不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産市場の動向公示地価から見えてくる2013年住宅市場の動向(2013年4月号)

不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2013年4月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

公示地価から見えてくる2013年住宅市場の動向

地価下落幅が3年連続で縮小 都市部などで横ばい・上昇の動き

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 国土交通省が発表した2013年の公示地価によると、全国的には地価の下落傾向が続いていますが、全国平均で下落幅は3年連続で縮小しました。地価が横ばいや上昇の地点も大幅に増加しており、都市部などでは回復の動きも見られます。

 地価が横ばい方向に推移し、下げ止まりつつある要因について、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の中山登志朗さんは次のように分析しています。

 「地価の下落で需給バランスが改善し、自律的に底入れの方向に動いたことがまず挙げられます。低金利、住宅ローン減税、住宅購入のための贈与税非課税枠の3点セットの後押しで住宅需要が堅調なことも影響しているでしょう。さらに大規模再開発の効果が持続し、特定エリアで需要が拡大して地価の上昇を牽引しています」

以下、各都市圏別に見ていきましょう。

東京都心部や横浜・川崎などで地価上昇の動きが活発に

 東京圏では東京23区の住宅地が全体で▲(マイナス。以下同)0.2%とほぼ下げ止まりの状態です。特に港区が0.1%上昇し、千代田区と中央区が0.0%となるなど、都心部で地価回復の動きが目立ちます。また川崎市で0.7%上昇、横浜市で0.2%上昇など、神奈川県の都心隣接地はいち早く上昇傾向が強まっています。特に川崎市はタワーマンションの供給が活発な武蔵小杉駅周辺や、大規模再開発が進む川崎駅周辺で土地の需要が高まっており、住宅地や商業地で2ケタ前後の上昇地点も出ている状況です。また東京スカイツリー開業の影響で、墨田区の押上駅周辺や台東区の浅草駅周辺でも上昇の動きが見られます。
 今回の公示地価では目立った動きは見られなかったものの、今後の回復が期待できるエリアもあると、中山さんは指摘しています。 「例えば中野駅周辺では再開発でオフィスビルや大学施設が整備されていますが、ようやく入居が始まったばかりなので、実際に街が活性化して地価が上昇するのはこれからでしょう。また再開発で工事中のエリアが目立つ新宿駅周辺も、工事が完了することで期待値が上がると考えられます。さらに東急東横線と乗り入れた副都心沿線も、埼玉や横浜方面からの人の流れが増えて地域経済が活性化することが期待できるでしょう」

大阪市・京都市の中心部や阪神間エリアで上昇地点が増加

 大阪圏も住宅地、商業地ともに下落率が縮小しており、上昇地点が各府県で増加しています。特に大阪市では前年に0.4%上昇した中心6区(福島区、西区、天王寺区、浪速区、北区、中央区)の住宅地が今年はさらに1.0%上昇しており、教育環境が良好で住宅需要の強い阿倍野区でも1.0%上昇しました。また京都市では中心部でマンション供給が活発化しており、中京区が区全体で上昇し、下京区も横ばいとなっています。このほか住宅地の上昇が目立つのは神戸市東部と阪神地域で、灘区や東灘区、芦屋市、西宮市などが全体で上昇しました。全体として地価が横ばいから上昇に転じる地点が増えつつある大阪圏ですが、中山さんによると、必ずしも楽観を許さないエリアもあるとのことです。
「例えば八幡市は商業地が1.3%上昇していますが、上昇率は前年の2.6%から縮小しました。区画整理や大型商業施設の開業などで一時的に地価が上昇しても、地価が持続的に回復するかどうかはそのあとの動きが重要です。人々が多く住んだり働いたりし始め、飲食店や保育施設、教育機関など『あったらいいな』と思える施設が増えることが街を活性化させるのです」

マンション需要と円安効果で名古屋市と西三河地区が上昇傾向

 名古屋圏の住宅地では名古屋市と西三河地区が全体で上昇しました。名古屋市では緑区や昭和区、東区、千種区などでデベロッパーによるマンション用地の取得が活発化しており、仕入れ価格が上昇しているようです。また西三河地区では刈谷市、豊田市、安城市などで主要駅周辺の飲食店需要が増大したことなどから、商業地も上昇に転じています。
「もともと価格水準が低めなため、地価の下落で需要がいち早く回復し、上昇につながっています。加えてこのところの円安でトヨタの業績が回復したことが、西三河地区の地価を押し上げた形です。今後も安倍政権による金融緩和の強化で円安が進めば、さらに地価上昇の期待が高まるでしょう」

 また福岡市は住宅地・商業地ともに全体として上昇しており、特に中央区や早良区の住宅地は2%台の上昇となっています。住宅地では都心回帰が進むなか、人口増加を背景に一戸建て・マンションとも需要が堅調です。博多区では一昨年3月の九州新幹線全線開業と博多シティ開業を受けて博多駅周辺が以前好調となっており、区全体で上昇しました。

 今後の地価の見通しについて中山さんは次のように話しています。「景気回復への期待と消費税増税前の需要拡大で、業務性の高い都心や大規模事業集積地、人気住宅地を中心に順次底入れし、増税が完了する2015年10月まで緩やかに上昇する可能性があります。また相続税の増税で都心周辺では課税対象者が増えることが確実なため、税金対策から土地の売買が活発となり地価上昇につながるでしょう」
 安倍政権による経済政策への期待度が高まるなか、今後の地価動向にも注目しておく必要がありそうです。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

大森 広司Hiroshi Omori

1962年東京生まれ。立命館大学法学部卒業。
編集プロダクション勤務を経て2005年より株式会社オイコス代表取締役。
現在、『SUUMO新築マンション』『スーモジャーナル』『月刊ハウジング』『都心に住む』などで、住宅問題全般にわたって取材・執筆活動を続けているほか、WEBサイト『AllAbout「マンション入門」』で、はじめてマンションを購入する人向けサイトのガイドとして記事を配信。
また、『日経トレンディネット』などで住宅・不動産最新トレンドの執筆を担当している。
主な著書に『はじめてのマイホーム買うときマニュアル』、『マンション購入完全チェックリスト』(共に日本実業出版社)『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。