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繁華街としての新宿、その発展

江戸時代の「内藤新宿」の頃から新宿は商業地であったが、「新宿駅」の発展とともに大小の商店が多数生まれた。


マスクメロンや輸入バナナなど、珍しい果物が並んだ「高野」 MAP __

1885(明治18)年、初代・髙野吉太郎氏は繭の仲買や古道具の販売店として「高野商店」を創業。1900(明治33)年に果物の専門店に改められた。創業時の木造の店舗は、1937(昭和12)年に地上3階、地下1階の鉄筋コンクリート造りのビルに改築され、モダンな佇まいで評判になった。マスクメロン、リンゴ、ブドウ、輸入果物のバナナ、マンゴーなど、当時としては珍しかった果物も取り扱い、都市生活を送る人々に新しい食文化を提示した。【画像は1936(昭和11)年】

写真は現在の「新宿高野本店」。贈答用の高級品や旬のフルーツを提供する果物店として営業を続けている。

新宿とともに発展していった「新宿中村屋」 MAP __

1901(明治34)年、相馬愛蔵氏・黒光氏は、「東京大学」の正門前にあったパン屋「中村屋」を買い取り、オーナーとして創業。1907(明治40)年に新宿へ出店し、1909(明治42)年に現在地へ移転した。1927(昭和2)年には喫茶部(レストラン)を開設し、カリーやボルシチを提供した。他にも、中華まんや月餅などを売り出し、業容を広げていった。【画像は明治後期】

「中村屋」は「タカノフルーツパーラー」に隣接して建つ。建物は2014(平成26)年に商業施設「新宿中村屋ビル」として建て替えられたが、店舗では昔からの新宿の食文化が楽しめる。

書物を通じて、新宿から活字文化を発信した「紀伊國屋書店」 MAP __

薪炭問屋であった「紀伊國屋」が、書店業に転じたのは1927(昭和2)年のこと。幼い頃から読書好きだった創業者・田辺茂一氏の発案による。「紀伊國屋書店」は井伏鱒二氏ら小説家が集うサロンのような存在で、出版産業の拡大とともに店舗も拡大した。【画像は1947(昭和22)年】

現在「新宿本店」がある「紀伊國屋ビルディング」は、戦後を代表する建築家・前川國男氏の設計で1964(昭和39)年に竣工している。陶板タイルを貼り付けた優美な佇まいで、2017(平成29)年には東京都選定歴史的建造物に選定されている。

昭和初期のカフェー街 MAP __

「新宿駅」周辺に商業施設が相次いで生まれた昭和初期、「三越」(現「ビックカメラ 新宿東口店」)の裏手には、西洋風のダンスホールやカフェー、バーが集まる小洒落たカフェー街が形成された。文化人だけでなく、サラリーマン、学生も集った社交の場であった。小説家の林芙美子氏も、23歳のころに、新宿界隈のカフェーに勤務していたという。【画像は昭和初期】

現在はカフェー街に替わって飲食店などが建ち並んでおり、昼夜を問わず賑わう空間となっている。奥に見える「ビックカメラ 新宿東口店」(旧「三越」)は、現在も戦前の建物を使用している。


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