土地の境界がわからない、調べてもはっきりしない。現地でも、机の上でも、わかりづらい土地の境界について、具体例を交えて、できる限りわかりやすく伝える(ことを目的とした)、土地家屋調査士が解説したアドバイスです。
境界を決めるということ
土地家屋調査士法人東西合同事務所の土地家屋調査士 野﨑 匠と申します。
これから本コラムにおいて境界に関する問題や気を付けなければならないこと、知っておくべきこと等について、掲載させていただこうと思います。どうぞよろしくおねがいいたします。
今回は「境界を決めるということ」について、お話していきたいと思います。
「境界」の概念
「境界」には2種類の概念があります。公法上の境界(筆界)と私法上の境界(所有権界または占有界)という概念です。これは境界そのものが二つあるわけではありません。境界に対しての考え方が二つあるということになります。
公法上の境界(筆界)
まず公法上の境界(筆界)に関してですが、これは客観的固有に定まっていて(あらかじめ原始的に存在していて)お互いの合意で動かしたりすることのできない性質のものです。
従って公法上の境界(筆界)を立ち会って決めるということは何を意味するかというと、実際現地でその原始的に存する線がどこにあるのかということの共通認識の確認をする、ということになります。
もともと客観的固有に決まっているものなのだから、わざわざ立ち会って決める必要はないのでは?というふうな考えもでてくるように思われますが、実際に現地で公法上の境界(筆界)はここである、ということを探し出す(つまり指し示す=確認する)ことが一般の人々には非常に難しいことなのです。
そのために土地家屋調査士が法務局に備え付けられている公図、地積測量図、登記事項証明書(昔で言うところの登記簿謄本)や、過去に測量を実施したことによる図面等を精査しそれらをもとに測量を実施し、その線を割り出さなければなりません。性質上、どちらかの主張に有利に決めること等はできません。すなわちその客観的固有に定まっている線を探し出すのが土地家屋調査士の業務の根幹といえます。
私法上の境界(所有権界または占有界)
次に私法上の境界(所有権界または占有界)に関してですが、自分の土地の所有権の及ぶ範囲がお隣と接する部分のどこまでなのか?という考え方で、相手との合意で決めることのできる線になります。塀等で仕切られている線が自分の土地とお隣の土地との境であり、かつお互いにそう思っている(合意している)ということです。
通常、自分の土地の所有権が及ぶ範囲とお隣の土地の所有権が及ぶ範囲の境というのはどのようにしてお互いが決めるのかといいますと、公法上の境界(筆界)でお互いに合意していることがほとんどです。つまり、公法上の境界(筆界)=私法上の境界(所有権界または占有界)となっているわけです。
ですから、「境界を決めるということ」というのは、「公法上の境界(筆界)と私法上の境界(所有権界または占有界)が一致しており、それを現地においてどこであるということがお互いにわかることを確認した」ということになります。通常その確認がなされたことを第三者に対しても知らせることができるようにするために「境界確認書」というものを取り交わすことが通例ですが、それには次のような記載がなされます。
境界確認書
「甲と乙は土地の境界に関し異議なく確認し、これを証するために本境界確認書を2通作成し、各自がそれを保有する」
のような振れあいで記載されますが、これは
「甲と乙は公法上の境界(筆界)がどこであるかについて共通の認識を持ち、現地でどこがその線なのかをお互いに確認することができ、なおかつその線がお互いの所有権の及ぶ範囲であることを確認し、これを証するために本境界確認書を2通作成し、各自がそれを保有する」
という意味になります。つまり、公法上の境界(筆界)が明白で所有権界(占有界)と一致しており、かつ争いがないということが決定した、ということになります。これが境界確認書というものの本当の内容です。
境界が一致しない?
ここで一つ疑問が生じます。
では、公法上の境界(筆界)と私法上の境界(所有権界または占有界)が明らかではなかったり、一致しない場合があるのか?
そのような場合、果たしてどういうことが起こるのか?
結論から申し上げますと、そのような場合というのはあり得ます。当然といえば当然なのですが、
・公法上の境界(筆界)がどこであるかについて共通の認識がもてない。
・現地でどこがその線なのかがお互いに確認することができない。
・その線(公法上の境界(筆界))がお互いの所有権の及ぶ範囲であることを確認できない。
のいずれかが当てはまります。すべてが当てはまらないと「境界が決まった」ことにはなりません。
上記いずれかに当てはまった場合どのようなことが起こるかというと、大きなトラブルになる可能性が非常に高いです。取引(処分)ができなかったり、裁判になったりと、様々な問題が起こります。
以後そのような具体的な事例や解決策、そもそもなぜ境界を決める必要があるのか?等について掲載していきたいと思います。
それではまた、次回のコラムで。