不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産市場の動向公示地価から見通す2015年の不動産市場(2015年6月号)

不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2015年6月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

公示地価から見通す2015年の不動産市場

三大都市圏は2年連続で上昇地方中枢都市は上昇率がアップ

 国土交通省から発表された2015年の公示地価によると、全国平均では住宅地が7年連続の下落となりましたが、下落幅は昨年より縮小して同マイナス0.4%でした。商業地は7年ぶりに横ばいに転じています。
 圏域別にみると、三大都市圏は住宅地・商業地ともに2年連続で上昇しました。地方圏は下落が続いていますが、下落幅は昨年より縮小しています。また地方圏のうち地方中枢都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、住宅地・商業地ともに上昇地点の割合が昨年より増加し、2年連続で上昇となりました。

東京圏の住宅地の上昇はやや鈍化住宅価格上昇で物件供給が低迷

 東京圏の住宅地は2年連続の上昇となりましたが、上昇率は昨年の0.7%から0.5%に縮小しました。都県別に見ると東京都が1.4%の上昇だったのに対し、周辺3県はいずれも上昇率が0%台とほぼ横ばいです。
 東京都では千代田区・中央区・港区の都心3区で地価の伸びが目立ちます。なかでも湾岸エリアの中心ともいえる中央区は上昇率が6.4%と、昨年よりやや下がったものの東京圏の行政区では最も高くなりました。都心の億ションやタワーマンションは海外からも注目されており、台湾やシンガポールなどからの購入者が増えているようです。
 そんななか、浦安市は昨年の横ばいから上昇に転じました。東日本大震災に伴う液状化で大きな被害を受けましたが、その後インフラの復旧が進み、住宅供給も少しずつ回復してきています。
 一方、商業地は住宅地以上に地価の回復が顕著です。特に都心部ではリニア新幹線の新駅開業に期待がかかる港区や、渋谷駅前で大規模な再開発が進む渋谷区などで上昇率が高くなっています。ただ、東京の市部や横浜市・川崎市では引き続き地価が上昇しているものの、昨年に比べると上昇率は鈍化しています。さいたま市なども昨年の上昇率が高かったため、需要が鈍って地価上昇にブレーキがかかっている状況です。
 東京圏の地価の動きについて、東京カンテイ市場調査部主任研究員の高橋雅之さんは次のように話しています。
「大都市圏の中でも、投資が入りやすいかどうかで地価の動きに差が出ています。オリンピック関連をはじめとした大規模再開発が活発な東京都心部は投資マネーが流入し、地価が本格的に回復し始めていますが、近郊・郊外エリアはそうした動きはほとんど見られません。
 特に昨年は上昇率が高かった横浜市や川崎市、さいたま市などで上昇が鈍化しています。地価上昇に加えて建築コストの高騰からマンション価格が上昇し、一般的な勤労所得者が購入を検討する予算額を上回ったことで、物件の売れ行きが低迷して供給が落ち込んだことが大きく影響していると考えられます」

大阪中心部で5%前後の上昇タワーマンションなどの供給が活発

  大阪圏は住宅地が昨年のマイナスから横ばいに転じ、地価が底を打ったとの見方が増えています。大阪府は前年比マイナス0.1%と下落が続いていますが、大阪市は2年連続で上昇し、上昇率が昨年の0.1%から0.3%に伸びました。また兵庫県の上昇率も昨年より高くなり、京都府では昨年までの下落から横ばいに転じています。
 一方、商業地は大阪圏全体で2年連続の上昇となりました。大阪市では上昇率が昨年とほぼ同じですが、前年比3%を超える高い伸びです。特に中心部では昨年に続いて5%前後の上昇となっています。神戸市や京都市では昨年より上昇率が高くなりました。
「大阪市では中心部で高額なマンションやタワー物件の供給が活発化しており、神戸市の中心部も同様の動きです。京都市では円安の影響もあって観光客が増え、外資によるホテル投資なども活発化しており、地価を押し上げている格好です」(高橋さん)

企業業績の回復や大型再開発が名古屋・福岡の地価を押し上げ

 名古屋圏は住宅地・商業地ともに昨年に続いて上昇しましたが、上昇率は縮小しています。ただ、名古屋市の上昇率は住宅地が前年比1.7%、商業地が同2.9%と比較的高い数値です。西三河地域も住宅地の上昇率が1%を超えました。
「自動車産業をはじめとした地域の企業業績が堅調なことが、地価上昇を支えていると考えられます。賃上げにより住宅購入マインドが高まっていることも影響しているでしょう。今後はリニア新幹線の開業も控えており、息の長い地価上昇も見込まれます」(高橋さん)
 また福岡市でも住宅地・商業地の上昇が続いており、上昇率は昨年より高くなっています。特にマンションの需要が堅調な中心部では上昇傾向が強まっており、中央区では上昇率が4%台にアップしました。商業地では博多駅周辺で大型再開発ビルの計画が影響し、博多区の上昇率が5%台と高くなっています。
「円安の影響で海外からの旅行客が増えており、商業・サービス施設の活況が地価を押し上げる好循環が生まれています」(高橋さん)

 今後の地価の見通しについて高橋さんは次のように話してくれました。
「昨年は住宅価格の上昇や消費税増税の影響で住宅需要が低迷し、大都市圏でも中心部の周辺エリアでは地価の上昇が鈍化しました。今後は企業の業績回復で賃上げが広がれば、東京都心部をはじめ大都市圏の中心部から再び地価上昇の勢いが増す可能性があるでしょう」
 このところの株価上昇などの影響もあり、景気回復が地価上昇に結びつくことが予測されそうです。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

大森 広司Hiroshi Omori

1962年東京生まれ。立命館大学法学部卒業。
編集プロダクション勤務を経て2005年より株式会社オイコス代表取締役。
現在、『SUUMO新築マンション』『スーモジャーナル』『月刊ハウジング』『都心に住む』などで、住宅問題全般にわたって取材・執筆活動を続けているほか、WEBサイト『AllAbout「マンション入門」』で、はじめてマンションを購入する人向けサイトのガイドとして記事を配信。
また、『日経トレンディネット』などで住宅・不動産最新トレンドの執筆を担当している。
主な著書に『はじめてのマイホーム買うときマニュアル』、『マンション購入完全チェックリスト』(共に日本実業出版社)『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。