専門家執筆Q&A
印南 和行

建物Q&A

建物
Q&A

一級建築士
株式会社南勝
印南 和行

建物の構造や工法、耐震、シックハウス、建物保証、太陽光発電、リフォーム、建物診断、メンテナンス、地盤沈下、インスペクション等、建物に関する知識を解説しています。

建物に関する知識をQ&A形式で解説しています。

建物の不具合・トラブル

Q
建物の基礎の不具合の実例と補修方法を教えてください。
A

 建物の基礎は建物を支える構造上重要な部分です。屋外にあるので雨風を受け、温度変化にも常にさらされるため経年的に劣化していきます。不具合例としてひび割れがあった場合の補修方法についてお伝えします。

・基礎コンクリートのひび割れ

 建物の基礎の代表的な不具合としては、ひび割れがあります。ひび割れをそのままにしておくと、将来的にコンクリートの中にある鉄筋がさびて爆裂する原因となります。このひび割れについては、ひびの太さをミリ単位で測るクラックスケールという道具で調べます。ひび割れがあること自体は問題ではありません。髪の毛程度の細いものであればそれほど心配する必要はありませんが、一定以上の大きなひび割れについては早期に補修を行った方がよいでしょう。

・不具合の補修方法

 ひび割れが軽度であれば、通常はひび割れの箇所にエポキシ樹脂を注入して穴を埋めます。爆裂現象を起こすほどひどい状況の場合には、部分的に基礎コンクリートを剥がして、さびた鉄筋を補修し、埋め戻すという大がかりな工事を行います。

Q
室内の不具合の実例や確認方法を教えてください。
A

 室内の不具合の中でも代表的なものをご紹介します。

・建物の傾き

 壁、床、天井や建具に傾きがないかを調べます。建具の取付けの問題で傾いているのであれば、それほど問題ではないのですが、家自体が不同沈下などで傾いていると大変です。建物の傾きが大きいと健康状態にも影響し、日常生活を送ることも困難になってしまいます。不同沈下による建物の傾きを直すためには相当の費用負担が発生しますし、売却する際にも不同沈下した事実について伝える必要が出てくるので価格は安くなってしまう可能性が高いです。

・建物の傾きを調べる方法

 建物の傾きを調べるためには、レーザーレベルという機材を使います。レーザーレベルでは、3m以上の距離で6/1000以上の傾斜がないかを調べます。計測結果は数値で確認します。ビー玉やパチンコ玉が自然に転がるのを見て「欠陥住宅だ!」と勘違いされる方がいますが、建物には施工誤差があり床も完全に水平ではありません。若干の傾斜があれば、ビー玉もパチンコ玉も転がるものです。ビー玉やパチンコ玉を持ち込んで、転がるからといって欠陥住宅になるわけではない、ということに注意してください。

・雨漏り

 天井に水漏れのようなシミが出てきたら雨漏りを疑ってください。雨漏りによってシミが発生している可能性が高いです。例外として、雨漏り以外でも、建物内部の結露が原因でシミが出ることもあるので注意してください。雨漏りについては、放置しておくと他の部位まで悪影響を及ぼします。その結果、構造体の木が腐朽してしまったら修繕費用はそれだけ高額になります。そのような事態にならないように、屋根裏点検口を開けて、屋根裏で雨漏りしている箇所がないか目視で確認してみてください。

Q
床下の不具合としてはどんなものがありますか。
A

 床下は普段の生活ではほとんど目にすることがない箇所です。しかし、床下は建物の土台となる部分なので、不具合があると耐震性にも影響が出る可能性もありますし、修繕に多額の費用が発生することがあるので注意が必要です。床下の主な不具合としては、シロアリ被害、漏水、基礎の破損(欠損)、木部の腐朽、断熱材の剥離などがあります。

・不具合の見つけ方と原因

 シロアリ被害は、名称のとおりです。コンクリート基礎や束に蟻道(ぎどう)や蟻土の形跡がないかなどを確認します。シロアリに食べられて木部の強度がなくなっていることもあります。漏水の発見方法としては、床下に水が溜まっていないか、木部が著しく湿っていないかを確認します。漏水の可能性があれば、原因が給水管にあるのか、排水管にあるのか特定し修繕を図る必要があります。基礎コンクリートについて、普段目にしないのをよいことに、配管ルートを確保するために壊してしまっている場合もあります。断熱材が剥がれ落ちている不具合もあり、そのような場合には適切な位置に取付け直す必要があります。

・床下の点検方法

 床下を確認するためには、床下の点検口から覗ける範囲で確認したり、点検口から床下に潜り、明かりをつけながら詳細に確認したりする方法があります。点検口から覗ける範囲は限られていますので、実際に床下に潜って全体をチェックした方が隅々まで確認することができます。ただし、床下は狭く、密閉された空間で怪我の恐れもあるので、可能であれば建築士などの専門家に依頼した方がよいでしょう。床下点検口は、洗面所などに備え付けられている場合やキッチンの床下収納で対応している場合もあります。床下点検口がない場合には、床の一部を解体し設置することをおすすめします。床下は普段目にしない部分だからこそ、少なくとも1年に1度くらいは定期的に不具合が発生していないか点検してみることをおすすめします。

Q
屋根裏(小屋裏)の不具合はどんなものがありますか。
A

 屋根裏(小屋裏)は建物の屋根裏部分をさします。床下と同じように、通常の生活ではほとんど目にすることのない箇所かもしれません。この屋根裏の中を見ることで、雨漏りの有無について確認することができます。雨漏りは、住宅にとって天敵です。屋根やサッシ周り等、いろいろな箇所から雨水が侵入します。雨漏りがすぐに見つかればよいのですが、少しずつジワジワと時間をかけて進行することも多く、発見が遅れるほど建物、特に木部に対して悪影響を及ぼすことになります。具体的には、柱や梁などの木部を腐らせてしまったり、柱と梁の接合にある金物をさびさせてしまったり、断熱材をカビだらけにしてしまいます。

・屋根裏の点検方法

 屋根裏への点検口から屋根裏の状態を確認します。雨漏りのサインは壁や天井のシミです。大雨が降った後にシミができて、雨漏りに気付くことが多いです。雨漏りが進行すると建物の構造にも悪影響が出るので早期に発見し、原因を特定して補修を行う必要があります。そのためには、建物に点検口があるのであれば、1年に1度くらいは雨漏りなどが発生していないか目視で確認しておいた方がよいです。ただし、点検口から覗くだけでは屋根裏全体をチェックすることは難しいです。一般の方が屋根裏に上ってみることもできるかもしれませんが、夏場はかなりの高温となることや、頭をぶつけたり、梁から足を踏み外して怪我をしたりすると危険です。できれば5年から10年に1度は定期的に、建築士などの専門家に点検を依頼した方が安全です。

Q
水回り(排水関係)の不具合はどんなものがありますか。
A

 水回りの不具合としては、漏水、排水不良、水(お湯)が出ないなどがあります。日常生活にはトイレ、キッチン、バスルーム、洗面所などで水の使用が欠かせません。水が供給されない、水が流れないとなると、トイレも使用できず、料理もできない、洗濯もできない、お風呂も入ることができません。毎日を快適に過ごすためには水回りが問題なく機能することが必要なのです。

・漏水の発見方法

 基本的に水は下に溜まるものですから、定期的に点検口から床下を見て水が溜まっていないかを確認します。定期的に確認することが難しいなら、最近では漏水が発生すると音が鳴って知らせるブザーのような機器がありますから、それを設置しておくのもよいでしょう。漏水は下へ下へと流れる傾向があるため、上階からの漏水は天井や壁にシミが発生して比較的早期に発見できるのですが、1階部分での漏水は床下などの日常生活では目にしない部分で発生することがあるため注意が必要です。

Q
欠陥住宅とはどんな住宅ですか。
A

 言葉のとおり、欠陥のある住宅のことです。不動産用語では、瑕疵住宅といいます。瑕疵とは、不具合、欠陥のことです。具体的には、雨漏りがある、建物が傾いている、地盤沈下している、シロアリの害が進行している、耐震構造に問題がある、などです。

・欠陥住宅の実例

 近年、最も注目を集めた欠陥住宅として、分譲マンションの耐震性を確保するための根拠となる構造計算書が偽装されていたという事件がありました。また、引渡し済の分譲マンションで、支持層まで杭が到達していないことが原因で建物が傾き、建替えるという事例もありました。欠陥住宅の中でも、耐震構造にかかわるものに対しては容易に補修が行えないことも多く、大きな事件として報道されるケースがあります。

・不具合=欠陥住宅ではない

 気を付けておくべきことは、「不具合がある」=「欠陥住宅」とはいえないことです。どんな建物でも少なからず不具合はあるものです。そして、致命的で取り返しがつかないほどの不具合を除き、ほとんどの不具合は補修することができます。大切なのは、その不具合の程度を見極めて、売主や施工会社、仲介会社などの関係者と協力して解決にあたることができるかどうかです。「欠陥住宅ではないか」という不安感が大きくなり、関係する業者への不信感が高まり、問題の解決が容易でなくなってしまうケースがあります。もし不安があるようなら、建物や不動産に関して専門的な知識のあるプロに依頼して、取引に利害関係のないインスペクションなどを実施し、客観的な意見を求めることも有効です。

Q
建物で直せない不具合はあるのでしょうか。
A

 基本的には直せない不具合はありません。しかし、不具合の内容によっては費用が相当かかり、最悪の場合、建替えるのと変わらないような致命的な不具合もあります。そうなると、「コストの問題で直す選択肢はない」ということになります。

 直すために多額の費用負担が生じる不具合としては、地盤沈下や液状化による建物の傾き、コンクリートの基礎の鉄筋不足、柱や土台の木部の全体的なシロアリ被害、長期間にわたる雨漏りの放置による構造躯体のカビや腐朽などです。

・ほとんどの不具合は修繕工事で直すことができる

 とはいえ、ほとんどの不具合は修繕によって直すことができます。上記のようなレアケースに該当する不具合の可能性がある物件については、修繕コストと販売価格のバランスを見極めたうえで、購入を検討することをおすすめします。

Q
違反建築物とは何ですか。
A

 違反建築物というのは、建築基準法などの法律を守っていない、違反している建築物のことをいいます。例えば、建ぺい率40%の制限がある地域で建ぺい率50%で建築されている建物(建ぺい率の超過)、容積率100%の制限がある地域において容積率120%で建築されている建物(容積率の超過)、最高高さ10mのエリアで12mの高さの建物(高さの超過)、建築基準法上の道路に接していない建物(接道義務違反)などです。

・なぜ違反建築物を建てるのか

 建築基準法などの制限以上に建物の広さを確保するため、また建築基準法上の道路に接していない敷地などで建築確認申請をしても許可が下りないため、手続きを踏まずに違法に建物を建てるわけです。建築後に確認申請を行わずに、一定規模以上の増改築工事を行っている場合でも違反建築物になっている可能性があります。

・違反建築物のペナルティ

 違反建築物は、法律に違反して建築されているわけですから、さまざまなペナルティがあります。まず、違反部分を適法に改修しなければ、建築確認申請の許可が下りないため増改築工事を行うことができません。現実的には、違反部分の改修を行うことがコストの問題で難しいケースが大半です。次に、売却する際に、建物に融資がつけられないため売却価格が安くなる傾向があります。特に、既存では建物があったとしても、道路に接道していない敷地などでは「再建築不可」の土地として著しく価格が安くなります。法律に違反している建物ですから、上記以外にもさまざまなリスクが考えられるでしょう。

・建替え前提での利用が前提

 違反建築物の物件は販売価格を安く設定している傾向があるため、「お宝物件かもしれない」と勘違いしてしまう方もいます。建物を解体して新たに確認申請をし、建築することができるのであればよいのですが、そうでなければ建物利用、土地活用に支障が出ることもあるため、そのままの状態なら特殊な目的がない限り手を出さないのが無難です。

・既存不適格物件とは

 違反建築物の中には、新築当時の法律では適合したのですが、その後、法改正が行われたために現在は法律に適合しなくなってしまった建物もあります。この建物のことを「既存不適格物件」といいます。このような物件については、原則として将来的に建替えが必要になったとしても同規模の建物を建築することができない場合もあります。分譲マンションが既存不適格物件となってしまっている場合、将来的に建替えする際に、各区分所有者の専有面積が減少することが障害となり建替えが困難になるリスクがあるので注意が必要です。

Q
建物の瑕疵の有無を判断する基準はどのようなものがありますか。
A

 建物に不具合があったときに、その不具合が構造上主要な部分に影響するような瑕疵にあたるのかどうか判断するための目安があります。

・6/1000以上の傾きがひとつの目安

 住宅の品質確保の促進等に関する法律第70条に基づく「住宅紛争処理の参考となるべき技術基準」により、瑕疵の可能性の有無を判断する基準が定められています。具体的には、床や壁、柱などが傾いている状態とした場合、この傾きが3/1000未満である場合、「構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性が低い」、3/1000以上6/1000未満であれば「構造耐力は一定程度存在」、6/1000以上である場合、「構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性が高い」と記載されています。

・傾きの原因が重要

 もちろん、6/1000以上の傾きがあったら、絶対に瑕疵があるというわけではありませんが「その傾きの原因は何か」については確認した方がよいでしょう。一部の施工上のミスであれば修繕を依頼して直せばよいのですが、地盤が不同沈下してしまい、建物自体が傾いてしまっているとなると直すのは容易ではありません。

・パチンコ玉が転がったから欠陥住宅というのは間違い

 テレビの欠陥住宅特集で床にパチンコ玉を置いて、転がったら「欠陥住宅だ」と大騒ぎをしている光景を見たことがあるでしょうか。住宅は手作業で造っていくものなので、100%完璧に水平垂直なものを造ることは現実的ではありません。若干の誤差はあるものですから、丸いパチンコ玉が転がったとしても一概に欠陥住宅とは言えないのです。確認すべきは、「どの程度の傾きがあるのか」、そして「傾きの原因は何か?」ということです。

Q
雨漏りが発生したとき、どのように対応すればよいですか。
A

 雨漏りに気付いたら、まずは簡易的にでも補修をして被害を最小限にとどめる必要があります。次に原因の特定を行うため、業者を呼び調査をしてもらいます。雨漏りは雨が止むと被害が収まることが多く、被害が目に見えて気が付くまでに時間のかかるケースが多いです。雨漏りが発覚したら急いで原因を特定しなければなりません。

・雨漏りの原因調査

 雨漏りの原因となる可能性があるところに散水して、どの部分から水が入り込んでいるのかを探します。実際に水をかけて、雨が降っている状況をつくるのです。原因箇所が特定できたら、その箇所の状態によって最適な補修を行います。雨漏りの原因箇所は、屋根かサッシ周りの開口部であることが多いです。シーリング材というゴム状のもので雨漏りの原因となる穴をふさぐ方法などがあります。

・目視で原因が特定できない場合

 目視で原因が特定できない場合には、サーモグラフィーカメラなどの専門的な機材を利用して雨漏りの原因箇所を調べます。雨漏りの中には、雨水が浸入した箇所から建物内部を通って、原因箇所から離れた位置で水染みが発生していることもあります。建物にとって、雨漏りは材料をカビさせたり、腐食させたりする原因となります。雨漏りを発見したら、早めに対処することが必要です。

Q
雨漏りを防ぐために何をすればよいですか。
A

 雨漏りを防ぐためには定期的なメンテナンスが重要です。普段の生活では目にしない箇所のチェックをすること、具体的には屋根裏部分での雨漏りの形跡がないか、サッシ周りの開口部の防水シーリングが切れていないかなどをチェックします。

・具体的にメンテナンスをいつ行えばよいか

 雨漏りを防ぐためには、屋根、バルコニー、外壁などの雨にさらされている部分の定期的なメンテナンスを行うことが重要です。一般的なメンテナンスの時期としては、10年程度を目安としています。屋根や外壁の防水処理については、建物に足場を立てて行う必要があるため、屋根の表面塗装やバルコニーのFRP防水処理、外壁の表面塗装、外壁のシールの打替えなどをまとめて行うことが一般的です。もちろん10年というのは目安にすぎず、劣化状況が進んでいる場合や一部で雨漏りが発生しているときには早めにメンテナンスをする必要があります。

・なぜ定期的なメンテナンスが必要なのか

 理由は2つあります。1つ目の理由は、雨漏りが発生していても、実際に室内に雨漏りとして現れて気が付くまでは時間がかかるためです。発見が遅れるほど被害は大きくなる傾向があります。ですから、普段の生活では気付かない箇所、例えば屋根裏、サッシ周りといった開口部の隙間などを定期的にチェックすることが望ましいです。

 2つ目の理由は、雨漏りは未然に防ぐことが大事だからです。雨漏りが発生してから修繕工事を行うと、被害の範囲が広いほど補修費用が高額になってしまいます。仮に定期的にメンテナンスをしておけば、結果的に雨漏りを未然に防げるうえ、建物の寿命を長くすることができ一石二鳥です。建物は経年的に劣化していきます。雨水から建物を守る屋根、サッシ周りの防水シーリングなども定期的に修繕していくことを意識しておきましょう。

Q
建物のどこから雨漏りが発生しやすいですか。
A

 雨漏りしやすい箇所はある程度決まっています。簡単に言うと、建物のうち外部に接している部分が雨漏りしやすい箇所になります。具体的には、屋根、天窓の周り、小窓や出窓などのサッシ周り、バルコニー、庇、パラペット(扶壁)、換気扇、外壁の継ぎ目などです。

・雨漏りの確認方法

 雨漏りをしている場合には、以下のような現象が発生します。外壁の色が変わっている、押入れやクローゼットにカビが大量に発生している、天井や壁のクロスが浮いてきている、天井や壁のクロスにシミが出てきている、照明周りから水滴が垂れてきているなどです。一戸建ての場合、屋根裏を点検口から照明で照らしてみて、雨漏りの形跡がないかを確認してみてください。またマンションであっても、最上階であれば外部にさらされた屋上部分から雨水が浸入して雨漏りが起きることがあります。

・新築でも雨漏りは発生する

 雨漏りは築年数にかかわらず、なんらかの理由で雨が侵入することで発生します。そのため、あなたが買おうとする建物が新築であろうと中古であろうと、雨漏りの有無については慎重に確認すべきです。新築であれば住宅の品質確保に関する法律によって、最低10年間の契約不適合責任が売主である業者に課されています。しかし、売主が一般の個人である中古住宅については、契約不適合責任を免責とし、たとえ引渡し後に雨漏りが発生したとしても、原則として買主負担で修繕しなければならないケースもあります。雨漏りに限らず建物の不具合については、修繕を行わなければ決して自然に直ることはなく、常に不具合は悪化していきます。

Q
建築途中に近隣住民の方からクレームを受けました。どのように対応すればよいでしょうか。
A

 あなたは施主として注文住宅を建築しているということかと思います。建物建築の際に近隣の方からクレームがあることは珍しくありません。クレームの内容によって、対応方法が異なります。一般的にどのようなケースがあるのか、解決方法と併せてご説明します。

・境界問題で揉めている

 境界というのは、土地の境を示す目印のようなものです。土地と土地の境界を設置して、土地の所有権の境を明確にするのです。境界について、隣接地と当該地との間で境界確認書を取交わし、境界の位置についてお互いに合意していれば問題は起きにくいのですが、中には隣接地の所有者との間で境界の合意がとれず、長年にわたって揉めていることがあります。境界について揉めていると、売却するときに支障になったり、土地を分筆する(分ける)ことができなかったり、越境の問題が起きたりします。もし境界問題で揉めているようであれば、土地家屋調査士や測量士などの専門家に依頼して、測量図を作成してもらったうえで解決へ向けて交渉する必要があります。

・「建物解体時の震動、騒音で困っている」と言われた

 建物の解体工事や土地の造成工事の際に、大型の重機などが入り作業をするため騒音や震動が発生することがあります。近隣の住民の方からクレームがあるとすれば、対応すべきは解体工事や造成工事を請け負っている業者になります。仮にあなたが近隣にお住まいの方から直接クレームを言われたとしても、解体から造成、建築工事までをハウスメーカーに一括して任せているのであれば、ハウスメーカーに対応してもらいましょう。

・「建物の配置や間取りが気に入らない。」と言われた

 建築工事が始まると、お隣にお住まいの方から建物の配置や間取りについていろいろと要望を受ける場合があります。具体的には、「うちの窓が面する部分については、そちらの窓を作らないでほしい」とか、「建物の配置はもっとゆとりをとってほしい」等、いろいろ出てきます。原則として、土地も建物も個人の所有物であり、建築基準法などの法律を守って計画しているのであれば、お隣の方にとやかく言われる筋合いのものではありません。しかし、その場所に長くお隣さんとして生活する以上は、なるべく争いの種となりえることは避けた方がよいです。そのためには、直接あなたが前に出て対応するよりも、ハウスメーカーの担当者等の第三者を通して対応をしてもらうことが望ましいです。

Q
マンションに住んでいます。2つ下の階で発生した漏水について私の部屋が原因ではないかと言われました。そのようなことはありえるのでしょうか。
A

 2つ下の階で発生した漏水でもあなたの部屋が原因である可能性はあります。その理由と解決策をご説明します。

・共用部分で上下階部屋がつながっている

 マンションの一室には共有部分と専有部分があります。トイレの汚水や、バスルームやキッチンからの雑排水は建物の上下階をつなぐ排水管に流れますが、これは共用部分でつながっています。間取り図に「PS(パイプスペース)」と記載されている箇所です。水回りで水漏れが発生したときに、このパイプスペースを通って下の階の室内で漏水の影響が出ることがあるのです。特に漏水は音も匂いもなくゆっくりと進行することが多く、被害が発生するまで気付きにくいケースが多いのでやっかいです。

・漏水箇所の特定が最優先

 もしあなたの部屋で漏水が発生したらどうすればよいのか。最優先は漏水箇所の特定となります。マンション内での漏水が発生したら、すぐに管理会社などに調査を依頼することが必要です。なぜなら、原因の特定をしなければ、漏水の影響は止まらないからです。また、漏水の原因は上階にあるとは限らないので、専門業者にも見てもらった方がよいです。気が付かないで放置していると、いつのまにか木材がカビだらけになってしまう恐れもあります。

・コンクリートは水を通さないわけではない

 隣の部屋の漏水がコンクリートを伝わってくることもあります。見た目にはコンクリートで仕切られていても、コンクリート自体が完全に水を遮断するわけではないからです。ですから、漏水は上階が原因という先入観は持たずに、漏水の発生した住戸の周りの部屋でも給水管などに圧をかけて漏水が発生していないかをチェックしたり、床下の点検口などで漏水箇所がないかを確認したりすることが必要です。

・漏水事故で使える保険

 もしあなたが所有する部屋で、あなたの所有する配管(専有部内の共用配管以外の配管)で漏水が発生して壁のクロスや家具などに被害が出てしまったとき、その補修費用を誰が負担するのでしょうか。原則として、漏水事故の補修費用を負担する責任があるのは、漏水事故を起こした人(部屋の所有者)となります。今回の漏水原因はあなたが所有する専有部分内であなたの所有する配管(専有部内の共用配管以外の配管)が原因とすると、補修費用を負担するのはあなた自身となり、原則として火災保険の支払い対象とはなりません。もし、上階の専有部分内での漏水が原因であれば、あなたは費用を上階の所有者に対して請求することになります。漏水の原因が共用部分にあるのであれば、管理組合に対して補修を請求します。

 あなたに漏水被害の補修費用負担義務が生じた場合に、あなたが個人賠償責任保険に加入しているのであれば、保険内容の上限内で保険金の支払いを受けることも可能かもしれません。詳しくは保険会社に問合せてください。共用部分内での漏水事故についても、管理組合として賠償責任保険に入っていれば、保険によって被害を受けた箇所について一定範囲を弁償してもらえることもあります。

・定期的に漏水がないかを点検する

 漏水被害を防ぐには、定期的に床下点検口から床スラブ(コンクリート部分)に水が溜まっていないかをチェックし、床下に漏水センサーを設置して漏水が発生したときに気付きやすくしておくことが有効です。また、通常玄関前にあるメーターボックスの中の給水メーターを確認して、水を使っていないのにメーターが回っているかどうかをチェックしておくとよいでしょう。もし給水管に小さな穴が空いている場合、水を使っていなくても給水メーターがゆっくりと動いているので漏水に気付くことができます。

Q
中古一戸建てを買いました。住んでから1か月後に雨漏りが発生しました。このような場合に補修費用は前の所有者に請求することはできるのでしょうか。
A

 契約内容によって異なりますので、お手元の契約書の内容を確認してみてください。

・「契約不適合責任有り」の場合

 「契約不適合責任有り」として契約し、契約書で定められた期間内の雨漏りであれば、前の所有者に請求することは可能かと思います。ただし、物件状況等報告書などで雨漏りの事実が告知されている場合には、契約不適合責任には該当しないケースもあります。

・「契約不適合責任なし」の場合

 「契約不適合責任なし」の場合には、基本的には雨漏りの補修を求めることは難しくなります。契約する際に、売主が故意に雨漏りの事実を隠していたとすれば、法的には売主側に補修を求めることはできるのですが、そのためには売主が故意に雨漏りの事実を隠していたことを立証する必要があります。したがって、よほど悪意が明確にあることが分かる場合を除いて補修責任は問えないと考えた方がよいでしょう。

・大事なのは契約前に建物をチェックすること

 実際のところ、中古一戸建ての建物の状態について売主が正確に把握しているケースは少ないのです。というのも、定期的に建物の状態を点検している人は少数だからです。したがって、あなたが中古一戸建てを買おうとしているのであれば、不具合などが発生していないかどうか調べておくことをおすすめします。もし自分で調べることに不安があるのであれば、建築士などの専門家にチェックを依頼するのもよいでしょう。「契約不適合責任有り」であれば、一定の安心感はありますが、結局のところ不具合が発生したら、居住中に補修を求めることになり、いろいろ手続きも面倒です。そして、契約書で定められていても売主がすんなり補修に応じてくれるかどうかは確実ではありません。だからこそ、契約不適合責任の有無にかかわらず、建物の状態を契約前、遅くとも引渡し前にチェックしておくことは大事なのです。

Q
シロアリ対策とは具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか。
A

 シロアリ対策には、シロアリを退治する駆除と、シロアリの被害を未然に防ぐための予防があります。駆除する場合、既にそこにシロアリが生息しており、建物に対して害を与えている状況になります。駆除を行うには、薬剤をシロアリが活動している部分へ行き渡らせる必要があり、薬剤を注入するために壁や柱にドリルなどで穴を開けたりします。シロアリの活動が広範囲にわたる場合には、壁や天井板を剥がしたり、土間を割ったりしなければならない可能性もあります。ここまでくると、修繕費用も高額になってしまいます。

・シロアリは予防対策で備える

 シロアリ対策は駆除よりも予防対策が重要です。先に説明したように、シロアリの害が出てからでは駆除にかかる費用に加えて、駆除に伴う建物の修繕工事も必要になってくるからです。

 予防対策の1つ目としては、薬剤処理による科学的な方法があります。基本的には5年ごとに、床下の木部に薬剤処理を行う他、シロアリの侵入経路となる、床下の土壌に土壌処理剤を施工します。このようにすることで、シロアリからの被害を防ぎます。ポイントは薬剤の効果が5年なので5年ごとに行うことです。

 2つ目は、加圧注入木材を利用する方法です。これは、高い圧力をかけて木材の内部まで薬剤を浸透させた建材で、建物の部材そのものに防蟻効果のある材料を使用するのです。加圧注入木材の防蟻効果は半永久的と言われていますが、通常の建材と比べて非常に高価であるため、大引きなど構造上重要な部分だけに使用することが一般的です。裏を返せば、建物全体で防蟻処理ができるということにはなりません。

 3つ目は床下などシロアリに対する点検を定期的に行い管理する方法です。この方法はシロアリ被害を未然に防ぐためだけでなく、建物自体の不具合の早期発見につながる最もおすすめしたい方法です。もし仮にシロアリの被害が見つかったとしても1年に1回程度点検を行っていれば、被害を最小限に抑えることができます。

Q
シロアリ被害の見つけ方について教えてください。
A

 床下のコンクリートの基礎の立上りや、束の部分に筋のようなものが見つかることがあります。一見単なる汚れのようですが、実はこれが蟻の通り道、蟻道(ぎどう)というものになります。この蟻道が見つかった場合は、建物の木部をシロアリに食べられている可能性が高いです。シロアリは建物の内部にも巣をつくります。そのため、建物に住んでいる人もシロアリに気付きにくく被害が大きくなってしまうことがあるのです。

・シロアリ被害の点検方法

 シロアリは湿気の多い立地の建物、床下の風通しが悪くいつもジメジメしている物件などで発生しやすいので、まずは建物がある立地に湿気が多いかどうかを確認します。川沿いや谷地、建物に囲まれて日当たりの優れない場所では湿気が多い傾向があります。次に布基礎なのか、ベタ基礎なのか、建物の基礎の種類を確認します。一般的にはベタ基礎の方がシロアリ被害は少ないと言われていますが、最近では基礎断熱の箇所でシロアリが発生していることもありますのでベタ基礎でも安心とはいえません。上記の前提条件に続いて、建物の床下を確認します。床下の湿気の具合、木材の含水率などをチェックします。そして、蟻道はないか、目視で確認していきます。シロアリ被害が見つかったら、シロアリの駆除やシロアリに食われた部分の補修工事が必要になります。