専門家執筆Q&A
印南 和行

建物Q&A

建物
Q&A

一級建築士
株式会社南勝
印南 和行

建物の構造や工法、耐震、シックハウス、建物保証、太陽光発電、リフォーム、建物診断、メンテナンス、地盤沈下、インスペクション等、建物に関する知識を解説しています。

建物に関する知識をQ&A形式で解説しています。

物件の購入のポイント

Q
物件の価値を見抜くポイントを教えてください。(環境、耐震、地盤、防水、履歴)
A

 物件の価値を見抜くための5項目をお伝えします。重視するポイントを思い浮かべながらご確認ください。

・環境

 ハザードマップで、浸水、液状化の可能性を調べます。ハザードとは自然災害のことで、昨今ではゲリラ豪雨や津波などが発生したときの危険度を地図に落とし込んだものをハザードマップといいます。ハザードマップを見れば、浸水の可能性があるエリアなのか、液状化の可能性が高いエリアなのかが一目で分かります。もし購入を予定している物件がハザードマップの浸水等の危険があるエリアに該当していたなら、そのリスクに対する建物の対策の有無を確認しましょう。具体的には道路よりも敷地や建物を高くしているか等です。

・耐震

 耐震性が確保されているか、ということは非常に重要です。もし新築一戸建てを建築したり、購入したりするのであれば、住宅性能評価制度で耐震等級3の性能を持った住宅を取得することをおすすめします。3段階に分かれている耐震等級の中で最も高いもので、建築基準法で定める最低限度の1.5倍の耐震性を持っています。もし中古の住宅の購入を検討するのであれば、築年数を確認します。木造の一戸建てなら、平成12年6月築以降であれば現在の基準と同程度の耐震基準で建築されています。平成12年5月築までの建物については、購入時に耐震診断を行い、耐震性の確認をします。耐震性が不足しているのであれば、耐震補強工事を検討します。耐震補強工事を行い、耐震基準適合証明書を取得できれば、通常は利用できない住宅ローン控除を利用できたり、不動産取得税の軽減措置を受けられたりするメリットがあります。

・地盤

 地盤を調べるには、まずは立地、地名、土地の地歴を調べます。地名に川や谷、窪、田がついているところは地盤が弱いことが多いです。地盤の強さについては、地盤調査報告書をチェックして地盤の良し悪しを判断することが望ましいです。中古住宅で地盤調査報告書がない場合には、建物が傾いていないか等をチェックしましょう。

・防水

 住宅にとって雨漏りや漏水の発生は建物へのダメージだけでなく、住んでいる人たちの生活に直接影響するケースがあります。そのため、住宅を取得する際には、防水対策の有無について慎重に確認する必要があります。新築住宅の場合、屋根やバルコニーの防水保証期間は10年間が一般的です。10年目に点検を行うことを条件に延長保証ができることもあります。中古住宅の場合には、雨漏りや漏水事故に対する保証がどうなっているのかを確認します。個人が売主の場合には、売買契約書の契約不適合責任や付帯設備に関する項目で保証期間や保証内容が定められていることが一般的です。雨漏りや漏水のリスクを見極めるためには、購入する物件の建物検査を行い、建物の状態を確認することが最も有効です。

・履歴

 履歴というのは、住宅に関する図面などの資料のことをさします。履歴は住宅を高く売るため、万が一不具合が発生したときに的確に補修を行うため、定期点検を効果的に行うため、リフォームをするときに建物の可変性を正確に把握するために大変重要な役割を果たします。新築の場合は、建物の図面や確認申請書などがきちんと揃っているかを確認します。具体的には、確認申請書、設計図面、構造計算書、地盤調査報告書、検査済証などです。最近では、住宅履歴書として建物のメンテナンスや補修の履歴をまとめたものが用意されていることもあります。中古車の整備記録のように定期的なメンテナンスが誰にでも分かるので安心です。

Q
「接道要件を満たしてないが43条許可で建築できる」と言われました。どういうことでしょうか。
A

 原則として建築基準法上の道路に2m以上接していなければ、建物を建築することができません。しかし例外として、「法43条1項但し書きによる許可」を特定行政庁に相談し、許可が得られた場合には建築が可能になります。

・「法43条1項但し書きによる許可」の要件

 対象の敷地に計画している建物の用途や規模、配置や構造に応じた避難、通行の安全などの目的を達するための十分な幅員などが必要です。そのため、敷地の一部をセットバックし、空き地の確保を求められる可能性があります。最終的には特定行政庁が許可をすることになるため、接道要件を満たしていない敷地のすべてが「法43条1項但し書きによる許可」を受けて建物を建築できるわけではないので注意が必要です。

・「法43条1項但し書きによる許可」の物件を購入するときの注意点

 「法43条1項但し書きによる許可」によって建築されている物件については、金融機関が融資対象としなかったり、通常の物件の融資額よりも低くなったりする傾向があります。売却する際にも安く評価されることが多くなります。周辺の相場に比べて金額が安いので関心を持つ方もいるかもしれませんが、建築ができないことのリスク、住宅ローンがつかないリスク、などがあることを踏まえたうえで購入の検討をすることをおすすめします。

Q
購入検討している物件で、隣の敷地から越境があると聞きました。問題はありませんか。
A

 越境というのは、主に樹木や塀、雨樋などが敷地の境界線を越えてしまっていることをいいます。越境していることが問題になるかどうかを判断するポイントは、「越境しているものが何なのか」、「越境をしている側の人が越境していることを認識しているか」、です。

・越境しているものが何なのか

 樹木の枝や葉など容易に除去して越境を解消できるものであれば、それほど大きな問題にはならないことが多いです。万年塀やブロック塀、建物の一部など除去することが容易ではない場合は以下のように対処します。最も良いのは、越境をしている方の責任と負担によって越境を解消してもらうことです。しかし、越境解消するための費用が多額になってしまうときには工事を行えない可能性もあります。次に、越境の覚書きを取交わすという方法です。内容として、越境を発生している人と越境されている人との間で越境の事実を確認し、将来的に越境している人が建替え工事などを行う際には、越境の解消をするという約束をしておくものになります。越境自体が建物プランや生活上の支障を発生させるものでなければ、覚書きを交わしておけば特に問題はないでしょう。

・越境している人が越境を認識しているか

 越境している人がその事実を認識しており、上記のように越境の覚書きを取交わしているのであればよいのですが、中には越境していることを認識していない場合もあります。越境の事実を伝えて、素直に納得していただければよいのですが、中には「うちは越境をしていない。境界線の位置が間違っている」などの主張をされてしまうと、境界紛争につながる可能性もあります。境界紛争になってしまうと、境界が明確にならないために売却するときに支障になったり、分筆(土地を分割すること)を行えなかったり、さまざまな問題が発生します。

・売買契約時に越境状況について正確に確認すること

 越境自体はよくある話ですから、契約時に何の問題意識のないまま、確認せずに契約を進めてしまう場合があります。しかし、越境については、隣接地の方の認識と売主の認識が異なっていると、購入してからさまざまな問題が発生し、隣接地の方との友好関係も築けなくなってしまう恐れがあります。このような越境問題に巻き込まれないようにするために、越境の有無を正確に把握し、越境がある場合には越境の覚書きを取得することをおすすめします。

Q
「私道なので所有者の掘削承諾が必要」と言われました。どういう意味ですか。
A

 道路には公道と私道の2種類があります。公道とは、主に行政が所有、管理している道路です。国道、県道、市道などがあります。私道は特定の個人が所有している道路です。特定の個人が所有しているので、勝手に掘削したり、通行することができない場合があります。公道も私道も同じアスファルト舗装がされていることが多く、見分けはつきにくいです。

・掘削承諾とは何なのか

 掘削とは、道路の中の上水道、下水道、都市ガスの引き込みをするために道路を掘り起こすことをいいます。道路が公道であれば、手続きを行えば掘削工事を行うことができますが、私道の場合には私道所有者の許可が必要になります。私道は基本的には個人の財産という趣旨もあるわけですから、勝手に掘削することはできないのです。私道の掘削を行う場合には、水道局、都市ガスの会社に掘削承諾書の提出を求められることがあります。

・掘削承諾がとれない場合

 掘削承諾が取得できない場合、ライフラインの引き込みができない可能性があります。そのようなことになってしまうと大変困ります。そのため、私道に接道する物件を購入する際には、原則として掘削承諾を取得することが必要です。できましたら、掘削承諾と併せて、日常的に通行することの承諾である通行承諾についても取得しておくとよいでしょう。

Q
液状化とは何ですか。これから購入予定の物件が液状化する可能性のある場所か調べる方法はありますか。
A

 液状化とは液状化現象のことですね。液状化現象とは、地震による振動で地盤がまるで液体のようになって支持力がなくなってしまうことをいいます。東日本大震災でも主に湾岸沿いの埋め立て地などで液状化現象が発生し、建物や道路、上下水道などのライフラインに深刻な被害をもたらしました。

・液状化が発生するとどんな影響があるのか

 液状化現象が起きてしまうと、建物が傾いたり、沈下したりします。建物が傾いたり、沈下したりすると元に戻すために多額の費用がかかります。そして、さらに一度液状化現象が起きたなら、大きな地震などが発生すると再び同じように液状化する懸念もあります。また道路に埋まっている上水道、下水道、ガス管、電気などのライフラインが断絶してしまう被害も発生します。ライフラインが断絶すると、水道も使えず、トイレも使えない、電気も使えないことになるので日常生活が困難になります。

・液状化の危険度を調べる方法

 液状化の危険度については、インターネットで公開されている液状化危険度マップで調べることが可能です。液状化危険度マップとは、各行政機関によって大地震が発生した際に液状化の可能性があるエリアを、危険度の大きさごとに色分けして地図に落とし込んだものです。もし知りたい地域の液状化危険度マップがインターネットで見つからない場合には、各行政機関の情報公開コーナーや地域防災を担当する窓口で「液状化の可能性が分かる資料はありませんか」と問合わせてみてください。なにかしら参考になる資料が見つかると思います。

Q
中古物件を買うときに建物のどの部分を確認すればよいですか。
A

 可動するものがちゃんと動くか、窓サッシ、玄関扉、引戸、換気扇、水道などで生活を始めたときに支障がないか、そして、致命的な欠陥がないかを確認することが大事です。具体的には以下の項目となります。

・耐震性の確認

 まずは耐震性に問題がないかということが重要です。築年数によって旧耐震基準の建物なのか、新耐震基準の建物なのかを確認します。そして、建物関係の図面をチェックします。というのも、新耐震基準の建物であっても、図面がなければ建物内部の構造を確認することができないからです。木造2階建ての建物であれば、設計図面を専門家に耐震診断してもらうことで耐震性のレベルを把握することができます。もし耐震性に問題があるようなら、耐震補強工事を行った場合に費用がどれくらいかかるのかを確認しておき、物件の販売価格に上乗せして購入するかどうかの判断材料としてください。

・雨漏りの有無

 建物は水に弱いです。なぜなら、水が入り込むことによって、構造躯体である柱や梁などが腐食し、最悪の場合は耐震性を保てなくなることがあるからです。そして、雨漏りの程度は、位置によっては日常生活に支障が出ることもあります。雨漏りの有無の確認ポイントとしては、主に屋根裏の確認、天井に雨漏り跡がないかの確認、そして、窓周りなどの開口部において水の染みた跡がないかの確認となります。特に屋根裏は最も雨漏りの可能性が高いのですが、屋根裏に通じる点検口がない建物や、点検口自体があっても屋根裏の確認を行わないで購入判断をする方が多いです。雨漏りしているかどうか、過去に雨漏りしていたかどうかは一目で判断がつくこともありますので、ぜひ屋根裏は確認してみてください。

・シロアリの害

 シロアリの害の有無は、主に床下で確認します。シロアリの害がある場合には、床下の木部に蟻害と言われる木部が朽ちたような箇所が見つかるはずです。その場合には、どの程度の範囲で被害があるのかを特定し、被害がある部分の修繕工事を行う必要があります。屋根裏と同様に、床下点検口から床下を覗いてみて、実際に確認しましょう。

・地盤の良し悪し

 地盤の良し悪しは建物にとって重要です。建物建築時の地盤調査報告書があれば、地盤強度に合わせた建物の対策がされているかを確認します。もし、地盤調査報告書がないときには、周囲の建物の基礎部分にクラックと言われるひび割れが多く発生している傾向がないか、道路部分に陥没している箇所が目立っていないかを見てみましょう。仮にその土地の地盤が全体的に軟弱である場合には、周囲の建物や道路になんらかの影響が出ている可能性が高いです。

・専門家によるインスペクションを利用する

 致命的な欠陥に関する項目については、知識の少ない一個人だけでは判断がつかないときには専門家に見てもらうのがよいでしょう。最近では売主側、または仲介会社側でインスペクションを行い、参考資料として建物についての報告書を用意している場合があります。次に、買った後に直す必要がある箇所を確認し、直すための費用を調べましょう。中古物件を買った人の半数以上がなんらかのリフォームを行う計画で購入しています。リフォーム工事と修繕工事を同時に行うことで無駄なく効率の良い工事を行うことができます。

Q
「この売買契約においては、契約不適合責任はなしとなります」と言われました。どのような注意点がありますか。
A

 結論から言うと、土地や建物について致命的な不具合などがないかを契約前に調べておくことが重要です。なぜなら、契約不適合責任がなければ、万が一引渡し後に致命的な不具合などが見つかっても買主の責任と費用で対応しなければならないからです。もう少し細かく解説します。

・契約不適合責任とは

 不動産の売買契約の中に、契約不適合責任の有無についての条項があることが一般的です。契約不適合責任とは、隠れたる瑕疵(欠陥や不具合)について売主が責任を負うのか、負わないのかを定めた条項です。要するに「瑕疵=欠陥、不具合」が見つかったときに誰が責任を負うのかを、契約時に決めておくのです。契約不適合責任が有りの場合には、売主が一定期間、隠れたる瑕疵(契約に適合しない不具合等)の責任を負い、契約不適合責任がなしの場合には、売主は隠れたる瑕疵(契約に適合しない不具合等)の責任を負わず買主側の責任で対応することになります。

・隠れたる瑕疵とは

 隠れたる瑕疵とは、売買契約時に買主の把握していない欠陥、不具合のことです。もし瑕疵があったとしても、契約時に売主から買主に告知してある瑕疵については、隠れたる瑕疵には当たらないため売主は責任を負わないことになっています。「買主が瑕疵を知ったうえで契約しているのであれば、売主は責任を負う必要はない」という趣旨です。国土交通省では、将来の紛争の防止のために、売主から土地や建物について過去の履歴や隠れた瑕疵などの売主しか知らない事項について、物件状況確認書等(告知書)を提出するよう指導をしています

・売主が瑕疵を隠していたらどうなるか

 万が一、売主が瑕疵(契約に適合しない不具合等)を知っていたのにもかかわらず、買主に告知しなかった場合には、不動産売買契約書で「契約不適合責任は免責とする」と定められていたとしても、説明義務違反に基づく契約解除や損害賠償等の法的責任を売主が負担することになります。そうなってしまうと、売主と買主の間で深刻なトラブルとなってしまいます。そのため、もしあなたが売主の立場であるなら、契約に適合しない不具合等については告知書により伝えることが重要です。

・契約不適合責任がない物件を買うときの注意点

 あなたが買う側の立場であれば、契約不適合責任がない物件については一層注意して土地と建物を調べておいた方がよいでしょう。なぜなら、契約不適合責任がないので、もし不具合が見つかったとしても補修費用については原則自己負担となってしまうからです。契約前に不具合に気付いていれば、販売価格から補修費用を差し引いて検討することもできます。契約時に売主から物件状況確認書等(告知書)を交付されて、不具合について説明がされたとしても、売主側で土地や建物の状態についてすべてを把握しているケースは少ないと認識した方が良いでしょう。売主は不動産、建物のプロではないからです。もし、あなたが土地と建物についてチェックするときに不安があるのであれば、建物アドバイザーなどの専門家にインスペクションなどを依頼し、チェックしてもらうことも有効な選択肢のひとつです。

Q
「築5年以内の築浅物件が良い」と聞いたことがあります。それは本当ですか。
A

 一概に築5年以内の築浅物件が良いとは言えません。なぜなら、築5年以内の物件でも不具合を多く抱えているものや、割高で売られている物件もあるからです。もし築浅物件が良い理由をあげるとすれば、新築プレミアムがなくなっている分、新築価格と比べて割安であること、そして新築してからあまり期間が経過していないために建物の状態が極端に悪いというケースが少ないことでしょうか。ただし、これはあくまでも傾向にすぎませんので、実際の物件を見たうえで販売価格とのバランスを考えながら検討することをおすすめします。

Q
「売主さんが大事に使っていたので、不具合はほとんどないようです」と不動産会社から言われたのですが、信じてよいのでしょうか。
A

 「売主さんが大事に使っていたので建物はとてもきれいな状態です」というのは、中古物件を販売するときの決まり文句のようなものなので、鵜呑みにしない方がよいでしょう。何を根拠にして「不具合がない」と言っているのか、確認してみてください。

・住んでいる人でも不具合のすべてを把握しているわけではない

 住んでいる人が建物の不具合のすべてを把握していることは希です。なぜなら、床下、屋根裏などの普段目にしない部分について定期的にチェックしている人は少ないからです。考えてもみてください。あなたは今、住んでいる建物の状態を詳しく把握できていると言えますか。おそらく、そう言える人は少ないのではないでしょうか。

・あなた自身でチェックしましょう

 だからこそ、もしあなたが中古住宅の購入を考えているのであれば、あなた自身の目で確認して、可能であれば建物アドバイザーなどの専門家にインスペクションを依頼して、客観的に建物の状態を調べてみた方がよいでしょう。インスペクションの結果、建物の状態が良いことが分かれば安心です。

Q
解体を前提として土地を購入しようと考えています。解体する建物にアスベストが使われているようなのですが大丈夫でしょうか。
A

 契約前に解体業者に建物の内見をしてもらい、見積をとりましょう。その見積の内容を確認したうえで、アスベストが含まれる箇所や解体時の対策内容を確認しておけば、それほど心配はいりません。

・リスクがあるのはこんなケース

 リスクがあるのは、見積をとらないまま解体を前提として物件を購入してから、アスベストの処理に多額の費用がかかることが判明した場合です。こうなってしまうと、契約内容によっては全額を買主側で負担しなければならない可能性もあります。特に建物の解体を前提とする古家付売地物件では、「建物に関する契約不適合責任を免責とする」との条件で取引することが多く、トラブルに発展するリスクがあります。

・事前にリスクを確認すれば問題はない

 解体する建物にアスベストが含まれていた場合は、解体前に行政に届出を行い、周囲に飛散しないように適切に解体工事を行う必要があります。アスベストの種類に応じて必要な対策は異なるため、周囲への飛散が考えられる場合には解体費用が高額になる可能性があります。解体前提で土地を購入した後に、建物にアスベストが含まれていることがわかり、想定外の解体費用がかかってしまうリスクを事前に確認することができれば、それほど心配をしなくてもよいでしょう。

Q
最近、ゲリラ豪雨が発生しています。浸水が発生するとどんな影響があるのでしょうか。浸水の危険がある地域かどうかを調べる方法はありますか。
A

 ゲリラ豪雨とは、昨今名付けられた、短時間に集中的に大雨が降る集中豪雨のことをさします。最近では夏場に突発的な大雨が頻繁に発生しています。その影響で、川が溢れたり、道路冠水が発生したり、住宅が浸水するケースが増加しています。

・浸水が発生すると住宅にはどんな影響があるのか

 木造一戸建ての大部分は木材でできています。一定程度が水に浸かってしまうと、土台や柱の木部にカビが発生し腐食してしまい、設計上で想定する強度が発揮できない可能性があります。また、浸水したときの水はきれいな水ではなく、汚水などが含まれていることもあり、建物に悪臭がこびりついてしまうことがあります。一度ついてしまった臭いをとるのは容易ではありません。また、将来的に土地建物を売却する際に「浸水の有無」について告知を求められるケースもあり、売却価格に影響することも想定されます。

・洪水ハザードマップや浸水履歴を調べる

 浸水の危険がある地域かどうかを調べるには、各行政機関で洪水ハザードマップ【Q「住宅を選ぶときにはハザードマップを調べた方がよい」と聞きましたが、どのような理由からですか?も参照のこと】を確認してみるのがおすすめです。洪水ハザードマップとは、地域の住民に対して事前の備えに役立てることを目的として、浸水の予想される区域や浸水の程度、浸水時の避難場所について地図にまとめたものです。地図が浸水の危険度ごとに色分けされているので、一目で浸水の危険度を見分けることができます。また、各行政機関では浸水の履歴を記録していることが多いため、担当部署へ問合わせて過去の浸水実績を確認できます。

・現地周辺にお住まいの方にヒアリングをする

 洪水ハザードマップはあくまでも参考資料であり、個別の土地について細かく調査されたものではありません。そのため、より詳しく浸水の危険度を知りたいときには、現地周辺にお住まいの方にヒアリングしてみるのがよいでしょう。何十年とその地域に住んでいる人の中には実際に大雨を経験している方もいらっしゃいますので、当時の話を聞くことができれば大変参考になります。

・浸水の危険がある物件は駄目な物件なのか

 ハザードマップで浸水の危険がある地域に該当しているからといって、必ずしも駄目な物件とはいえません。なぜなら、浸水の実績があったとしても、浸水が発生した当時よりも現在は雨水の処理能力が向上していることもあるからです。川沿いで過去に浸水があったとしても、行政機関の護岸工事や貯水施設の設置により最近では浸水の危険性が減っているかもしれません。また仮に浸水の可能性があったとしても、建物面で玄関を通常よりも高く設定するなどの配慮をすることにより、建物面への被害を抑える対策をとることも可能です。洪水ハザードマップや浸水履歴を参考にしたうえで、個別の物件について判断することが重要です。

Q
「住宅を選ぶときにはハザードマップを調べた方がよい」と聞きましたが、どのような理由からですか?
A

 ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、その被害想定を示した地図のことです。具体的に想定される自然災害とは、洪水、津波、土砂災害、地震などです。

・なぜハザードマップを調べた方がよいのか

 あなたが家を買ったとします。引っ越しをしてから半年後、大雨が降って建物が浸水してしまいました。後から行政で浸水ハザードマップを調べたところ、「1m以上の浸水の可能性あり」とあったらどうでしょう。きっと事前に調べておけばよかったと感じるはずです。

 ハザードマップに示されているのは、地域の災害危険度です。この災害危険度は個人の努力でどうこうすることはできないものです。そのため、住宅を選ぶときには必ずハザードマップを調べて、その地域の災害危険度を知っておいた方がよいのです。

・ハザードマップの重要度が知られたのは実は最近

 実は、ハザードマップの存在が世間に知られるようになったのはつい最近、10年前くらいからのことです。異常気象を原因としたゲリラ豪雨(集中豪雨)による浸水、地震による津波や液状化現象などさまざまな自然災害が頻発するようになり、ハザードマップが注目されてきました。不動産売買の際に説明を義務付けられている重要事項説明書にも、ハザードマップの内容が説明されるケースも増えてきています。

・ハザードマップで危険度があったら絶対に駄目というわけではない

 ハザードマップで危険地域に該当しているからといって、その場所を選んではいけないというわけではありません。なぜなら、ハザードマップはその場所自体を個別に調べているわけではないからです。また、昔から住んでいた思い入れのある場所がハザードマップで危険地域に該当していたら、引っ越した方がいいのでしょうか。実際には単純にそんなふうに考えることは難しいでしょう。ハザードマップはあくまでも自然災害が発生したときの被害を予測し、もし災害が発生しても被害を最小限にすることを目的としているものでもあります。ですから、最も重要なのは、「その地域の危険度を予め知って、対策をしておく」ということなのです。

Q
「マンションは管理が大事」とよく耳にします。マンションの管理の状況を調べる方法を教えてください。
A

 マンションにとって管理の状態は非常に大事です。なぜなら、マンションは一個人が単独で所有するものではなく、他の区分所有者と共同で所有するものだからです。個人の部屋については管理規約などのルールを守れば自由にリフォームすることができますが、外壁部分やバルコニー、廊下、階段などは共用部分であり、個人が勝手にリフォームすることはできません。そのため、管理がきちんとされているマンションとそうでないマンションでは住み心地は異なりますし、資産価値も差が出てきます。なによりも管理が適切にされていないマンションは長持ちすることが難しくなりますので、築年数が古くなるほどになにかしらの大きな問題を抱えてしまっているケースも少なくありません。では、いったいどのようにしてマンション管理の状況を調べることができるのでしょうか。

・修繕積立金の額と長期修繕計画表の予定積立額を調べる

 通常、中古マンションを購入する際には、『管理に関する重要事項報告書』というものについて説明を受けるはずです。この『管理に関する重要事項報告書』では、現在マンションに積み立てられている修繕積立金の額、管理費、修繕積立金の増額予定の有無、大きな修繕工事の履歴等が記載されています。修繕積立金が適切に貯まっているかどうかについては、長期修繕計画表を確認してから、予定の積立額と実際の積立額の差をチェックします。

・管理組合の総会議事録や理事会議事録を閲覧させてもらう

 上記の管理に関する重要事項報告書だけでは、情報が少なすぎて管理の状況について詳しく把握することは難しいでしょう。もっと詳しくマンション管理の状況を調べるためには、管理組合の総会議事録や理事会議事録の閲覧をおすすめします。総会議事録には、議案事項が記載されており、マンションとしてどのような問題と向き合い、解決を図っていこうとしているのかを把握することができます。また、議事録のやりとりを閲覧すると、過去に大きな問題が起きていないかなどを確認することができます。閲覧するためには、仲介会社を通して管理会社に事前に依頼をして閲覧の申込みを行うことが必要です。

・建物の維持管理状況をチェックする

 建物自体の維持管理状況をチェックすることもマンション管理の状況を調べるうえでは役に立ちます。というのも、管理がきちんとされているマンションでは、建物の不具合をそのままにせずに適切に修繕が行われていることが多いからです。管理されていないマンションでは、不具合もそのまま、建物も掃除が適切にされずに汚いままであるなど、なにかしらの兆候を見てとることができる可能性があります。

Q
専有部分と共用部分とはどんな違いがあるのでしょうか。
A

 分譲マンションの場合、区分所有法という法律に基づき、個人が所有する専有部分と、マンション全体の所有者が共有する共用部分に分かれています。といっても、見た目は1つの建物ですから、どこからどこまで専有部分なのか、共用部分なのかが分かりにくいものです。どのような違いがあるのか、具体例をあげてご説明します。ちなみに専有部分と共用部分の具体的な範囲についての詳細は、各マンションの管理規約に定められています。

・専有部分

 専有部分というのは、いわゆる住戸部分のことをさします。「101号室」などで分けられた各部屋のことです。室内の壁クロスやキッチン、バスルーム、洗面所、天井、電気、配線、給排水管などで共用部分につながるまでの範囲については専有部分に含まれることが多いです。注意が必要なのは、室内であっても、建物のコンクリートの戸界壁や床スラブなどの構造部分は共用部分であるということです。したがって、躯体部分を壊すようなリフォーム工事を行うことはできません。

・共用部分

 共用部分というのは、専有部分以外の箇所となります。具体的には、建物の躯体部分、外壁やエントランスホール、廊下、エレベーター、ゴミ置き場、駐輪場や管理人室、屋上などです。基本的には、特定の誰かが限定して利用するのではなく、維持管理を行うために全員で管理する箇所であり、マンションの修繕積立金で定期的な修繕を行う対象となるのが共用部分となります。

・共用部分の例外(専用庭、バルコニー、アルコーブなど)

 共用部分の中には、専用使用権を定めて、特定の住居所有者だけが使用できる部分があります。例えば、1階部分の専用庭や、2階以上にあるバルコニー、玄関付近のアルコーブなどです。他にも、バルコニーの一部が屋上になっているときにはルーフバルコニーとして専用使用権が定められていることがあります。

Q
マンションの建物全体に不具合があるかどうかを見分ける方法はありますか。
A

 一戸建てと異なり、マンションは規模が大きいため、全体をチェックし不具合がないかを調べることは難しい、と感じる方も多いかもしれません。そこで、今回はマンション全体に不具合がないかを見分ける3つの方法をご紹介します。

・見た目で見分ける

 読んで字のごとく、建物の状態を見て判断する方法です。建物の外部、内部など全体を見ながら、建物のメンテナンスが適切にされているか、外壁のクラック(ひび割れ)、エフロ(白い汚れ)が発生していないか、タイルの剥がれ、共用部分の廊下や階段の劣化状況を見ます。新築されてからの経過期間、または大規模修繕の実施時期からの経過期間を見ながら、著しく劣化している箇所がないかを確認します。

・修繕履歴で見分ける

 見た目だけでは不具合を見つけることは難しいかもしれません。そんなときには、契約時に説明される『管理に関する重要事項報告書』等で修繕履歴を見て、構造的な問題に関する修繕がないかなどを調べることができます。建物全体に影響を及ぼす構造的な問題が発覚しているようなケースでは、大がかりな工事についての修繕履歴があるはずです。

・総会議事録で見分ける

 もし修繕履歴をより詳しく知りたい場合には、仲介会社を通して管理会社に「過去の修繕履歴が掲載されている総会議事録を閲覧させてほしい」と依頼してみることをおすすめします。毎年開催される総会議事録の中には修繕工事に計上した費用が記録されています。大きな問題になるような不具合があれば、管理組合でなんらかの議論がされていることが多いです。「知っていたら買わなかったのに」と思ってしまうような大きな不具合が発生していないかどうかは慎重に調べた方がよいでしょう。

Q
建物資料が間取図面しかありません。建物の設計図面などはどこかで確認できないのでしょうか。
A

 中古マンションの販売資料として、間取図面が掲載されたチラシ1枚程度しかないことが珍しくありません。間取図面だけでは建物の詳しい性能についてよく分かりません。マンションは一戸建てに比べて大規模である分、建物資料も詳細に整備されているはずですから、よく確認しましょう。より詳しく建物について調べるためには設計図面が役に立ちます。

・設計図面とは

 専門用語で、建築前の計画図面を設計図書、建物が完成した後の実際の建物図面を竣工図書といいます。なぜ、設計図書と竣工図書の2つがあるのかというと、建築工事を行う中で設計図書の工事と変更になることが一般的だからです。設計図書はあくまで計画ですので、実際に工事を行う中で取り合いや収まりなどを考慮すると設計図書から変更をかけることがあるのです。最終的に工事が完了し、変更後の工事内容を反映させたものが竣工図書となります。

・設計図面はどこで確認できるのか

 一般的には管理人室、管理人室がなければ管理会社で保管されています。そのため事前に管理会社に閲覧依頼をすれば、建物の設計図面を閲覧することができます。注意点としては、一個人が中古マンションを購入する際に、設計図面まで確認することは非常にレアケースであるため、閲覧手続に時間がかかったり、閲覧を拒まれたりする場合があることです。

・設計図面で何が分かるのか

 設計図面には建物の外観を見ただけでは分からない、地盤の強さや杭の長さ、コンクリートの強度、建物の間取り変更のしやすさなどを見極めることができる貴重情報が満載です。中古マンションを購入するのであれば事前に確認しておくことをおすすめします。もし設計図面の見方が分からないのであれば、建物検査を行っている一級建築士などに依頼して見てもらうことも可能です。

Q
マンションの外壁から白い線が見えるのですが、問題はありますか。
A

 おそらくそれは、白華(はっか)といわれる現象です。別名をエフロレッセンスといいます。これは、コンクリートやモルタルの表面部分から浮き出る白い生成物のことです。コンクリート造のマンションの外壁などで見かけることが多いです。マンション以外でもコンクリート造の建物を街中で注意深く見てみると、白華現象が至るところで起きていることに気が付くはずです。

・白華現象とは

 コンクリートから吹き出る白い汚れのようなもので、基本的にはコンクリート強度に問題はありませんが、吹き出た部位や周辺の状況から判断する方がよいでしょう。白い汚れ自体は特に毒性のものではありません。しかし、美観的にはあまり気持ちが良いものではないからです。白華が目立つ場合には、洗浄により落とすことができます。