土地の境界がわからない、調べてもはっきりしない。現地でも、机の上でも、わかりづらい土地の境界について、具体例を交えて、できる限りわかりやすく伝える(ことを目的とした)、土地家屋調査士が解説したアドバイスです。
境界標はどの位置で測る?
土地の境界を明示するものとして、「境界標」があります。
本来、土地は、崖や水面などがない限り地続きになっていますから、境界は目に見えません。したがって、境界を明らかにするには、何らかの目印が必要になるわけです。地面にチョークで線を引っ張ってもいつかは消えてしまいますし、全ての境界にブロックを設置するのも大変です。そこで境界標の出番というわけです。境界は直線で構成されていますから、ポイントとなる点に境界標を設置すれば、それらを結んだ線が境界と判断できるのです。
さて、一言で境界標といっても、様々な種類があります。コンクリート杭、金属プレート、石杭、プラスチック杭、木杭、鋲といった素材の違いもありますが、その形状によっても示す位置が変わってきます。
今回は、境界標が示す境界の位置について詳しくみていきましょう。
十字
頭の部分に、以下のような十字がある場合、その十字の中央が境界点となります。写真は金属プレートですが、コンクリート杭やプラスチック杭、石杭などでも同様です。
上記の赤い線は太く見えますが、境界点は「中央」の一点になります。境界標を設置するときは、ミリ単位まで正確に入れることが求められるので、「太い十字のどこか」ではなく、「中央」が明示された境界点になります。
とはいえ、設置してから長期間が経過すると、境界標も移動してしまうことがあります。地震や地殻変動で動くこともありますし、工事や経年劣化によって境界標を設置した地物がズレてしまうこともあります。例えば、以下の写真は古くに設置された十字の石杭ですが、測量した結果、本来の正しい位置からズレていることが分かりました(本来の位置は、ポールの先の黄色いペンキをつけたところになります)。これはあくまで調べた結果ズレていた例ではありますが、本来の境界標が示す境界点は中央だということを覚えておいてください。
矢印
矢印型は分かりやすいですね。矢印の指し示している部分が境界点となります。ただし、以下のように、面取りされている境界標の場合は、矢印の先端部分ではなく、その先にある境界標の端が境界点となることに注意しなければなりません。
T字
T字は、主に三者境において使用される境界標となります。Tが中央に配置されているものと、端にあるものの2種類があります。中央の場合は、十字と同様、交点部分が境界点となります。一方で、端にある場合は、外側の辺の中央になります。
マイナス(方向杭)
マイナスの境界標はちょっと特殊で、境界点ではなく「境界線」を明示するものになります。これは、何かの理由で境界点が明確ではない場合に、境界線のみを示すために使われることがあります。方向杭とも言われます。
鋲、刻み、くぼみ
地面に打ち込んだ金属鋲が境界となることもあります。杭や金属プレートの設置が難しい場所でよく使用されます。この場合、鋲の中心が境界点となります。なお、地面だけでなく、既設の石杭に打ち込まれていることもあります。古い御影石の杭は、中央付近にくぼみが作られて境界点が明示されていることが多いのですが、摩耗してくぼみが分かりづらくなっていたり、ズレていることもあるので、鋲を打ち込んで正しい位置を明示するのです。
また、仮設の場合は、木杭に鋲を打ったものを使ったり、ペンキで示すこともあります。以下は木杭にペンキを塗った例です。
境界標は、皆さんの大事な土地の範囲を示すという非常に重要な役割を果たしています。境界の位置が分からなければ、隣地所有者との間で無用な境界トラブルを招きかねません。もしも境界標が見当たらなかったり、境界の位置が不明になっているようであれば、お早目に土地家屋調査士までご相談ください。