専門家執筆Q&A
徳田 友夫

登記Q&A

登記
Q&A

司法書士
司法書士法人 東西合同事務所
徳田 友夫

不動産登記は、不動産に関連する法律行為には欠かせないものです。日頃一般の皆様が疑問に思われていること、また、登記手続きをする際に誰しもがぶつかると思われる疑問について解説しています。

登記に関する法律をQ&A形式で解説しています。

不動産登記について

Q
不動産登記とはどのようなものでしょうか?
A

 例えば、不動産売買契約を締結し自宅にしようと家を購入した場合、登記所に所有権移転登記を申請します。登記申請が行われると、登記所の登記官が調査し、不動産登記簿(不動産登記記録)に所有権の名義が変わったことを所有権移転登記として処理し、不動産登記簿(不動産登記記録)に記載します。

 不動産登記とは、このように登記官が土地または建物の名義が誰であるか、どのような権利義務が付着しているのかという権利関係とその不動産がどこに、どのようなものが、どの位の広さで存在するかというような所在、地目、地積、種類、構造、床面積という物理的現況を記録し、一般の公に向けて公示された記録をいいます。

Q
不動産登記ができる不動産とはどのようなものでしょうか?
A

 不動産登記法第2条第1号において、不動産は、土地または建物に限られています。

 土地とは、日本にある陸地を人為的に区分した一定の範囲のことをいい、一般的には、境界等で区切られた地面のことをいいます。

 また、不動産登記において建物は、屋根と壁に囲われ、土地に定着した建造物であって、建物を使用する用途として使える状態にあるものでなければなりません。

 よく、自宅にある物置は登記する必要はないのかというご質問をいただくことがあります。前述しましたように建物は、土地に定着していることが必要です。したがって、ブロックの上に据え置きされているだけの既製品のような物置は登記する必要はありません。

 また、建築確認済みの建築物が全て登記できるとは限りません。これは、建築基準法上の建築物としての建物と不動産登記法上の建物と基準が違うためです。

Q
不動産登記ができる権利にはどのようなものがありますか?
A

 登記できる権利については、不動産登記法第3条の中で定められており、大きく分けると所有権と所有権以外のものに分かれます。そして、さらに所有権以外の中で用益権と担保権に分かれます。

 所有権は、不動産登記簿では、甲区に記載され、所有権以外の用益権や担保権は、不動産登記簿では、乙区に記載されます。

 また、不動産登記法第3条以外で定められたものでは、買戻権や仮登記があります。

 下記に甲区、乙区に登記できる主な権利をまとめましたので参照してください。

Q
司法書士とはどのようなことをするのでしょうか?
A

 司法書士とは、司法書士法に基づき認められた国家資格を持つ者をいいます。

 業務の範囲は、「不動産や商業に関する登記」、「債権や動産の譲渡登記等の登記手続き」、「供託手続き」に関して依頼者からの嘱託を受けてその手続きを代理し、かつ裁判所、検察庁、または法務局、地方法務局に提出する書類を作成、「成年後見人等の財産管理業務」などをすることです。そして、「法務大臣の認定を受けた司法書士」については、「簡易裁判所」における訴額140万円を越えない「訴訟等の代理」及びこれらに関する相談を行うことも可能です。

 その司法書士業務の中でも不動産の権利に関する登記(不動産登記簿の甲区、乙区に関する登記)は、司法書士にとって、最も重要な仕事の一つになります。

 不動産は、高額な財産であり、その取引等では利害が対立することもあります。不動産取引において、不動産登記は権利を安定させるための最後の詰めとなる大事な役割を担っています。そのため、登記が確実にできることが保証されてこそ高額な金銭を支払うことができるのです。

 そのため、司法書士は、その登記手続きを代理することで、確実に不動産登記簿に記録することを請け負って不動産登記が円滑に進むことをサポートします。

Q
土地家屋調査士も不動産登記をしますが、司法書士とどのように違うのでしょうか?
A

 不動産登記において原則として、土地家屋調査士は、「不動産の表示に関する登記」を行い、司法書士は、「不動産の権利に関する登記」を行います。

 具体的に言えば、土地家屋調査士は、「不動産登記簿の表題部登記」、すなわち、建物を新築した場合に表題部の作成、登記された建物を取り壊したときの建物滅失登記、土地の地積更正登記、地目変更登記等を行います。

 そして、司法書士が行う「不動産の権利に関する登記」とは、具体的には、不動産登記簿の「甲区」「乙区」に関する登記をいい、土地家屋調査士とは、密接に関連していますがその業務は分けられています。

Q
不動産登記をすればどのような効力があるのでしょうか?
A

 登記の効力は、対抗力、権利推定力、形式的確定力があります。不動産登記は、主にこの3つの効力がバランスをとって不動産に対する権利関係を保護しています。

対抗力・・・
不動産に関して有効に成立した当事者間の権利関係は、登記がなければ第三者に対抗できないことをいいます。
権利推定力・・・
不動産登記簿に記録された登記は、その記録どおりに実体の権利関係が存在するという推定を生じさせる効力があることをいいます。
形式的確定力・・・
登記がなされると、その登記が有効か無効かにかかわらず、登記手続きにおいてその登記を無視して手続きをすることができない効力をいいます。
Q
不動産登記をしなければ、第三者への対抗力がないとはどういうことでしょうか?
A

 不動産登記の対抗力とは、自分がこの不動産の所有者であるとか、この不動産に抵当権を持っているということを第三者に主張することができることをいいます。

 例えば、Aさんが自分の不動産をBさんに売ったにもかかわらず、同じ不動産をCさんにも売った場合、Bさんが登記をしていないうちにCさんが先に登記をしてしまえば、Bさんは、Cさんよりも早くその不動産を買ったにもかかわらず、Bさんは、Cさんにその所有権を主張することはできません。

 すなわち、不動産の登記は登記申請をした順番によりその権利を主張できなかったり他の権利者より優先的に自らの権利を主張できたりするのです。

 不動産を売買した場合や、抵当権を設定した場合、登記申請を速やかに行うのはこの対抗力を得るためです。

 なお、対抗力は、あくまでも第三者に当事者間で有効に成立した権利関係を主張できないということであって、当事者間ではこの権利関係は有効です。

 前述の例で言えば、AさんとBさんの間で成立した売買もAさんとCさんとの間で成立した売買も共に有効であり、Cさんに対抗できなくなったBさんもAさんにはその所有権を主張することは可能となります。また、Cさんが登記をした上でBさんの所有権を認めることも一向に差支えありません。

 ただし、この登記の対抗力は、当事者間でその権利関係が有効に成立した場合に認められるものであって、その権利関係が有効に成立しなかった場合は、登記をしていても第三者に主張することはできません。

 前述の例で言えば、AさんとBさんの間で成立した売買は有効に成立しているがAさんとCさんとの間の売買の実体がなかったり、無効であったりした場合、Cさんは、登記していることをもって、Bさんに対抗することはできません。

Q
無効な売買を原因にして不動産登記をしてもその登記をもって第三者に自らの権利を主張できないのはなぜでしょうか?
A

 日本の不動産登記法では、公信の原則を採用していません。つまり、あくまでも登記は、第三者への対抗力を与えるだけのものであり、登記をしたからといって無効な法律関係が有効になるわけではありません。

 公信の原則とは、例えば、ある不動産の登記名義人であるAさんからその登記を信頼して不動産を買ったBさんは、Aさんが真実の所有者でなかったとしても、登記名義を信じてその不動産を買ったBさんに所有権を取得させるという原則です。

 すなわち、公信の原則とは、登記上の権利者が真実の権利者であると信じて取引をした者を法律上保護し権利を取得させる制度です。

 しかし、日本の不動産登記法では、公信の原則を採用していないため、例えば詐欺でその不動産の所有権を取得して登記をした者や、意思能力のないものからその不動産を取得して登記をした者から不動産を購入したものは、詐欺により取消があった場合や意思無能力により無効が認められた場合ではその登記を信じて不動産を購入した者の権利を保護しないことになります。

Q
登記を信じて不動産の売買をしても、登記によって必ずしも保護されるわけではないと聞いたのですが、どういうことでしょうか?
A

 登記には、あくまでも第三者への対抗力があるだけで、公信力はありません。したがって、必ずしも登記が真実の権利関係を表しているとは限らないのです。

 そのため、登記自体が無効である可能性があるため、売買の際の相手方の本人確認や物件の調査を行う必要性があります。

 ただし、日本の不動産登記制度では、「登記された内容どおりの権利関係が存在している」と推定を生じさせることを認めています。つまり、登記を信じて不動産の売買をした者は、無過失でその不動産を取得したと推定されるのです。これを登記の「権利推定力」といいます。

 例えば、不動産登記を有しているAさんからBさんが不動産を購入した場合、実はAさんがその不動産を権限もなく登記していたような場合、Bさんにその不動産を返せと真実の所有者であったCさんが訴えてもBさんは登記を信じてその不動産を購入したため無過失であることが推定されるため、CさんはBさんに過失があることを証明しなければBさんの登記を否定できないことになります。

 この権利推定力には、登記を信じたことが必要となります。したがって、Bさんは、登記を調査したことが重要です。登記を調査していない場合は、一般的には善意であっても過失はあることになります。

 このため、不動産を購入する際は、事前に不動産登記簿や地図、地積測量図、建物図面等を法務局で調査をする必要があり、それをしていない場合は、この権利推定力を受けられないため、保護されない可能性が出てくるのです。

Q
自宅の登記について勝手に他人に登記名義を書き換えられたのですが、この登記は無効なものとして無視しても良いのでしょうか?
A

 登記簿に一度登記されるとその登記の有効無効にかかわらずその登記を無視して登記することはできません。これを登記の形式的確定力といいます。

 例えば、Aさんから不動産を購入したBさんが登記をしないままにいるうちにAさんが、Bさんを害する目的で、Cさん名義に登記を変えてしまった場合、Cさん名義の登記は全く無効です。しかし、AさんがBさんと合意してB名義に登記を移すことになっても、AさんからBさんへ登記名義を変更することはできません。この場合、Cさんの登記を抹消するかもしくは、CさんからBさんへ所有権移転登記をするしかありません。なぜならば、Cさんの登記名義がある以上登記の形式的確定力からCさん名義の登記は、真正なものとして登記官が判断するためです。

Q
土地を賃借していて、賃借権の登記をしています。そこに所有者が抵当権を設定し登記をしてしまいました。賃借権はどのようになるのでしょうか?
A

 このような場合賃借権は、抵当権より先に登記されているため、抵当権が実行されこの不動産が競売にかけられようとも賃借権はこの不動産を競落した新しい所有者にも対抗できます。

 不動産登記簿になされた登記は、法令に別段の定めがない限り、受け付けられた順番が先の方が優先します。すなわち、この場合賃借権も抵当権も乙区になされそれぞれ登記の受付番号が付されますがその受付番号が若い方が優先します。

 不動産登記では、原則として先に登記により公示をなし、第三者対抗要件を備えたものを保護します。

 登記にかかわる権利変動があった場合、速やかに登記をすべきなのはこのためです。

Q
登記されている住所、氏名に変更があった場合の、住所、氏名の変更登記が義務化されると聞きましたが本当でしょうか?
A

令和3年の不動産登記法の改正により、令和8年4月1日(一部は令和8年2月2日)より、不動産を所有している場合の住所や氏名の変更の登記申請が義務化されます(具体的な施行日(スタート日)は、今後定められます。)。

 これは、所有者不明の土地が発生しないようにするため、不動産の所有者に氏名、住所等の変更登記申請を義務化し、その真正義務違反者には、5万円以下の過料の罰則を設けました。氏名、住所等の変更登記は、その変更があった時から2年以内に行う必要があります。

 なお、同時に登記官による職権での所有権の登記名義人の氏名住所の変更登記を認め、且つ登記官がその調査のため所有者が自然人の時は、住民基本台帳ネットワークシステムを利用し、法人の場合は、商業・法人登記情報システムから登記名義人の氏名住所変更登記に必要な情報を集めることができるようになることが想定されております。