専門家執筆Q&A
徳田 友夫

登記Q&A

登記
Q&A

司法書士
司法書士法人 東西合同事務所
徳田 友夫

不動産登記は、不動産に関連する法律行為には欠かせないものです。日頃一般の皆様が疑問に思われていること、また、登記手続きをする際に誰しもがぶつかると思われる疑問について解説しています。

登記に関する法律をQ&A形式で解説しています。

贈与登記

Q
不動産の贈与を受けたのですが(をしたいのですが)どのような登記が必要でしょうか?
A

 贈与を原因とする所有権移転登記をすることになります。なお、登記の申請は、贈与を受けた人(登記権利者)と贈与をした人(登記義務者)が協力して共同申請によって行うのが原則です。

Q
口約束だけでも贈与はできると聞きました。また、登記をしないで放っておくとどうなるのでしょうか?
A

 口約束だけでも贈与はできます。ただし、軽率に口約束をしてしまった贈与者に酷な場合もあるでしょうから、民法では「書面によらない贈与」は各当事者が撤回することができるとされています(第550条)。したがって贈与を受ける場合は契約書等の書面を作成しておくことが権利を確保するために重要と言えるでしょう。なお、贈与の「履行の終わった部分」についてはこの限りでないとされており、書面によらない不動産の贈与契約において、その不動産の所有権移転登記が経由されたときは、贈与の履行が終わったものとして、贈与者はその贈与契約を取消すことができないという判例があります。

 登記は期限が決まっているわけでもなく、必ずしないといけないという決まりもありません。登記はあくまでも第三者に権利を対抗するための要件であり、実際の所有者と登記名義人が異なっていても違法とはならないからです。しかし、贈与を受けたのに登記をしないままでいるとその不動産の名義は贈与をした人のままですので、贈与をした人が他の人に売却して買主が先に所有権移転登記をしてしまうと不動産の所有権を対抗することができなくなってしまいます。また、贈与をした人が銀行から借入を行った場合の抵当権等の担保設定登記もできてしまうことにもなります。トラブルを防ぐためにも贈与を受けた場合は所有権移転登記をしておくべきです。

Q
贈与登記にはどのような書類が必要でしょうか?
A

 下記の書類が必要となります。

1 贈与を証する書面(贈与契約書や贈与証書等の原本)

2 贈与をした人(登記義務者)が所持している土地・建物の登記済証または登記識別情報

3 贈与をした人の印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)

4 贈与を受けた人(登記権利者)の住民票

5 贈与をした人及び贈与を受けた人の委任状(代理人(司法書士)が申請する場合)

6 不動産の固定資産評価証明書

 登記申請の際に添付する必要があるものですが、登記の際に納める登録免許税を計算するのにも必要です。法務局によっては固定資産税の納税通知書や固定資産名寄帳のコピーで対応してもらえるところもあります。登録免許税を計算するだけならお手元の納税通知書を用いて行うことができます。

Q
贈与登記の費用はどの位かかるのでしょうか?
A

 下記の費用があります。

1 国に納める登録免許税

 固定資産税の評価額の1,000分の20の登録免許税がかかります。評価額は役所で取得できる固定資産の評価証明書に記載されていますが、お手元の固定資産税納税通知書にも不動産の評価額が記載されています(実際の登記申請においては評価証明書原本が必要となる場合があります)。

2 司法書士に対する報酬

 司法書士に贈与契約書等の書類の作成や、贈与登記を依頼した場合の司法書士に対する報酬です。これは不動産の数や評価額等によって変わります。

3 その他郵便代等

Q
不動産の贈与を受けたのですが、相手方が登記手続きに協力してくれません。どうしたら良いでしょうか?
A

 登記の申請は、贈与を受けた人(登記権利者)と贈与をした人(登記義務者)の共同申請によってなされるのが原則です。もし、贈与をした人が登記申請に協力しない場合は裁判により所有権移転登記手続きをせよという判決を得てそれにより贈与を受けた人単独で登記を申請することができます。

Q
贈与を受けると贈与税がかかると聞きましたが、どうしたら良いでしょうか?
A

 贈与税は、個人から贈与により財産を取得した個人に対して、その財産の取得のときにおける時価を課税価格として課される税のことをいいます。もちろん不動産の贈与を受けた場合でも贈与税がかかります。1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円を超える場合には贈与税の申告をする必要があります。贈与財産が不動産の場合には、贈与を受けた時点の時価が課税価格になります。税率は、課税価格によって税率が変わる超過累進税率となっており税率も高いため不動産等高額のものを贈与された場合には多額の税金を納めなければならなくなりますので注意が必要です。

 贈与税の計算については下記のとおりです。

 贈与税の計算は、まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。そしてその残りの金額に税率を乗じて税額を計算することになります。

 参考として次頁に税率と速算表を掲載します。

 平成27年以降の贈与税の税率は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されました。「特例贈与財産」の税率は、直系尊属(祖父母や父母など)から、一定の年齢の者(子・孫など)への贈与の際の贈与税の計算に使用します。「一般贈与財産」よりも低めの税率になっており、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します。配偶者の父からの贈与等には使用できないことになります(「一定の年齢の者(子・孫など)」とは、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上の直系卑属のことをいいます)。

 ここで、速算表を掲載します。詳しくは国税庁のホームページ等を確認してください。

 また、相続時精算課税制度といって、所定の条件を満たして60歳以上の父母や祖父母から財産の贈与を受けた場合、贈与時に2,500万円までは非課税、それ以上の額に対しては一律20%の税率が適用され、実際に相続となったときに、贈与者から生前に贈与された額と相続財産とを合わせて相続税を計算して精算を行うという制度もあります。

 他に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた人が、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となる制度もあります。

 これらの税制上の制度は税制の改正により変更されることもありますし、贈与をすると贈与税以外に不動産取得税もかかります。また贈与契約書には印紙税もかかります。これらのこともふまえて詳しくは税理士や税務署に相談してください。

Q
長年連れ添った妻に不動産を贈与しようと考えています。贈与税がかからない夫婦間贈与とはどういったものでしょうか?
A

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産(居住用不動産を取得するための金銭の贈与でも同様です)を贈与した場合、基礎控除110万円の他に最高2,000万円まで贈与税がかからない(配偶者控除)という特例があります。特例の適用を受けるためには税務署へ贈与税の申告が必要です。配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であることなど、さまざまな要件がありますので、詳しくは税理士、税務署に相談された方が良いでしょう。