土地の境界がわからない、調べてもはっきりしない。現地でも、机の上でも、わかりづらい土地の境界について、具体例を交えて、できる限りわかりやすく伝える(ことを目的とした)、土地家屋調査士が解説したアドバイスです。
分筆と合筆をまとめてやってしまえる?
過去、このコラムにおいては
・1筆の土地を複数の筆に分ける「分筆登記」
・複数の筆の土地を1筆の土地にまとめる「合筆登記」
といったものをご紹介してきました。
さて実は、これらの登記は、まとめて一回でやってしまうことができます。
その名も「分合筆登記」!
今回はその分合筆登記についてお話をしましょう。
一定の場合には、複数の登記をまとめて申請することができる
不動産の登記の申請は、原則として一つずつしなければなりません。しかし、例外的に、一定の場合には複数の登記をまとめて申請できることがあります。その詳しい規定は、不動産登記規則35条に定められているのですが、その1号に以下のような規定があります。
土地の一部を分筆して、これを他の土地に合筆しようとする場合において、分筆の登記及び合筆の登記の申請をするときは、一の申請情報によって申請することができる。
これは、例えば以下のようなケースです。
4番の土地と3番の土地が相互に隣接していて、4番の土地の一部を分筆して、3番の土地に合筆したいとします。
通常であれば、まず、4番の土地を分筆して、4番1と4番2の2筆にします。(土地は、分筆すると支号と呼ばれる枝番が付されます)
次に、4番2の土地を、隣地の3番と合筆します。合筆すると、地番は、合筆前の首位の地番(本番の数字が若い地番)になりますので、合筆後の地番は3番となります。
こうして、手続きが完了します。最終的には、4番1と3番の土地の2筆の土地となりました。
ただ、この手続きにはあまり効率的ではない部分があります。それは、4番2の登記記録がすぐに閉鎖されてしまうことです。
土地は、一筆の土地ごとに登記記録が作成されます。4番の土地を分筆してできた4番2の土地については、新たに登記記録が作られることになります。
一方で、合筆登記を申請すると、首位の地番以外の登記記録はすべて閉鎖されます。3番の登記記録に全てをまとめてしまうので、その他は不要になるからです。
とすると、4番2の登記記録は、作ったそばからすぐに閉鎖してしまうことになり、登記所の手間だけがムダにかかってしまうのです。
そこで、土地の一部を分筆して、その部分を隣接地に合筆しようとする場合には、分筆と合筆の手続きを一気に行うことができるとされました。これを「一の申請情報による申請」といいます。
では、これをするとどうなるでしょうか。最初は先ほどと同じくこの状態ですが
この登記を申請すると、いきなりこの状態にすることができます。
見てお分かりかと思いますが、地番が変わっていませんね。元通り4番と3番です。この登記申請においては、新しい登記記録を作ることはせず、4番と3番の登記記録の内容を変更するだけで済ませるので、地番を変える必要がないのです。その結果、まるで筆界の位置だけがスライドしたようになります。
また、これらの土地に所有権の登記がある場合、申請に必要な登録免許税の額も変わってきます。分筆してから合筆すると、最初の分筆で2,000円、次の合筆で1,000円となり、合計で3,000円の登録免許税となります。
一方、分合筆登記で申請した場合、登記完了後の土地1筆につき1,000円という計算になるので、2,000円しかかからないことになります。つまり、登記所の手続きだけでなく、申請人にとってもメリットがあるわけですね。
こうした「一の申請情報による申請」ができる場合は他にもあります。ただ、できるからといって、常にまとめて申請する方がよいとも限りません。むしろ、別々に申請した方がスムーズにいく場合もあります。また、地域によってはそもそも登記所が一の申請情報による申請を受け付けていないこともあります。
「こういう場合はできるのかな?」「できるとして、メリットはあるのかな?」と思われたら、お近くの土地家屋調査士までご相談ください。