不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産市場の動向2015年基準地価から見えてくる不動産市場の今(2015年11月号)

不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2015年11月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

2015年基準地価から見えてくる不動産市場の今

3大都市圏で地価の上昇が続く 地方中核都市では上昇幅拡大も

 国土交通省から発表された2015年の基準地価(都道府県地価調査)によると、全国平均では住宅地が前年比1.0%ダウン、商業地が同0.5%ダウンと、ともに下落が続いていますが、下落幅は前年よりも縮小しています。ただ、3大都市圏の平均は住宅地が同0.4%アップ、商業地が同2.3%アップと、前年に引き続き上昇しており、特に商業地は上昇率が前年より0.6ポイント伸びました。また、札幌市や福岡市などの地方中核都市でも、上昇率が前年より伸びているところが目立っています。一方、地方圏については住宅地、商業地とも引き続き平均で下落しました。

 全体として地価の下落が続くなか、3大都市圏や地方中核都市で上昇の動きが見られる状況について、東京カンテイ市場調査部主任研究員の高橋雅之氏は次のように分析してくれました。

「企業の業績回復や円安による海外からの訪日客の増加などを受けて、人やモノの集まる都市部では地価の上昇が続いています。特に地方中核都市では主に富裕層をターゲットとしたマンション開発が活発化しており、地価にも影響しているようです。ただ、そうした動きはその他のエリアには波及しておらず、地方圏では地価下落が続いています」

東京都心部では住宅地も上昇幅拡大 商業地は周辺都市でも上昇傾向強まる

 東京圏では住宅地の平均変動率が前年比0.5%アップと、2年連続で上昇しました。ただ、上昇率は前年の0.6%と比べて0.1ポイント縮小しています。地域別にみると、東京都区部では上昇率が前年の1.9%から2.1%に0.2ポイント拡大しました。東京圏の住宅地で上昇率の高かった市区町村では、トップが東京都中央区で8.8%、2位が同千代田区と品川区(ともに5.8%)、4位が港区(4.5%)と、都心部が上位を占めています。都区部以外では上昇が鈍化した地域が多く、横浜市は前年の1.7%から1.4%に、川崎市は1.5%から1.1%に、さいたま市は1.1%から0.9%に、いずれも上昇率が縮小しています。

 一方、東京圏の商業地は上昇率が前年の1.9%から2.3%に、0.4ポイント拡大しました。東京都区部では前年比4.0%の上昇となっており、市区町村別の上昇率でも東京都港区が7.8%で1位、同中央区が7.7%で2位など、都心部で上昇の勢いが強まっています。また横浜市とさいたま市でともに上昇率が前年の2.2%から2.5%に拡大するなど、周辺都市でも地価上昇の動きが強まっている地域があります。

「都心部では国内の富裕層だけでなく海外の投資家による不動産ニーズが強まっており、住宅地・商業地とも地価上昇が拡大しています。一方で周辺部や郊外では景気回復や消費税増税に伴う駆け込み需要などで前年は地価が大きく上昇した地域が目立ちましたが、その後の住宅価格の上昇で物件が購入しづらくなったこともあり、今回は特に住宅地で地価上昇が鈍化しています」(高橋さん)

大阪圏の住宅地地価は回復途上 商業地は中心部で上昇率アップ

 大阪圏の住宅地は上昇率が前年比0.0%と横ばいで、前年の上昇率0.1%からわずかに縮小しました。地域別では大阪市が0.5%アップで前年比0.1ポイント、京都市が0.4%アップで同0.2ポイント、それぞれ上昇率が拡大しています。神戸市は0.6%アップしましたが、前年比では0.4ポイント縮小しました。市町村別の上昇率では芦屋市が1.8%でトップ、次いで西宮市が1.7%です。また大阪市中心6区は上昇率2.3%と、前年より0.5ポイント拡大しています。

 商業地の上昇率は大阪圏も伸びており、全体では2.5%と前年より1.0ポイント拡大しました。特に大阪市中心6区は9.4%アップと、前年より上昇率が3.4ポイント拡大し、京都市中心5区も5.1%と前年より2.0ポイント伸びています。神戸市は東部4区が2.3%で、上昇率は前年と横ばいです。

「大阪圏では前年に住宅地が下げ止まり、横ばいが続いている状況です。全体的には地価が回復途上にあるといえますが、今後は製造業を中心に賃金が上昇すれば住宅の購買力も回復し、地価の上昇につながるでしょう。一方、商業地は関西国際空港のLCC(ローコストキャリア)便が増えて東南アジア方面からの観光客が増えるなど、飲食やホテルへの需要が伸びており、店舗の拡大などが地価を押し上げています。ただし勢いのあるのは中心部に限られます」(高橋さん)

名古屋市中心で開発が活発化 福岡市は住宅地・商業地とも高い伸び

 名古屋圏は住宅地の上昇率が前年比0.7%でしたが、前年より0.2ポイント縮小しています。名古屋市は1.9%の上昇で、こちらも前年の上昇率より0.5ポイントの縮小です。市町村別では日進市(4.7%)やみよし市(3.8%)、大府市(2.7%)など、愛知県内で高い上昇率の地域が目立ちます。また商業地は名古屋圏全体で2.2%アップと、前年より上昇率が0.7ポイント伸びました。名古屋市は4.7%アップで、前年より1.6ポイントの高い伸びとなっています。名古屋市は市町村別でも圏内トップの上昇率です。

 このほか福岡県は住宅地・商業地とも前年比マイナスが続いていますが、福岡市では住宅地が2.1%上昇し、上昇率が前年より0.3ポイント拡大しました。同市では商業地も4.8%上昇しており、前年比で1.4ポイントの拡大です。なかでも住宅地は中央区が4.5%アップ、商業地は博多区が7.6%アップなど、高い上昇率の地域が目立ちます。

「名古屋市では名古屋駅近くで大規模タワーマンションが開発され、リニア新幹線の開業をにらんで再開発が活発化するなど、住宅地・商業地とも上昇が続いています。自動車産業など地域の主力企業の業績が好調なことも、マンション需要を下支えしているようです。また福岡市も中心部ではオフィスやマンションの需要が堅調なため、地価が上がりやすい状況になっています」(高橋さん)

 全体的に大都市圏では地価の上昇基調が続いているものの、住宅地では周辺部などで前年に比べて伸び率が鈍化している地域が多くなっています。消費税増税に伴う反動減や、住宅価格の上昇で需要が伸び悩んでいることが要因といえるでしょう。今後、景気のいっそうの回復や、住宅価格の調整でマンション需要などが盛り上がれば、再び上昇の勢いが増すことも考えられます。一方、商業地は中心部などで高い伸びを維持しており、特に2020年のオリンピック開催を控える東京都心部では建築需要の高まりから、今後もしばらくは地価の上昇傾向が続くとの見方が多くなっています。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

大森 広司Hiroshi Omori

1962年東京生まれ。立命館大学法学部卒業。
編集プロダクション勤務を経て2005年より株式会社オイコス代表取締役。
現在、『SUUMO新築マンション』『スーモジャーナル』『月刊ハウジング』『都心に住む』などで、住宅問題全般にわたって取材・執筆活動を続けているほか、WEBサイト『AllAbout「マンション入門」』で、はじめてマンションを購入する人向けサイトのガイドとして記事を配信。
また、『日経トレンディネット』などで住宅・不動産最新トレンドの執筆を担当している。
主な著書に『はじめてのマイホーム買うときマニュアル』、『マンション購入完全チェックリスト』(共に日本実業出版社)『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。