マンションマーケットの供給・価格動向と2018年以降の見通し
首都圏では物件供給の低迷が続くなか、価格は新築・中古とも頭打ちに
2017年までのマンション市場の動きについて、まず首都圏から見ていきましょう。新築マンションの供給はアベノミクスが本格スタートした2013年をピークに、翌2014年以降は反動減の状態が回復しないまま推移しています。2017年の東京都の供給戸数は2万9443戸と、2年連続で3万戸を下回りました。
中古マンションはというと、新築よりも1年早く2012年に流通事例数のピークを迎えました。その後は2014年にかけて減少したものの、神奈川県を除き2015年以降は回復。2017年は千葉県を除き2012年のピークに迫る事例が流通しています。
価格については新築・中古ともここ数年は上昇基調が続いています。ただ、2017年は頭打ち傾向が見られ、特に東京都では新築平均価格が前年比で小幅に下落しました。
ここ数年のマンション市場の動向について、東京カンテイ市場調査部主任研究員の高橋雅之さんは次のように分析しています。
「新築物件の供給については、2017年4月に予定されていた消費税増税に伴う駆け込み需要を期待して、2016年秋ごろから東京都下などで大規模物件がいくつか売り出されました。しかしその後、増税が延期されたこともあり、販売に苦戦する物件が相次ぎ、2017年の郊外エリアでの供給低迷につながったようです。
一方、都心では2億円以上の高級物件は好調な売れ行きでしたが、8000万円~1億円台の物件は価格高騰による需要減の影響を受け、23区内でも契約率が回復しない状態が続きました。その結果、当初の想定価格よりも5~10%程度調整した価格で分譲した物件が増え、売れ行きも好調です。東京都で平均価格がやや下落した背景には、そうした事情があるでしょう。とはいえ、現在の新築物件の売主は体力のある大手不動産会社が中心なので、大幅な価格下落には至っていません。
また中古物件は新築の供給減の受け皿として流通事例数が伸びていますが、直近ではこちらも頭打ち気味となっています。ただ、新築物件の品薄状態が続いているため、中古価格は大きく下落する状況ではなさそうです」
大阪市を中心に新築・中古の供給が回復。価格上昇の動きは直近で鈍化も
近畿圏に目を転じると、大阪府での新築供給は2012年をピークにいったん減少しましたが、2015年以降は大阪市内を中心に供給が回復し、2017年も増加が続いています。
中古物件の流通事例数も大阪府では2012年以降は減少傾向でしたが、2015年を底に2016年以降は増加に転じました。2017年は直近のピークを超える勢いで流通事例が増えています。
価格は新築・中古とも上昇傾向ですが、京都府については2012~2013年をピークにいったん下落し、2016年に大幅上昇したあと2017年に再び下落するという変動の大きな動きとなっています。
「大阪市を中心とした大阪府の供給が増えているのは、訪日外国人によるインバウンド需要に支えられている面もあります。東京の物件価格が高騰して投資利回りが低下したため、物件価格が東京の6~7割と割安で利回りもとれる大阪に、国内外の投資家が注目したようです。そのため大阪市中心部でタワーマンションが多数供給されると同時に、投資向けのワンルーム物件やコンパクト物件の供給も増えています。
価格は上昇が続いていますが、直近では上昇が鈍化する傾向も見られます。特に大阪府は中古の流通事例数の増加で在庫が積み上がり、2017年は相場の頭打ちが明らかになってきています」
愛知県は価格上昇で戸建てと競合。福岡県は人口流入で投資物件の供給増
名古屋市を中心とした愛知県では、新築マンションの供給は2011年をピークに減少傾向が続いています。中古物件の流通事例数も2013年以降は減少傾向でしたが、減少の度合いはさほど大きくなく、2017年には上昇に転じています。
一方、福岡市を中心とした福岡県の新築供給は2013年をピークにいったん減少し、その後はゆるやかな増加に転じています。中古流通は2011年以降はほぼ横ばいが続いていましたが、2016年以降は増加に転じました。
価格については愛知県・福岡県とも新築・中古いずれも上昇傾向です。特に新築は多少の上下はありますが、右肩上がりに推移しています。
「愛知県では新築物件の価格上昇に伴い、需要が戸建てにシフトしてきているようです。そのため名古屋駅周辺や名城線内の西側エリアなどでは、若い人や投資需要向けに面積が50㎡以下のコンパクトなタイプの物件が増え、販売価格を抑える動きも増えてきました。
また福岡県は周辺地域から若年層が多く流入しており、こちらも賃貸需要を見越した投資用物件の供給が活発化しています。
中古物件の流通量が増えていることから価格の上昇率が鈍化してきており、特に名古屋市では2017年以降、価格は頭打ち傾向です」
2018年の市況は株価の動向や増税前の需要の動きがポイントに
では2018年のマンション市場はどんな方向に向かうのか。高橋さんに見通しを伺いました。
「東京都心では株価の動きが大きく影響するでしょう。株価が上昇すれば資産効果によって不動産ニーズが高まり、価格上昇や供給増も見込めます。ここ数年は年の後半に株価が復調するパターンが多いので、後半には市況が回復する可能性もありそうです。
供給エリアは都心や都心寄りの駅に近い立地に絞られるでしょう。最近は近郊エリアでタワー物件や大規模マンションが供給される動きもみられ、今後の売れ行きが注目されるところです。
大阪市の中心部では引き続き投資ニーズを意識したコンパクトな物件の供給が活発になりそうです。人口増加が続く福岡市も同様でしょう。
一方で愛知県や京都府、兵庫県ではマンション価格の上昇で一戸建てとの競合が強まり、供給が絞られそうです。それらの府県でも価格を抑えた新築物件の供給や、中古価格の調整が進めば、再びマンション需要が高まって市況が活性化する可能性もあるでしょう」
2018年の年明け以降は株価の変動が大きくなっており、予断を許さない状況です。ただ、2019年10月に予定されている消費税増税を前に、2018年後半にも再び駆け込み的な需要が発生するとの予測もあり、今後の動向を注視していく必要がありそうです。