『春日曼荼羅』は平安時代から江戸時代にかけて、神仏習合の影響を受け描かれたもので、「春日大社」の鳥瞰図を描いた『宮曼荼羅』、「興福寺」とともに描かれた『社寺曼荼羅』などがある。その一種である『鹿曼荼羅』は「武甕槌命」が常陸(現・茨城県)の鹿島から「御蓋山」に降り立ったという伝説に基づき、春日の「神鹿(しんろく)」が榊の枝を鞍上に乗せている様子が描かれた図のことで、多くの『鹿曼荼羅』が存在する。画像の『春日鹿曼荼羅』は「奈良国立博物館」が所蔵する14世紀に描かれたもの。上部に「御蓋山」と「若草山」が描かれている。下部には「一之鳥居」と参道、遊ぶ鹿が描かれ写実的な要素がみられるのが特徴となっている。
「春日大社」の鹿は神の使いであり、その姿を視覚化した『春日鹿曼荼羅』は奈良の地と鹿の繋がりを物語っている。現在も街中に暮らす野生の鹿は、住民に守られ共生してきたことにより、鹿は市民にとって特別な存在となっている。