マンション市場の供給・価格動向と2019年の見通し
首都圏は新築供給に回復の兆し? 坪単価は新築・中古とも上昇傾向
2018年までのマンション市場の動きについて、首都圏から振り返ってみましょう。新築マンションの供給戸数は2013年に6万9637戸で直近のピークとなったあとは低迷状態が続いていましたが、2018年は1都3県のいずれも前年より増加し、全体では5.0%増の4万9884戸となりました。平均坪単価は引き続き上昇傾向となっており、東京都の平均は350万円を超えました。
一方、中古マンションはここ数年、流通事例数が増加傾向にあり、2018年は首都圏全体で前年比6.1%増加しました。特に東京都は大きく伸びており、直近で最も多かった2012年を上回って30万戸に迫る事例数となっています。平均坪単価は高止まり気味ながら、わずかな上昇が続いています。
首都圏のマンション供給の状況について、東京カンテイ市場調査部主任研究員の髙橋雅之さんは以下のように分析しています。
「新築マンションは戸数が回復したといってもわずかな増加で、まだ5万戸には届かず低調な状況は変わりません。2018年のマンション市場は特にこれといったイベントがなく、いわば“凪”の状態だったといえるでしょう。物件の立地は都心寄りや駅の近くなどに条件が絞り込まれているため、平均坪単価は上昇が続いています。これに対し中古マンションは2000年代前半からミニバブル期に分譲された築10〜15年程度の“売却適齢期”を迎えたマンションが多いことと、価格がピークとなり売り時と判断した売主が多かったことが、流通量が増えている要因と考えられます。さらに中古の価格も高くなり、買主に買い控えの動きが見え始めたことも、市場に滞留する物件数を押し上げているようです」
大阪府は訪日外国人の増加などで供給活発。価格にはなお上昇の余地?
近畿圏(大阪府、兵庫県、京都府)の新築マンションは大阪府で2014年に供給が底を打ったあとは増加が続いています。兵庫県と京都府は低迷気味ですが、近畿圏全体では2018年に前年比5.0%の増加となりました。平均坪単価は2017年にいったん落ち込んだ京都府が上昇に転じており、2018年は2府1県ともに上昇しています。
中古マンションは2府1県とも2014年〜2015年に底を打ってから増加傾向が続いており、2018年は全体で18万戸を超えてここ10年では最も多い流通事例数となりました。平均坪単価は上昇傾向となっており、大阪府と京都府では2012年を底に6年連続で上昇しています。
「大阪市内では梅田や阿倍野、難波といった中心部の再開発エリアで大規模なタワーマンションの供給が活発になり、新築物件の供給を押し上げています。またここ数年は訪日外国人の増加に伴いサービス業などの従事者の流入が増えていることも、物件供給の増加につながっているようです。価格は上昇傾向ですが、投資利回りから見ると首都圏と比べてまだ割安感があります。とはいえ実需層には割高感のある価格帯になっており、経済動向次第で価格上昇に歯止めがかかる可能性は高いでしょう」
愛知県・福岡県とも新築供給が微増。坪単価はゆるやかな上昇続く
愛知県の新築マンション供給は2011年をピークに低迷が続いていましたが、2018年は前年比24.7%の増加となりました。平均坪単価は2016年にいったん下落したものの、その後は2年連続で上昇しています。また中古マンションの流通事例数は2017年に増加に転じ、2018年もほぼ横ばいでした。坪単価はゆるやかな上昇傾向となっています。
「2027年のリニア中央新幹線開業を控え、名古屋駅周辺で共働き世帯などをターゲットとした中小規模のマンション供給が活発化しています。人口が増加傾向にあり、収益も見込めることから投資用のコンパクトな物件も増加傾向です」
一方、福岡県の新築マンションは2013年のピークからは減少していますが、ここ数年は徐々に回復傾向にあります。平均坪単価は2012年以降、緩やかな上昇傾向です。また中古マンションは2015年から2017年にかけて流通事例数が急増しましたが、2018年は前年比でわずかに減少しています。坪単価は愛知県と同様、ゆるやかな上昇傾向です。
「福岡市は九州近県からの人口流入が増えており、大濠公園や百道、西新といった人気エリアでタワーマンションなどの供給が活発化しているほか、東区の千早や香椎、大野城市などで再開発物件の供給が増えています。価格は上昇傾向ですが、高騰というほどではなく、まだ上昇の余地はありそうです」
2019年は春先の国際情勢や10月の消費税増税などに注目
では2019年のマンション市場はどうなるのでしょうか。2018年と異なるのは、10月に消費税増税というイベントが控えていることです。またこのところの世界情勢の不透明感から、日本経済の先行きに懸念が広がりつつあり、不動産市場にも影響が考えられると髙橋さんは指摘します。
「消費税は上昇幅が2%ということもあり、前回ほどの駆け込み需要は出ないとみられます。むしろ増税後の減税拡大などから、経過措置後の4月以降に買い得感が高まることも考えられるでしょう。一方で、米中の貿易摩擦や英国によるEU離脱などで景況感が悪化すると、国内でも株価の下落などから需要を冷やす可能性もあります。また今春には東京湾岸で五輪選手村跡地の大型物件の分譲が始まり、近郊のファミリータイプ物件との顧客の奪い合いから、相場に下押し圧力が働くこともあり得るでしょう」
さらに2020年には東京五輪も控えるなか、2019年にマーケットが大きく動くかどうかが注目されるところです。
(データ提供:東京カンテイ)