マンションを中心に見た2014年住宅市場の現状と見通し
首都圏の新築市場は供給が回復価格を抑えた千葉・埼玉で急増
首都圏の2013年の新築マンション供給戸数は約4万2000戸(※)で、前年比10%強の増加となりました。特に埼玉県は同50%弱、千葉県にいたっては同70%超と大幅に増えています。東京都の供給戸数も前年比5%強の増加と順調に伸びましたが、神奈川県は同3%減少という状況です。
新築マンションの供給が伸びた要因について、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の中山登志朗さんは次のように分析します。
「2013年は都心部を中心に地価が上昇基調に転じたため、物件価格を抑えて分譲するために供給エリアが千葉・埼玉の近郊にシフトする傾向が表れました。一方、東京都心部では富裕層向けの高額物件やタワーマンションの売れ行きが順調でした。その背景には消費税や相続税が増税されないうちに不動産を購入しようという、富裕層に特有のニーズがあったと考えられます。今年は消費税増税もあり新築供給は前年並みに留まると見られますが、近郊エリアや湾岸エリアで価格を抑えて販売される物件の供給は続くでしょう」
一方、中古マンションの流通事例数はここ数年大きく伸びてきましたが、2013年は一転して前年比16%強の減少となりました。特に東京都は同23%強ダウンしていますが、事例数は22万戸台と高い水準です。
「2013年は9月までの消費税の経過措置をにらんで新築市場で駆け込み需要が高まりましたが、10月以降は中古物件にシフトする動きが見られます。中古は個人間の売買では、価格に消費税がかからないので4月以降は価格や立地の優位性が高い中古にもニーズが高まるでしょう」(中山さん)
※専有面積30m²
以上の区分所有物件の住戸の合計(以下同じ)
近畿圏では新築の供給が堅調中古市場も今年は回復傾向に
近畿圏の3府県では、2013年の新築物件の供給は大阪府で26%台の減少と落ち込みました。兵庫県と京都府では前年比増加しましたが、伸び率は兵庫県が前年比4%台、京都府は同10%台と限定的です。
「消費税が5%のうちに新築物件を購入しようという動きが強まり、需要が喚起されたようです。ただ、大阪市では中心部のタワーマンションに供給が絞られた結果、大阪府全体では供給が減少しました。資材の高騰などから建設コストがアップしており、面積の縮小などで対応していますが、物件価格はやや上昇気味です。今年は大阪市内でタワー物件が堅調に供給され、北摂や阪神間エリアでも供給が増えると予測しています」(中山さん)
中古マンションは大阪府と京都府で流通事例数が減少しましたが、兵庫県では増加しており、全体では若干の減少にとどまっています。大阪と京都では消費税増税前の駆け込みでニーズが新築物件にシフトしたため、中古物件の流通が抑えられたようです。
「大阪府と京都府では新築物件の価格が上昇気味となっており、10月以降は中古市場にニーズが戻りつつあります。一方、兵庫県では神戸市で新築物件の供給が少なかったこともあり、中古物件の人気が高まっているようです。今年は中古市場が全般的に回復に向かうと考えられます」(中山さん)
愛知県は中古市場が回復 福岡県は新築・中古とも好調
愛知県では新築マンションの供給戸数が回復し、2013年は前年比40%強の増加でした。ただ、戸数は3300戸台で、4年連続で4000戸台を割り込んでいます。一方、中古マンションの流通事例数はやや減りましたが、減少幅は5%弱とわずかです。
「名古屋市の中心部から東側の瑞穂区や天白区などで、ファミリータイプの新築マンションが比較的多く供給されました。ただ、消費税増税前の駆け込み的な動きが強く、今年は増税後には一時的に売れ行きが鈍ります。新築市場が落ち込む分は、中古市場が回復するものと考えられます」(中山さん)
一方、福岡県も新築マンションの供給戸数が増え、前年比30%近い増加になりました。戸数は6000戸に迫る勢いで、ここ5年間では最も多くなっています。一方で中古マンションの流通事例数は20%近く落ち込み、4年ぶりに3万1000戸台にダウンしました。「福岡市を中心にアジアからの個人投資家などのニーズも強まり、新築物件の供給が活発になっています。北九州市でも新築物件の供給が拡大しています。中古物件の流通はやや減りましたが、消費税引き上げ後は反転して増加するでしょう。今年は新築・中古とも市場が活性化しそうです」(中山さん)
このように2013年は消費税増税前の駆け込み需要から新築マンションの市況が盛り上がりましたが、2014年は価格上昇で需要の落ち込みも懸念されます。反対に中古物件のマーケットは全般的に回復が期待されるでしょう。
「2014年のうちに消費税率の10%への引き上げが決まれば、再び駆け込み需要が発生することが考えられます。」(中山さん)
今年も昨年に引き続き、消費税の動向から目が離せそうもありません。
(データ提供:東京カンテイ)