不動産登記は、不動産に関連する法律行為には欠かせないものです。日頃一般の皆様が疑問に思われていること、また、登記手続きをする際に誰しもがぶつかると思われる疑問について解説しています。
不動産の取得をお考えのお客様
日本の民法では、所有権の移転は当事者の意思表示だけで行うことができるとされています。例えば、不動産の売主と買主との間で、「いくらで売ります」「いくらで買います」と合意が形成されれば、不動産の所有権は買主に移ります。ですから、登記手続きをすることは、義務ではありません。
しかし、一方では、所有権移転等の不動産の物権変動は登記によって公示することで不動産取引の安全性を確保しています。また、民法第177条によれば、「不動産に関する物権の変動は、登記をしなければ、これを第三者に対抗することができない。」と規定されています。
つまり、第三者に対抗するために登記が必要となります。
今回のような、売買による所有権移転登記手続きは、登記手続き自体が任意ですので、いつまでにしないといけないという決まりはありません。
しかし、「不動産に関する物権の変動は、登記をしなければ、これを第三者に対抗することができない」(民法177条)とあるように、万が一、売主が、あなたが登記していないことをいいことに、同じ不動産を他人にも売却したとします。いわゆる、二重譲渡です。このような場合、真の所有者と主張できるのは、先に登記手続きをした方ということになります。
司法書士が、売買の後登記を行う場合、売買成立後、直ちに登記所へ向かい登記申請手続きを行うのは、この登記の対抗力を速やかに得るためです。
原則的には下記のものが必要となります。
1住民票(個人の場合)
2印鑑証明書(発行後3か月以内のもの:金融機関より融資を受け、抵当権等の担保設定を行う場合)
3実印(金融機関より融資を受け、抵当権等の担保設定を行う場合)
4身分証明書
一般的に、3つの税金が課されます。
1固定資産税・都市計画税
2登録免許税
3不動産取得税
それぞれ、簡単にご説明させていただきますと、次のとおりとなります。
1固定資産税・都市計画税
毎年1月1日に土地や家屋といった固定資産を所有している人に市町村(東京都の特別区は都)が課する税金
2登録免許税
登録免許税法に基づき、登記の際に課される国税です。
税率は、登記の内容により、異なります。
一例として、土地の売買による税率と建物の売買による税率をご紹介いたします。
3不動産取得税
売買、贈与等で不動産を取得したとき、また建物を新築、増築したときに都道府県が課する地方税です。
税率は、原則、不動産固定資産評価額の4%です。
ただし、特例により令和6年3月31日取得分まで土地及び住宅用家屋の税率は3%となり、さらに令和6年3月31日までに宅地等(宅地及び宅地評価された土地)を取得した場合は、取得した不動産の価格×1/2を課税標準額とします。
その他、要件を満たすことにより、減免の措置があります。
残念ながら、登記手続きの際の登録免許税は、公衆用道路部分で、固定資産税の評価額が非課税・0円の場合であっても、登録免許税を納税することになっています。
計算方法は下記のとおりです。
登録免許税の課税価格
=近傍宅地の㎡単価金額(円)×公衆用道路部分の面積(㎡)×30/100
この課税価格に、税率をかけたものが、公衆用道路の登録免許税となります。
不動産の名義人となれるのは、原則、不動産の購入資金を実際に負担された方です。
不動産をご購入の際に、奥様も実際、不動産の購入資金を負担したのであれば、不動産の名義人となることができます。
実際、不動産の購入資金を負担されていないのに、不動産の名義人になられたり、逆に、不動産の購入資金を負担されたのに、不動産の名義人になられない場合は、贈与税の問題が発生しますので、注意してください。
共有名義の持分の決め方は、不動産の購入資金を誰が、どれだけ負担したかによって決めるのが原則です。不動産の購入資金の中には、不動産購入に付随し支払われた諸費用も含めることができる費用があります(具体的にどの諸費用が不動産購入資金の中に含めることができるのかは、税務署に相談していただくことをお勧めします)。
もし、実際の不動産購入資金の負担割合と異なる持分に決められた場合には、贈与税の問題が発生しますので、注意してください。
親もあなたのマイホームの名義人となる方法とそうでない方法とあり、親からマイホームの購入資金の援助を受けた場合、下記の3つの方法があります。
1共有名義
2借入金
3贈与
1共有名義
前述したとおり、親が負担した資金分を親の持分として、共有名義とする方法です。
もちろん、マイホームの名義人になるだけで、親と同居する必要はありません。
ただ、注意点として、将来、親が亡くなり、相続が発生した際には、相続税の問題や、他の相続人と相続分を巡ってもめる可能性がないとは言えません。
2借入金
「金銭消費貸借契約書」や「借用書」を必ず作成し、借入金額、利息、返済期間等の借入条件を明らかにしておいてください。
親より、「返済しなくても良い」や「余裕のあるときに返済して」といわれ、そのようにしていると、贈与とみなされる可能性があります。返済に関しては、「持参払い」よりも、「振込」にして、振込用紙や預金通帳で返済の証明ができるようにしておいてください。
利息についても、無利息の場合、贈与税課税の問題が生じる可能性があります。実際に「金銭消費貸借契約書」や「借用書」を作成する際に、税務署に相談してください。
3贈与
贈与を受けた場合、年間110万円の基礎控除を上回る贈与に対して、贈与税が課税されます。
贈与税の対象にならずに、要件にあてはまれば、親からの贈与をご自身の資金として計上できる制度として、「相続時精算課税制度」や「住宅取得資金の非課税制度」等があります。
「登記識別情報」は、次回、登記名義人が登記手続きをされる際に、本人確認手段の一つとなる大切な情報です。「登記識別情報」は、登記名義人本人だけが知っている情報が前提となっています。したがって、「登記識別情報」は、第三者に盗み見られないような方法で管理してください。
隣接の土地との境界が曖昧なまま購入されるのは、お勧めできません。購入後、隣地の人と境界を巡って、トラブルになる可能性があります。
このような場合は、売主に依頼し、売買の条件とすることもあるかと思います。隣地の人の立会いの下、境界を明らかにし、境界標を明示する杭を打つ等の作業を行い、また、後々のために境界を図面化し、「筆界確認書」を双方で取り交わしてください。
この一連の作業は、土地家屋調査士、測量士が行います。
民法162条に「所有権の取得時効」の規定があります。
(所有権の取得時効)
民法162条
①20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
②10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始のときに、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
このように、開始時に善意無過失であったかどうかで、必要な占有の期間が異なりますが、いずれにしても、20年以上、他人の土地を自己の所有と思い込み占有していたのであれば、土地名義人の方に、時効援用の意思表示(時効制度を利用する旨の意思表示)をしたときに、その土地の所有権を時効により取得したことになります。
ただ、今回のように、土地名義人と面識もなく、現在の所在が不明な場合は、時効援用の意思表示をすることができませんので、裁判所に訴訟を提訴し、確定判決を取得してから、登記手続きをすることになります。
金融機関は、不動産に抵当権を設定することにより、他の債権者より、処分した不動産から優先弁済を受けることが可能です。仮に、あなたが将来、経済的に破たんして、住宅ローンの返済が滞った場合、抵当権を設定している金融機関は、その不動産を競売にかけ、処分して優先弁済を受けることになります。
あくまで、保全の措置ですので、抵当権が設定されているからといって、特段、所有している不動産の利用に影響が出ることはありません。
以下のような流れで、登記手続きが行われます。
(1)建物完成 ⇒ (2)建物測量 ⇒ (3)建物表題登記 ⇒ (4)建物保存登記
最初にしなければならない手続きが、建物表題登記です。
登記されていない建物について、初めて登記簿の表題部をつくり、所在、種類、構造、床面積など建物の物理的な状況を明らかにする登記です。この表題登記手続きをしないと、その他の建物に関する登記手続き(例えば、所有権保存登記や後日建物を売却した際の所有権移転登記等)ができません。
この建物表題登記は、建物完成後もしくは建物の所有権の取得後、1か月以内に申請しなければなりません(不動産登記法第47条)。
表題登記手続きを行う際には、建物の測量をし、形状と床面積を記した図面を提出しないとなりませんので、一般的には、土地家屋調査士が建物所有者から委任を受け、登記手続きを行います。
表題登記手続きが完了後、次に所有権保存登記手続きが必要となります。
簡単に申し上げますと、建物表題登記が建物の物理的状況を登記したものに対して、所有権保存登記は、所有者が誰であるかを明らかにする登記手続きで、この登記手続きにより、第三者に対して、自らが所有者であると主張することができるのです。
以下のような流れで、登記手続きが行われます。
(1)建物完成 ⇒ (2)建物測量 ⇒ (3)建物表題登記・敷地権登記 ⇒ (4)建物保存登記
基本的には「新築の戸建て」と同じですが、新築マンションの場合、土地と建物の権利関係の煩雑化を避けるために、敷地権登記がなされることが一般的です。
通常の不動産は、土地と建物を独立の不動産として、別々に登記がなされます。
しかし、新築マンションのような区分建物の登記簿には、その敷地に関する権利も一緒に登記され、区分建物の専有部分と土地の権利は分離して処分することができない扱いとなります。
また、表題部所有者欄も、新築の戸建て建物は、所有者様の名義で登記されますが、新築マンションのような区分建物の場合は、マンションデベロッパーの名義で登記がなされます。
次の適用条件を満たせば登録免許税の軽減を受けることが可能です。
①自己居住用(別荘・セカンドハウス等は適用されません)
②新築または取得後1年以内に登記されたもの
③登記床面積が50㎡以上
④区分建物は、耐火又は準耐火建築物
上記適用条件を満たせば、本則税率1,000分の4のところが1,000分の1.5に軽減されます(令和8年3月31日まで)。
また、金融機関から融資を受けて、抵当権を設定する際の登録免許税の税率も本則税率4/1,000のところが1/1,000に軽減されます(令和8年3月31日まで)。
次の適用条件を満たせば登録免許税の軽減を受けることが可能です。
1自己居住用(別荘・セカンドハウス等は適用されません)
2取得後1年以内に登記されたもの
3マンション等耐火建築物は25年以内、木造等耐火建築物以外は20年以内に建築されたもの。この年数を超えている場合には、その住宅が新耐震基準に適合していることについて証明されたものや、既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のものであること。
4登記床面積が50㎡以上
上記適用条件を満たせば、本則税率1,000分の20のところが1,000分の3に軽減されます(令和8年3月31日まで)。
また、金融機関から融資を受けて、抵当権を設定する際の登録免許税の税率も本則税率1,000分の4のところが1,000分の1に軽減されます(令和8年3月31日まで)。
このような差異は、建築基準法と不動産登記法で建物の測量の仕方が相違することにより生じてくるものです。
販売時のパンフレットや売買契約時の床面積は、建築基準法における壁芯(壁の中心)から床面積に入れる壁芯測量となります。
それに対し、不動産登記法に基づく登記床面積は、壁の内法(壁の内側部分)を測量します。何故なら、マンションのような区分建物について、壁は法定共用部分となり専有部分の床面積に含まれないためです。したがって、どうしても、パンフレットや売買契約の床面積よりは、登記床面積の方が若干少なくなります。
購入された方より、登記面積が間違っているのではないかとよくお問い合わせをいただきますが、測量の方法による差異ですので、決して間違っているわけではありません。