図は1930(昭和5)年の『奈良名勝案内図』で、奈良市内の名所旧跡が1枚の地図の中に収められている。図左端に国鉄(現・JR)の蒸気機関車が走る関西線が描かれ、古都の玄関口となる「奈良駅」がある。同じく左の大阪側からは、大阪電気軌道(現・近鉄奈良線)が延び、現在の「国道369号」を経て市内の中心部に至っている。市内を横切るメインストリートは、「平城京」の「三条大路」に由来する「三條通(三条通り)」である。
主要な観光名所が赤丸で記されているほか、「東大寺」の大仏、「正倉院」、「奈良帝室博物館」(現「奈良国立博物館」)などは、イラストでも表示されている。また、奈良に置かれていた陸軍の連隊である「歩兵第38連隊」の存在が強く示され、兵士のイラストも描かれている。右下には観光地らしく、名所を人力車で廻る際の所要時間と料金が書かれている。