り物件の増加に勢いがつくことも考えられます」(中山さん)

大阪市中心に新築供給が活発化中古流通は拡大ペース鈍化も

 近畿圏では2012年に新築マンションの供給が活発化し、前年より6000戸近い増加となりました。特に大阪府では4000戸以上の増加となっており、2013年も引き続き活発な物件供給が続くと予測されています。
「大阪市や神戸市などの中心部で再開発案件のタワーマンションが供給され、立地条件のよさから売れ行きも好調です。近畿圏でもタワー物件の人気が定着しつつあり、2013年も利便性の高い大規模物件の人気が高まるでしょう。中心部での供給が増えることから全体の平均価格は上昇気味ですが、地域ごとの相場はさほど上がっているわけではありません」(中山さん)
 中古マンションは首都圏と同様、ストック戸数の増加を背景に拡大が続いています。ただ今後については拡大のペースが落ちるとの見方です。
「近畿圏では新築マンションの供給が滞っていたため、中古物件にニーズが移っていたという面があります。2013年以降は新築物件の供給が活発化することで、中古の売り物件の伸びは緩やかになる可能性もあるでしょう」(中山さん)

名古屋市中心部の新築供給は堅調投資ニーズで福岡の市場は拡大

 愛知県と福岡県のマンション市場の動きを見ると、2012年は新築物件の供給が対照的でした。愛知県では6年連続で供給減となったのに対し、福岡県は供給が回復し7年ぶりの増加に転じています。中山さんによると、これはマーケットの特性の違いによるものとのことです。
「実需マーケットの規模はさほど変わりませんが、福岡県では福岡市を中心に投資用のニーズが多く、九州や中国・四国からの需要もあるため地域経済が活性化しています。一方、愛知県は自動車関連の業種への依存度が高いため、円高不況の影響で経済が落ち込み、マンション供給にも波及している形です。ただ名古屋市中心部では大手デベロッパーによる分譲が比較的堅調なので、2013年は消費税増税前の駆け込み需要をにらんで供給が増加に転じる可能性もあるでしょう」
 中古マンションは両県とも流通物件数が増加していますが、ここ数年は愛知県の伸びが大きくなっています。これは愛知県で新築供給が停滞し、マンション需要が中古マーケットにシフトしていることが要因といえそうです。
「2013年は新築供給の増加が見込まれるので、愛知県・福岡県ともに中古市場は現状維持かやや拡大する程度でしょう。ただ消費税が引き上げられる2014年以降は、新築価格より割安な中古物件の需要が高まり、再びマーケットが拡大することも考えられます」(中山さん)
 こうしてみると、2013年の住宅市場は新築・中古とも消費税増税による影響が大きくなることが見込まれます。政府・与党は駆け込み需要と反動による落ち込みを抑えるため、住宅ローン減税の拡大を打ち出しており、今後も物件を買いやすい環境が続きそうです。さらに相続税も増税されることとなっており、贈与税の非課税枠を活用した子や孫への住宅資金の贈与なども検討していく必要があるでしょう。

ワンポイント豆知識

●消費税増税
  • 消費税は2014年4月1日から8%に、2015年10月1日から10%に引き上げが予定されています。新築住宅の建物価格にも消費税が課されますが、引き上げの半年前までに契約すれば、引き渡しが増税後になっても契約時点の税率が適用される場合もあります
●住宅ローン減税
  • 住宅ローン残高の1%相当額が10年間、所得税・住民税から控除されるのが住宅ローン減税です。現状では年間の最大控除額が20万円ですが、消費税増税に合わせて2014年4月から40万円に引き上げられる予定です。併せて住民税からの控除額の上限も引き上げられ、所得税よりも住民税の納税額が多い中堅所得者層も減税の恩恵を得られやすくなります。
●相続税増税と贈与税非課税枠
  • 相続税は2015年から最高税率が現行の50%から55%にアップ。基礎控除が現行より4割縮小され「3,000万円+600万円×法定相続人数」に増税されます。一方、贈与税は住宅取得資金を対象とした700万円の非課税枠があり、相続時精算課税を選べば2,500万円の非課税枠も利用可能です。現行の相続時精算課税は親から子への贈与のみが対象ですが、2015年から孫への贈与にも対象が広がる予定です。
※2013年度与党税制改正大綱の内容に沿った記述となっています
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