不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産市場の動向2012年路線価の読み方と不動産市場の動き(2012年7月号)

不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2012年7月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

2012年路線価の読み方と不動産市場の動き

自宅の前の道路の路線価から敷地の価格の目安がわかる

 国税庁から路線価が発表されました。
路線価とは住宅地や商業地など全国の標準宅地の地価を基に、路線(道路)ごとに土地の価格を定めたものものです。路線価が定められている土地は路線価方式で評価し、路線価は相続税や贈与税を算出する際、土地の評価基準として用いられます。国土交通省が毎年1月1日時点で調査する公示地価の8割を目安に設定されます。
 自分の持っている土地の価格は、路線価を調べれば目安が分かります。下の図は東京都○○区◎◎◎□丁目付近の路線価参考図です。「1」と丸で囲まれた数字は街区番号を示します。この場所に300平米の土地(赤い四角部分)を持っていたとすると、その土地が面する道路に書かれている「390C」が正面路線価です。単位は「千円/平米」なので、この土地の正面路線価は「390千円/平米」、つまり「39万円/平米」となります。
 ちなみに「390C」の「C」は借地権割合です。AからGまであり、Aが90%、Bが80%、Cが70%と10%ずつ低くなります。持っている土地が借地権だった場合は、Cであれば所有権の場合の70%が借地権の価格ということです。
 路線価は公示地価の8割が目安なので、公示地価をベースとしたおおよその不動産価格を算出するには、路線価を80%で割り戻せばよいのです。電卓を使う場合は「39万円÷0.8」と計算すれば、答えは48・75万円/平米。300平米の土地であれば「48・75万円×300平米」で1億4625万円が不動産価格の目安となる計算です。実際の路線価の計算では、土地の形状や角地などの条件によって補正されます。

消費税増税の影響もあり地価は横ばいから上昇傾向へ

 では国税庁から発表された2012年分の路線価から、地価やマーケットの動きを見ていきましょう。まず全国平均では4年連続で前年より下落しましたが、下落率はマイナス2.8%で前年から0.3%縮小しました。すべての都道府県で下落しましたが、東京都や愛知県、京都府などで下落率が2%を切っています。地価は下げ止まりつつあるのでしょうか。東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の中山登志朗さんに伺いました。
「都市部を中心に東日本大震災の影響を脱し、地価がおおむね底入れしつつある状況です。今後は地価が安定的に推移し、場所によっては上昇の動きが強まると考えられますが、その期間は限定的とみています。国会で消費税の増税が審議されており、2014年4月から8%への引き上げの可能性が高まったためです。土地は非課税ですが、建物や資材に課税されるので影響は小さくありません。税率が上がる前に物件を確保しておこうと、需要が促される面があるでしょう。税率が10%に上がる2015年10月以降は、反動で地価が下落する可能性もあります」

スカイツリー効果や再開発で首都圏の一部で地価が上昇に転じた

 地域ごとの動きをみると、まず首都圏では千葉県を除いて下落率が前年より縮小しました。千葉県は拡大したといっても0.1%で、下落率もマイナス2.0%と全国平均を下回っています。
 地価が上昇した地点もあります。東京都では再開発でにぎわいが増した足立区の北千住駅西口や、スカイツリー人気でマンション開発などが進む墨田区の曳舟川通りなどです。また神奈川県でも川崎市の川崎駅東口や横浜市のたまプラーザ駅前など、再開発や再整備で利便性がアップした地点で地価が上昇しています。一方、千葉県では上昇地点はなかったものの、県内で地価が最高の地点が前年までの千葉駅前から、柏駅前に24年ぶりに入れ替わりました。「北千住駅は駅前に東京電機大学のキャンパスが開設し、学生だけでなく教職員などが増えたことによる波及効果が考えられます。再開発による大学やオフィスの誘致は中野区の中野駅前でも進められており、地域のポテンシャルがアップすることで地価の上昇も期待できるでしょう。また柏駅周辺も大規模店舗など商業施設が集まっており、常磐線沿線などからの買い物客で街が活性化しています」(中山さん)

大阪駅北側や阿倍野など再開発が進むエリアの地価上昇の動き

 都市部を中心に下げ止まり傾向が鮮明になりつつあるのが近畿圏です。大阪府は平均の下落率がマイナス1.7%と、前年より1.7%縮小しました。特に大阪市では、再開発が進む北区芝田1のヨドバシカメラ前や、阿倍野区阿倍野筋1のアベノ近鉄百貨店前で地価が上昇しています。大阪駅北側はタワーマンションの販売が好調など、注目度が高まるエリアです。また阿倍野では2011年春に開業した商業施設「キューズモール」に多くの来場者が集まり、2014年春には高さ日本一の複合ビル「あべのハルカス」が全面開業を予定するなど、発展が期待されています。
「新たな商業施設の集積は、地価を押し上げる要因になるものです。また大阪府では“大阪都構想”が盛り上がっていることも、今後の地価の動きに影響が考えられます。大阪市の行政区を統合する構想もあり、実現すれば行政サービスの効率化によって経済が刺激されるでしょう」(中山さん)
 このほか、京都府では横ばいや上昇の地点が増えました。京都市中京区や下京区など中心部はマンションの分譲が活発で、用地のニーズも高まっています。兵庫県も、芦屋や御影など人気の高い阪神間エリアで住宅用地の需要が多く、商業地でも地価上昇の動きが見られます。

商業施設やオフィスビルが集まる名古屋駅・博多駅周辺で地価が回復

 愛知県は下落率が0.3%縮小してマイナス0.5%と、ほぼ下げ止まっています。名古屋市では名古屋駅周辺で地価上昇の動きが見られ、最も高額な中村区名駅1丁目は0.9%アップしました。駅前では大名古屋ビルヂングの建て替えや中央郵便局の跡地再開発など、大型のオフィスビルが建設ラッシュとなっています。
「名古屋の外からアクセスする場合、栄や久屋大通は新幹線から地下鉄などに乗り換えなければなりません。そのためオフィスに関しては名古屋駅周辺に需要がシフトしてきており、マンションの供給も活発化しています。一方、栄周辺は地価が下落していますが、今後は商業施設の再開発計画などもあり、回復が期待されます」(中山さん)
 また福岡県も下落率が0.8%縮小し、マイナス2.6%でした。なかでも博多駅周辺は新幹線の全線開業や駅ビルリニューアルの効果が現れ、地価上昇の傾向が強まっています。最も高額な中央区天神2丁目の渡辺通りは横ばいでした。「駅前通りなど博多駅を中心とした再開発が、地域経済や地価を押し上げている形です。中国や韓国などからの投資マネーの流入も影響しているでしょう。大濠や百道浜といった住宅地も、マンション供給が引き続き活発です」(中山さん)

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