不動産を中心とした資産活用及び相続対策について、税理士のアドバイスです。
空き家特例Q&A
Q&A
Q1:被相続人は亡くなる数か月前に老人ホームに入居していた場合、空き家特例は受けられますか
A1:YESとなる場合があります。
2019年(平成31年)4月1日以後に行われる譲渡の場合、次の要件を満たせば、相続開始の直前において、被相続人の居住の用に供されていたものとされ、空き家特例は受けられます。(措法35④、措令23⑥⑦)
① 被相続人が要介護認定等を受け、かつ、相続開始の直前まで老人ホームに入居していたこと。
② 家屋を被相続人の物品の保管等で使用し、かつその家屋を事業の用、貸付の用又は被相続人以外の居住の用に供されていなかったこと。
Q2:被相続人は自宅に住んでいましたが、亡くなる数か月前に持病が悪化して入院しました。この場合、空き家特例は受けられますか
A2:YES。長期入院により被相続人の生活の本拠が自宅から病院に移るとは言えないからです。
Q3:被相続人は自宅の2階を学生に賃貸し、被相続人は1階に住んでいました。この場合、1階部分について空き家特例を受けることができますか。
A3:NOです。空き家特例を受けるためには、相続開始直前において家屋に一人で住んでいたことが必要です。
Q4:被相続人は自宅の2階を学生に賃貸し、被相続人は1階に住んでいました。1階と2階は構造上区分され区分所有登記がなされています。1階部分だけ空き家特例を受けることができますか。
A4:NOです。区分所有登記がなされている建物はこの特例の対象外です(措法35④二、措通35-11)。
Q5:被相続人の自宅は敷地面積が300坪ある邸宅です。敷地内には被相続人が起臥寝食している母屋とは別に茶室を含む離れや蔵があります。全体を一体として使用しています。敷地300坪全体を空き家特例の対象として計算してもいいですか。
A5:母屋の敷地に相当する部分だけが空き家特例の対象となります。その他の部分(離れや蔵の敷地)は対象外です。計算は自宅という用途上不可分の関係にある母屋、離れ、蔵の3つの建物の1階部分の面積で300坪の敷地を案分して計算します(措通35-13)。
(注1)被相続人以外の者が相続の開始の直前において所有していた土地等の面積も含まれる。
(注2)被相続人以外の者が所有していた建築物も含まれる。
(注3)被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人の居住の用に供されていた家屋の敷地の用に供されていた土地等の面積のうち、譲渡した土地等の面積による。
Q6:被相続人の自宅敷地300坪のうち100坪は相続人が所有している土地です。敷地全体のうち母屋に対応する部分だけが空き家特例の対象として計算できるということですが、この計算をするときに、相続人が所有している敷地も含めて案分計算をするのでしょうか
A6:YES。案分計算するときには、被相続人以外の者が相続の開始の直前において所有していた土地等の面積も含まれますし、被相続人以外の者が所有していた建築物も合わせて計算します。
Q7:被相続人の自宅のうち、1/3が事務所となっていました。この場合、空き家特例の適用はありますか。
A7:被相続人が一人で住んでいた家屋の一部が事務所や店舗など非居住用である場合は、延べ床面積のうち、居住用部分に相当する部分の敷地が空き家特例の適用対象となります(措通31の3-7)。
Q8:被相続人の自宅のうち、5%部分が非居住用であった場合も案分計算が必要ですか。
A8:被相続人の自宅や敷地のうち非居住用部分が全体の10%以下(居住用が90%以上)である場合は、家屋や敷地の全部が居住用として計算することができます(措通31の3-8)。
Q9:相続人甲は被相続人の自宅敷地だけを相続し、相続人乙は被相続人の自宅家屋だけを相続しました。二人は同一の相手に合計6,000万円で敷地と家屋を譲渡しました。他の要件を全て充たしている場合、二人は空き家特例を適用できますか。
A9:NO。空き家特例は被相続人の自宅土地建物の両方を取得した人が一定の要件を具備した譲渡を行った場合に適用可能です。土地だけとか家屋だけを取得し譲渡した人は適用できません。
Q10:私は被相続人の自宅建物と敷地を昨年1月に相続しました。相続税の納税のために敷地の半分を2023年(令和5年)中に9,000万円で第三者に売却しました。譲渡価額が1億円以下なら他の要件を充たせば空き家特例を適用できると思いますがいかがでしょうか。ちなみに昨年中に敷地の残り半分のうち一部を娘に持分贈与しています。その価額は相続税評価額で900万円です。
A10:譲渡には贈与や著しく低い価額の対価による譲渡を含みます(措令23⑩)。相続税評価額900万円の敷地持分を贈与した場合に、相続税評価額ではなく時価で算定した金額が1,000万円を超える場合には合計1億円を超えるので空き家特例の適用はありません。
Q11:2022年(令和4年)中に空き家特例の適用対象となる家屋を取壊し、敷地の半分を3,000万円で譲渡し空き家特例の適用を受けました。特別控除前の譲渡所得は2,500万円でした。2023年(令和5年)に残りの半分を譲渡したところ、今回は500万円高めに売れ3,500万円で譲渡できました。2023年(令和5年)の譲渡では譲渡所得が3,000万円あります。2022年(令和4年)の譲渡につき特例の適用を止め修正申告を行えば、2023年(令和5年)の譲渡につき空き家特例の適用ができますか。
A11:NO。空き家特例は一人の相続人につき一回しか適用を受けることはできません。年分が異なる場合に選択替えを行うことはできません(措通35-18)。
空き家特例フローチャート
田中 耕司Kouji Tanaka税理士
JTMI税理士法人日本税務総研 https://tax365management.com/
JTMI税理士法人日本税務総研/相続支援ナビ https://souzoku.jtmi.jp/taxprime/
税理士法人日本税務総研 代表 大阪国税局・国税不服審判所、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)勤務を経て、平成17年より現職。上場企業や中小企業の会計実務、不服審査実務にも通じた資産税の専門家。著書に『相続・贈与・遺贈の税務』(中央経済社)他。