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江戸を護る「寛永寺」


三代将軍・徳川家光が開基した「寛永寺」 MAP __

「寛永寺」は江戸初期の1625(寛永2)年、「江戸城」の鬼門にあたる「上野の山」に建立された。開基は三代将軍・徳川家光で、開山は天海大僧正。京都における「京都御所」とその鬼門である「比叡山」に建立された「延暦寺」にならったもので、寺号も「延暦寺」同様に、創建時の元号から「寛永寺」と命名された。写真は京都の「清水寺」本堂を模した懸造の「清水観音堂」。【画像は明治後期】

「清水観音堂」は1631(寛永8)年に建立、1694(元禄7)年に現在地へ移築されており、「上野の山」に現存する創建年時の明確な建造物としては最古のものとなっている。

「上野東照宮」の「五重塔」 MAP __

1627(寛永4)年、開山まもない「寛永寺」境内に、徳川家康を祀る神社「上野東照宮」が創建となった。1631(寛永8)年(「清水観音堂」建立と同年)、徳川将軍家の側近・土井利勝の寄進により「上野東照宮」参道に「五重塔」が建立された。この「五重塔」は1639(寛永16)年に花見客の失火で焼失してしまうが、土井利勝は同年のうちに再建した。明治期に入り「神仏分離令」が出ると、仏塔である「五重塔」が「上野東照宮」の所属のままでは取り壊されてしまうため、当時の宮司が「五重塔」は「寛永寺」の所属であると申し出て取り壊しを免れた。【画像は明治後期】

1911(明治44)年には「寛永寺塔婆(五重塔)」として、「古社寺保存法」の「特別保護建築物」(現「重要文化財」)に指定された。「太平洋戦争」中、管理が行き届かずに荒廃し、1958(昭和33)年に東京都へ寄付され、現在は「恩賜上野動物園」の一画に「旧寛永寺五重塔」として保存されている。写真は「上野東照宮」参道側からの撮影。


レリーフとして顔面部が残る「上野大仏」 MAP __

「上野大仏」は1631(寛永8)年(「清水観音堂」建立と同年)、越後村上藩主・堀直寄が戦死者の慰霊のために建立したことに始まる。当初は漆喰で作られていたが、のちに青銅製となった。江戸期の間は、地震や火災による倒壊・破損と再建が繰り返され、大仏殿で覆われていた時期もあった。

江戸末期の1843(天保14)年、越後村松藩主・堀直央(直寄の子孫)の寄進により写真の大仏が新鋳された。「関東大震災」で頭部が落下、昭和初期に再建が計画されたが実現せず、戦時中の「金属類回収令」で顔面部以外が供出された。【画像は明治後期】

1972(昭和47)年、「寛永寺」に保管されていた顔面部がレリーフとして安置された。顔だけを残し『これ以上は落ちない』ことから、近年は合格祈願に訪れる受験生も多くなり、『合格大仏』とも呼ばれるようになった。

「上野公園」内に建立された「彰義隊の墓」 MAP __

「上野の山」は、「戊辰戦争」のうちの1868(慶応4)年に「上野戦争」の戦地となり、「寛永寺」は戦火により多くの建物を焼失した。旧幕府軍の「彰義隊」は新政府軍に敗北し、266名ともいわれる戦死者を出したが、当初、その遺骸を表立って供養することは許されなかった。その後、元隊士が明治政府に願い出て許可を受け、1881(明治14)年、「上野公園」内に「彰義隊の墓」が建立された。墓あたりは「上野戦争」の激戦地だったといわれる。【画像は明治後期】

写真は現在の「彰義隊の墓」で、墓碑には山岡鉄舟の筆で「戦死之墓」と刻まれている。手前の小碑は、「上野戦争」の翌年に「寛永寺」子院の住職が、供養のため「彰義隊戦死之墓」と刻み、この地へ密かに埋納していたもので、墓を建立する際に発見された。

江戸末期の上野付近の切絵図

図は江戸末期の上野付近の切絵図。右上(北西)の「上野の山」には、本坊をはじめとする「寛永寺」の伽藍が広がっている。この本坊は、表門を残して「上野戦争」で焼失、その跡地は現在「東京国立博物館」になっている。「寛永寺」境内には1627(寛永4)年に徳川家康を祀る神社として「上野東照宮」が創建された。また、「上野の山」には、天海大僧正が吉野から桜を移植させており、江戸時代にはすでに桜の名所として有名になっていた。「山下」(「上野の山」の東側、図では下側)に立ち並ぶ「寛永寺」の子院(「吉祥院」など)一帯は、明治期に「上野駅」となった。「上野の山」に続く「下谷広小路(上野広小路)」の先には大名屋敷(家紋入りは上屋敷)が並び、池之端や神田方面にも大名屋敷が広がる。白地に人名が描かれている細かい敷地は武家地で、特に細かい部分は「御徒組」などの下級武士の大縄地(組屋敷としてまとめて記載されているところもある)、灰色は町人地。「御徒組」は御徒町の地名の由来となっている。【図は1862(文久2)年】



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