熊本市中心部の南東に位置している「江津（えづ）湖」。「江津塘（えづども）」築造により形成された「加勢川」の河川膨張湖で、熊本を語る上で欠かせないシンボルのひとつ。「江津湖」の北側にある庭園「水前寺成趣（じょうじゅ）園」は細川忠利によって築かれた「水前寺御茶屋」が始まりで、1929（昭和4）年には国の名勝と史跡にも指定されている。現在は「水前寺江津湖公園」として整備され、「熊本市動植物園」や豊かな親水空間を求めて、多くの観光客が訪れている。
熊本藩の細川家初代藩主、細川忠利が1632（寛永9）年に築いた「水前寺御茶屋」は、三代藩主の細川綱利のときに詩人、陶淵明の「帰去来辞」にちなみ「成趣園」と名付けられ、現在のような形になった。「明治維新」後の1878（明治11）年に園内に「出水神社」が創建され、神社の社地として庭園が払い下げられた。桃山式の回遊庭園となっており、「富士山」や「琵琶湖」など「東海道五十三次」の名所に見立てた山水の美を楽しむことができる。【画像は大正～昭和戦前期】
園内には1912（大正元）年、肥後細川家の礎を築いた細川幽斎ゆかりの「古今伝授の間」が京都から移築されている。1929（昭和4）年には、国の名勝・史跡に指定されている。
現在の「熊本県立図書館」がある場所には、戦前「江津花壇」と呼ばれる料亭があった。江戸時代に細川家の別邸である「砂取細川邸」が整備され、「西南戦争」後、「細川内膳家」の屋敷となった。1922（大正11）年に旧熊本藩士・六車初次郎の所有となり、美しい庭園を持つ料亭「江津花壇」を開業した。「太平洋戦争」中は、「三菱重工業」の「三菱江津荘」となり、戦後は料亭「新茶屋」、「井関農機江津荘」などに変わった。写真は、昭和戦前期の「江津花壇」の玄関。【画像は昭和戦前期】
料亭の建物は1972（昭和47）年に解体され、ボウリング場の「江津ガーデンボール」が建てられた。1980（昭和55）年に廃業、その後、県所有地となり1985（昭和60）年に「熊本県立図書館」が開館した。
「江津湖」は有明海に注ぐ「緑川」水系の「加勢川」流域にある河川膨張湖で、「上江津湖」と「下江津湖」に分かれている。加藤清正が治水対策として「加勢川」の右岸に堤防の「江津塘（えづども）」を築造したことによって水が堰き止められ、川幅が広がり現在の「江津湖」が形成された。江戸時代以降は舟遊池となり、鮒料理が名物として親しまれていた。また、「上江津湖」に自生する「スイゼンジノリ」は国の天然記念物に指定されている。写真は昭和初期の舟遊びの様子。「加勢川」に架かる橋は、「加勢川」右岸（写真では左側）にあった画図村の村長・斎藤清房氏が1929（昭和4年）に私財を投じて架橋した木橋「斎藤橋」。橋の奥に見える山は「金峰山」となる。【画像は昭和初期】
「斎藤橋」が架けられていた場所には「国道57号 熊本東バイパス」の「江津斉藤橋」（写真）が1983（昭和58）年に竣工した。
写真は「江津斉藤橋」から望む「金峰山」。斎藤家は画図村の地主で、俳人・中村汀女（旧姓・本名は斎藤破魔子）氏の生家でもあった。現在、「江津斉藤橋」のそば、「上江津湖」の湖畔に汀女氏の句碑が立てられている。
写真は「上江津湖」から北東方面を望む。「上江津湖」「下江津湖」一帯は、現在は「水前寺江津湖公園」として市民の憩いの場となっている。2012（平成24）年4月に熊本市が政令指定都市となったことを機に、「江津湖」全域の管理が熊本県から熊本市に移管された。
「熊本動物園」は1929（昭和4）年に日本で6番目、九州最初の動物園として「水前寺成趣園」の東側で開園。写真は昭和戦前期に撮影された、入口から園内を見た風景。戦時中の1945（昭和20）年に一時閉園となった。
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写真は「熊本動物園」の跡地。「水前寺成趣園」の「富士山」築山の東側にあった。
戦後の1947（昭和22）年に再開されたものの、敷地が手狭であったことから、「下江津湖」北側に移転が決まった。1969（昭和44）年4月にオープン記念「くまもと動物大博覧会」が開催され、7月に現在の場所に開園した。1991（平成3）年4月に隣接地で整備を進めていた都市緑化植物園と一体化され「熊本市動植物園」に改称。現在は約120種・700頭の動物と約800種・5万点の植物が出迎えてくれるほか、遊園地ゾーンも併設されている。写真の正門は2022（令和4）年にリニューアルされた。
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