不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産市場の動向2013年 基準地価から見通す不動産市場の動向(2013年10月号)

不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2013年10月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

2013年 基準地価から見通す不動産市場の動向

都市部などで地価が下げ止まり上昇に転じる動きが広がった

 国土交通省から全国2万2000地点弱の2013年基準地価(都道府県地価調査)が発表されました。それによると、全国平均では依然として地価が下落しているものの、下落率は縮小傾向が続いています。三大都市圏では平均で住宅地がほぼ横ばいとなり、商業地は上昇に転じました。
 上昇地点数の割合は全国的に増えており、特に三大都市圏では住宅地の約3分の1の地点が、商業地は約2分の1の地点が、それぞれ上昇しました。一方で地方圏ではまだ9割弱の地点が下落しています。今年1月1日時点の公示地価も合わせた半年ごとの地価動向では、三大都市圏では主に後半に上昇に転じた地点が目立つ状況です。
 都市部を中心に地価が下げ止まりから上昇に転じる動きが広がっている背景について、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の中山登志朗氏は次のように分析しています。
「住宅地は低金利や住宅ローン減税などによる住宅購入の後押しや、景気回復への期待感から需要が拡大しており、三大都市圏を中心に資産デフレから脱しつつあるといえるでしょう。堅調な住宅需要を背景に、商業地もマンション用地として売買されるケースが増えています。また主要都市の中心部などではBCP(事業継続計画)の観点から耐震性に優れる新築・大規模オフィスへの移転が広がっており、高度商業集積地や再開発地などで地価が上昇基調です」

各都市圏の住宅地・商業地で上昇地点の割合が増加

 圏域ごとの動きをみると、まず東京圏は住宅地・商業地ともに上昇地点の割合が大幅に増加し、特に東京都心部や横浜市・川崎市で上昇基調となっています。地価の上昇が見られた主な地点としては、2012年4月の東京スカイツリー開業の影響で観光客が増えた台東区浅草駅周辺や、大規模オフィスビルの竣工や大学キャンパスの開設で賑わう中野区中野駅前、駅周辺の再開発を中心に超高層マンションの供給も活発な川崎市武蔵小杉駅周辺などが挙げられます。
 大阪圏も上昇地点の割合が増加し、大阪市の中心部では商業地で高い上昇率の地点が見られるなど、上昇基調が強まっています。なかでも大阪駅周辺では2013年4月にグランフロント大阪が開業したほか、複数のプロジェクトが計画されており、注目度が高まっているようです。また住宅地として人気の高い北摂エリアや阪神間もおおむね上昇基調となっています。
 名古屋圏は住宅地・商業地ともに名古屋市や西三河地域を中心に上昇基調となっており、上昇地点の割合が大幅に増えました。住宅地では名古屋市東区や昭和区、千種区などが特に高い上昇率となっています。
  九州圏では福岡市が住宅地・商業地とも平均で上昇しており、一戸建て・マンションともに需要が堅調な住宅地は7区のうち4区が上昇しました。特にマンション用地の取引が活発な早良区や中央区では2%を超える上昇率となっています。
「地価が上昇に転じつつある都市部と、下落が続くそれ以外の地域との乖離が見られます。例えば神奈川県では横浜市と川崎市で下落地点がごく一部となっているのに対し、郊外の地域では多く下落地点があるなど限られたエリア内でも2極化が進んでいる状況です」(中山氏)

消費税引き上げ後の反動減でも住宅価格は横ばいで推移する!?

 このように大都市圏の郊外や地方圏では地価の下落が続いていますが、都市部では上昇基調が強まりつつあるようです。特に東京の都心部では2020年に開催が決まったオリンピックに向けて道路や市街地などのインフラ整備が進むと期待されており、今後も地価が上がりやすい状況が続くと予測する向きも少なくありません。
 ただ、気になるのは安倍首相の決断により増税の実施が決まった消費税の影響です。不動産市場では以前から増税を見越した駆け込み需要が発生していると見られ、2014年4月の税率引き上げによる需要の反動減や不動産価格の下落が懸念されています。この点について中山氏は、前回の税率引き上げとの違いに着目すべきだと指摘しています。
「消費税が3%から5%に引き上げられた1997年当時は、地価が5%前後下落しており、増税による反動減の影響で翌年にはマンション価格が1割近く下がりました。これに対し現状では地価が上昇に転じつつあるため、マンション価格を下げる余地はほとんどありません。かといって所得が伸びていないなか、価格を上げると売れ行きが落ちるリスクがあるため、住宅価格は今後しばらく横ばいで推移すると考えられます」
 国は住宅需要の落ち込みを抑えるため、消費税増税と同時に住宅減税の拡充や、現金を給付する「すまい給付金」の導入を決めています。価格の上昇が抑えられるのであれば、減税や給付金を活用して住宅を買うメリットも大きくなるでしょう。とはいえ、いずれも住宅ローンの利用でメリットが最大となるため、今後の金利の動きも見逃せません。
「アベノミクスで景気が大きく回復すれば金利が上がりますが、当面は日銀の金融緩和が続くため、低金利も維持されるでしょう。今は住宅ローンの変動金利が実質1%を切る超低金利状態となっており、住宅ローンを借りて減税を受けると有利なケースが多いことは事実です。ただし、将来の金利上昇に備えて無理のない資金計画を組み、資産価値を重視した物件を選ぶことが重要であることには変わりはありません」(中山氏)
  現状では引き続き不動産が買いやすい状態になっていますが、減税や低金利に惑わされて資産価値の低い物件を慌てて買うことのないよう、慎重な判断が求められそうです。

ワンポイント豆知識

●基準地価

都道府県が調査主体となり、毎年7月1日時点の不動産鑑定士による鑑定評価に基づいて都道府県知事が正常価格の判定を行う調査です。2013年は全国2万1989地点の基準地を対象としました。

●住宅ローン減税

2014年4月1日からの消費税増税に伴い、税率8%または10%が適用されるケースでは住宅ローン減税の控除限度額が現行の200万円から400万円に拡充されます。

●すまい給付金

消費税増税による負担増を軽減するため、年収に応じて現金が給付される制度が導入されます。給付額は消費税8%の場合で最大30万円、10%の場合で同50万円です。住宅ローンを利用しない場合でも、住宅が一定の条件を満たし、50歳以上で年収の目安が650万円以下であれば給付されます。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

大森 広司Hiroshi Omori

1962年東京生まれ。立命館大学法学部卒業。
編集プロダクション勤務を経て2005年より株式会社オイコス代表取締役。
現在、『SUUMO新築マンション』『スーモジャーナル』『月刊ハウジング』『都心に住む』などで、住宅問題全般にわたって取材・執筆活動を続けているほか、WEBサイト『AllAbout「マンション入門」』で、はじめてマンションを購入する人向けサイトのガイドとして記事を配信。
また、『日経トレンディネット』などで住宅・不動産最新トレンドの執筆を担当している。
主な著書に『はじめてのマイホーム買うときマニュアル』、『マンション購入完全チェックリスト』(共に日本実業出版社)『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。