専門家執筆Q&A
徳田 友夫

登記Q&A

登記
Q&A

司法書士
司法書士法人 東西合同事務所
徳田 友夫

不動産登記は、不動産に関連する法律行為には欠かせないものです。日頃一般の皆様が疑問に思われていること、また、登記手続きをする際に誰しもがぶつかると思われる疑問について解説しています。

登記に関する法律をQ&A形式で解説しています。

不動産の譲渡をお考えのお客様

Q
不動産を売却しようと考えています。登記手続きにどのようなものが必要となるでしょうか?
A

原則的には下記のものが必要となります。

 ただし、事例によって、追加書類等が必要となる場合があります。

 1.登記識別情報あるいは権利証書

 2.印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)

 3.固定資産評価証明書(当該年度のもの)

 4.実印

 5.身分証明書

Q
登記簿上の住所地と現在の住所地が異なる不動産を売却したいのですが、何か手続きが必要でしょうか?
A

 登記簿上の住所地と現在の住所地が異なることになった理由として、主に次の2つのケースが考えられます。

1.自分自身で住所移転をしたケース

 このケースでは、ご自身が住所移転をした際に、市役所・区役所等に住民票異動の手続きをしたと思います。

 登記簿上の住所も変更がされているものとお考えの方も多いのですが、残念ながら、登記簿上の住所変更の手続きは、住民票異動の手続きと連動していません。
その為、登記簿上の住所変更の手続きが必要となり、所有権登記名義人住所変更登記を申請することになります。

2.自分自身が住所移転をしたのではなく、行政側で行政区画の変更や町名変更等により登記簿上の住所地と現在の住所地が異なるケース

 市区町村側で、本人の意思に関係なく住所を変更した場合でも行政側で所有者の住所変更登記をすることはありません。
このケースでも、基本的には、登記簿上の住所の変更の手続きとして所有権登記名義人住所変更登記申請が必要となります。
ただし、このケースでは、登録免許税は、市区町村の発行する証明書を添付すれば非課税となります。

Q
登記簿上の住所変更の手続きに必要なものはどのようなものでしょうか?
A

 登記簿上の住所地から現在の住所地への移動したことがわかる住民票(住民票の中に前住所の記載があると思います)あるいは行政区画変更証明書等が必要となります(住所地を複数回異動している場合は、住民票の他に、除票(除かれた住民票)や戸籍の附票等が必要な場合があります)。

Q
住所変更の手続きをするには、費用はいくら位かかるのでしょうか?
A

 登記手続きの際に必要となる費用に、登録免許税があります。

 登録免許税は、ご自身で住所移転登記をする場合は、不動産1筆につき、1,000円の登録免許税がかかります。

 行政区画の変更等、行政側の変更による住所変更の登記手続きは、非課税扱いとなります。

 なお、登録免許税以外に、司法書士に依頼した場合は、司法書士への報酬等の費用がかかることになります。

Q
結婚して、登記簿上の姓と現在の姓が変わりました。今回、旧姓で登記している不動産を売却したいのですが、何か手続きが必要でしょうか?
A

 住所が移転した際の登記名義人の住所変更登記手続きと同様に、登記上の氏名変更の手続きは、市区町村における氏名変更の手続きとは連動していません。そのため別途、登記所において手続きが必要となります。

Q
氏名変更の手続きに必要なものはどのようなものでしょうか?
A

 本籍地入りの住民票と、氏名変更の記載のある戸籍謄本(抄本でも可)が必要となります。

Q
氏名変更の手続きをするには、費用はいくら位かかるのでしょうか?
A

 氏名変更された場合は、登録免許税は、不動産1個につき1,000円必要となります。なお、登録免許税以外に、司法書士に依頼した場合は、司法書士への報酬等の費用がかかることになります。

Q
不動産の登記名義が、夫婦共有名義になっています。この不動産を売却する際は、夫婦どちらかが代表して手続きをすれば良いでしょうか?
A

 売却する際の登記手続きは、不動産登記名義人であるご夫婦二人と買主と共同で登記手続きをする必要があります。登記に関する書類の署名・押印は、本人にしていただくことが必要であり、ご夫婦二人共に登記書類をご提出いただくことになります。

Q
不動産が私と息子の共有名義になっています。息子は、まだ、未成年です。私が代理人となって売却することができるのでしょうか?
A

 原則的には、未成年のお子様の法定代理人として、親権者が代理人となります。
ただし、ご夫婦の場合は共同親権となりますのでお二人でお子様を代理することになります。
 なお、売却しないでこの不動産を担保に親が債務者となり銀行から借入をしたいという場合、未成年者である子が不利益を受ける形となりますので親が子を代理することはできません。家庭裁判所で特別代理人の選任を受けていただく必要があります。

Q
亡くなった父(甲)名義の不動産を相続人である乙、丙がXに売却し、所有権移転登記を行いたいのですが、亡くなった父(甲)からのX名義に直接所有権移転登記手続きができるのでしょうか?
A

 亡くなられたお父様の名義の不動産に、相続人である乙、丙が住んでいても、また、固定資産税等の税金関係を支払っている状況であったとしても、登記簿上の名義人が亡くなっている場合、その不動産を売却するためには、まず相続登記の手続きが必要となります。したがって、一度下記のように相続人である乙、丙に登記した後、買主であるXに対して所有権移転登記を行う必要があります。

Q
父が認知症です。父名義の自宅を売却して、施設に入所させたいと考えています。家族の者が代わって、登記手続きの委任を司法書士にすることは、可能でしょうか?
A

 不動産の登記名義人が認知症の場合であっても、家族が、ご本人に代わって、手続きをすることや、委任することはできません。

 不動産の名義人であるご本人が認知症で、判断能力がない場合は、ご本人が売買契約や登記手続きをすることができませんので、家庭裁判所に成年後見人選任の申立てをして、成年後見人がご本人に代わって手続きを行うことになります。

 また、質問のような事案では、自宅が「居住用不動産」に該当しますので、不動産の売買の手続きをするためには、後見人選任後、「家庭裁判所の許可」が必要となります。

Q
登記識別情報(あるいは権利証書)がどこを探しても、見当たらないのですが、再発行をしてもらえるでしょうか?
A

 登記手続きの際には、売主となる登記名義人の登記申請意思を確認するため、登記識別情報(あるいは権利証書)を提出することが必要となります(【Q 「権利証」の制度がなくなったと聞いたのですが、どうなったのでしょうか?】 参照)。

 所有権移転登記等の申請を行い、登記手続きが完了すると、新しい登記名義人(不動産の買主または相続人等)には、法務局より登記識別情報が交付されます(以前は、登記手続きが完了すると、新しい登記名義人に権利証書が交付されていましたが、不動産登記法の改正に伴い、権利証書の制度が廃止され、登記識別情報が交付されることになりました)。

 しかし、登記識別情報(あるいは権利証書)は、普段使用するものでないため、次に使用して登記申請を行う場面で、はじめて、登記識別情報(あるいは権利証書)の紛失に気が付く場合があります。

 万が一、紛失していても、再発行はできません。このようなときは、次の方法により登記申請を行います(【Q 「登記済証」、「登記識別情報」を提供することができない場合、どのような手続きをすれば良いのでしょうか?】 参照)。

1.事前通知制度を利用する方法

2.司法書士(資格者代理人)等による本人確認情報を登記申請に添付する方法

 具体的な手続き方法につきましては、司法書士等へ相談してください。

Q
登記識別情報(あるいは権利証書)がどこを探しても、見当たりません。もし、盗まれていた場合、知らない間に登記名義が変えられてしまうのでしょうか?
A

 登記手続きをする際の本人確認手段の一つとして、登記識別情報(あるいは権利証書)の提出を求められますが、その他本人確認手段として、印鑑証明書の提出も必要となります。

 登記識別情報(あるいは権利証書)、実印、印鑑証明書カードの3点が一緒に盗難にあうと、本人が知らない間に登記名義が変更されてしまうおそれがあります。
 なお、登記識別情報を失念(紛失)した場合は、法務局に申請することで登記識別情報を失効させることができます。ただし、その後、登記識別情報が見つかった場合でも一度失効させた登記識別情報は再度復活させることはできません。

Q
一筆の土地の使用していない部分だけを売却することはできるでしょうか?
A

 売却は可能ですが、登記を行うのであれば、前提として、一筆の土地を売却したい部分と売却したくない部分に分筆する必要があります。

 分筆のためには、土地家屋調査士に現地を測量し、隣接の所有者との境界も明らかにしてもらい、分筆登記手続きをする必要があります。隣接の所有者にも境界確定等の立会いで協力してもらう必要がありますので、手続きには、時間を要することがあります。分筆を行ったうえで売却する際は、売買までに分筆登記が完了するかどうか予め注意してください。

 なお、登記簿は分筆により下記のように分筆後の新しい地番の登記簿が作成されます。

Q
現在、土地を2筆所有しています。登記をまとめて、一筆にすることはできるでしょうか?
A

 数筆の土地を合併して一筆の土地にすることを、合筆といいます。

 なお、主に次のような場合には、合筆の登記は、することができないとされています(不動産登記法第41条)。

1.相互に接続していない土地の合筆

2.地目または地番区域が相互に異なる土地の合筆の登記

3.表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆の登記

4.表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地の合筆の登記

5.所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地との合筆の登記

6.所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の合筆の登記

 (ただし、法務省令で定める地役権、担保権等の登記がある土地については、合筆できる場合があります)

 なお、合筆した場合不動産登記簿は、下記のようになります。参照してください。

Q
法務局で登記簿を取得してみると、現況が更地であるのに、その土地の上に建物の登記がありました。土地を売却する際に、この存在しない建物について、どのような登記手続きが必要でしょうか?
A

 存在しない建物の登記が残っている場合は、建物滅失の登記手続きをする必要があります。

 もし、建物の名義人が亡くなられている場合でも、相続人から滅失登記の手続きをすることが可能です。

 また、建物の名義人がどこにいるか分からない場合でも、土地の所有者から、利害関係人として法務局に対し滅失登記の申し出をすることも可能です。

 具体的には、土地家屋調査士の専門分野となりますので、土地家屋調査士に相談してください。

Q
金融機関から融資を受けたために、売却したい不動産に抵当権(根抵当権)の担保が設定されています。どうしたら良いでしょうか?
A

 融資を受けられた金融機関に事前に相談の上、金融機関に担保抹消に関する書類を準備する必要があります。

 不動産の売却代金で受けられている融資の返済をする場合は、売却の登記手続きをする際に同時に、抵当権(根抵当権)の担保抹消する登記手続きをすることとなります。