不動産を中心とした資産活用及び相続対策について、税理士のアドバイスです。
土地や建物を所有するのは法人が有利か?個人が有利か?(第3回)
相続税の小規模宅地等の課税価格の特例を考えると
土地や建物を所有するのは法人が有利か、個人が有利かということについて、これまで二回に渡り、主に①相続時の評価と所得分散や②譲渡する時の有利不利をご説明してきました。ポイントをまとめると次のとおりです。
(1)含み益のある土地の相続時の評価は、①個人が直接土地を所有している場合と②「法人が所有している土地を、出資持分(株式)を通じて個人が所有している場合(法人の株式の評価を通じて土地を評価する場合)」と比べると、後者が有利であること
(2)不動産の賃貸収入は、法人で所有すると収入を家族内で分散することが可能となること
(3)いざ売ろうとする場合は、税率や居住用の特別控除を考えると個人が有利な傾向にあること
相続の場合
ところで、多額の相続税を負担しなければならない資産家X(製造業A株式会社会長、発行済議決権総数の過半数をXと親族が所有。)が亡くなった場合はどうでしょうか。
Xが相続開始時点で居住していた自宅の敷地は、配偶者や同居の親族などが相続または遺贈により取得すると、最高330㎡まで課税価格が80%減額されます。Xの自宅敷地面積が330㎡あり、評価額が1億円でも「配偶者や特定の親族が相続または遺贈により取得すると」課税価格は2,000万円となります(1億円×《1-80%》=2千万円)。
被相続人のご自宅の敷地は、配偶者や特定の親族が相続または遺贈により取得すると有利
「A株式会社の本社の敷地をXが所有し、Aに賃貸し、一定の要件を備えた親族が相続または遺贈により取得すると」本社の敷地は最高400㎡まで80%課税価格が減額されます。本社の敷地が400㎡、相続税評価額が5億円である場合は、課税価格は、1億円になるというわけです(5億円×《1-80%》)。このように、地価の高いところに自宅や社屋があり、その敷地を所有している資産家が亡くなった場合の相続税の申告では、個人所有が断然有利です。
会社経営者は、会社に賃貸している土地や建物を一定の相続人が取得すると有利
(まとめ)
不動産を所有する時は個人が有利か、法人が有利かを三回に分けてご説明してきました。結論的には、絶対にどちらが有利とかいうことはできないこと。家族構成、経済的条件及び不動産の種類(自宅、賃貸不動産、ご商売用の不動産、同族会社の経営者が法人に貸す不動産)などにより、有利不利が変化することをご理解いただけたのではないでしょうか。
田中 耕司Kouji Tanaka税理士
JTMI税理士法人日本税務総研 https://tax365management.com/
JTMI税理士法人日本税務総研/相続支援ナビ https://souzoku.jtmi.jp/taxprime/
税理士法人日本税務総研 代表 大阪国税局・国税不服審判所、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)勤務を経て、平成17年より現職。上場企業や中小企業の会計実務、不服審査実務にも通じた資産税の専門家。著書に『相続・贈与・遺贈の税務』(中央経済社)他。