2
居住用財産の譲渡
(2)空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
相続又は遺贈で被相続人が居住の用に供していた建物およびその敷地等を取得し、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に、その建物およびその敷地等を譲渡した場合で、一定の要件を満たすときは、居住用財産を譲渡したものとみなして、3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で、その財産を取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円)控除の適用が受けられます。
①特例の対象となる場合
対象となるのは、次の2つの場合です。
- イ.
- 建物を譲渡の日*までに耐震リフォームして耐震基準に適合することが証明された建物とともにその敷地等を譲渡した場合
- ロ.
- 建物を譲渡の日*までに取壊し、その敷地のみを譲渡した場合
ただし、令和6年1月1日以後の譲渡については、譲渡の年の翌年2月15日までに耐震基準に適合することとなった場合または建物の取り壊しが完了した場合には、本特例が適用できることになりました。
*譲渡日(原則:引渡し日 例外:契約日)
②対象となる建物(被相続人居住用家屋)
対象となる建物(被相続人居住用家屋)とは、次の要件を満たすものをいいます。
- イ.
- 相続開始の直前において被相続人が一人で居住していたものであること
- ロ.
- 昭和56年5月31日以前に建築された区分所有建築物(マンションなど)以外の建物
- ハ.
- 相続時から売却時まで、事業、貸付、居所の用に供されていないこと
- 二.
- 相続により土地及び家屋を取得すること
- ホ.
- 平成31年4月1日以降の譲渡については、下記の2つの要件を満たした場合も相続開始の直前において被相続人が一人で居住していたものとして認められます。
・被相続人が要介護認定等を受け、かつ相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していたこと。
・被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業、貸付、被相続人以外の居住の用に供されていないこと。
③対象となる譲渡
この特例の対象となる譲渡には、次の要件があります。
- イ.
- 相続の開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間の譲渡である
- ロ.
- 相続税額の取得費加算の特例(譲渡所得の計算で相続税の一部を取得費に加算する特例)の適用を受けない
- ハ.
- 譲渡の対価の額が1億円以下
例:相続人2人で2分の1ずつ相続し、それぞれが7,500万円で譲渡した場合でも総額で1億円を超えるためこの特例の適用は受けられません。

④その他の要件
- イ.
- 建物を譲渡の日※までに耐震リフォームして建物とともにその敷地等を譲渡した場合
〈建物の要件〉
a.建物を、相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供していたことがない
b.譲渡の時※において地震に対する安全性に係る規定又は基準として一定のものに適合するものである
〈敷地等の要件〉
敷地等を、相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供していたことがない

- ロ.
- 建物を譲渡の日※までに取壊し、その敷地のみを譲渡した場合
〈建物の要件〉
建物を、相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供していたことがない
〈敷地等の要件〉
a.敷地等を、相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供していたことがない
b.敷地等を、取壊し等の時から譲渡の時まで建物等の敷地の用に供していたことがない

※令和6年1月1日以後の譲渡については、譲渡の年の翌年2月15日
なお、本特例は、確定申告書に、地方公共団体の長等が当該被相続人居住用家屋および当該被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等が要件を満たすことの確認をした「被相続人居住用家屋等確認書」その他の書類の添付がある場合に適用されます。
(3)軽減税率の特例
①特例の概要
個人が、その年の1月1日において所有期間が10年を超える土地等または建物等のうち、居住用財産に該当するものを譲渡した場合には、その居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の金額については、他の所得とは分離して所得税および住民税が課税されます。
軽減税率の特例と3,000万円特別控除の特例とは、重複して適用を受けることができ、軽減税率の適用を受ける場合は、通常、3,000万円特別控除の特例も適用されますので、下表の課税長期譲渡所得金額は3,000万円控除後の金額となります。なお、「(2)空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用を受けるものについては、この軽減税率の特例の適用はありません。
また、3,000万円特別控除の特例と居住用財産の買換えの特例、および軽減税率の特例と居住用財産の買換えの特例とは、重複して適用を受けることはできません。
②特例の適用が受けられる場合
この特例は、譲渡した年の1月1日において所有期間が10年を超える、次に掲げる家屋または土地等の譲渡について適用されます。
- イ.
- 個人が現にその居住の用に供している家屋(以下「居住用家屋」といいます)を譲渡した場合
居住用家屋の具体的判定については、3,000万円の特別控除における取扱いと同様です。 - ロ.
- 居住用家屋と共にその敷地となっている土地または借地権を譲渡した場合
居住用家屋の敷地の一部の譲渡等、具体的取扱いについては3,000万円の特別控除における取扱いと同様です。 - ハ.
- 自己の居住の用に供さなくなった家屋もしくはそれと共にその敷地となっていた土地または借地権を、これらの家屋を自己の居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合
- 二.
- 居住用家屋を取り壊した場合のその敷地で、次の要件に該当するものを譲渡した場合
a.敷地は、その家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において、所有期間が10 年を超えること
b.2. (1) ① ニa.と同じ
c.2. (1) ① ニb.と同じ
③特例の適用が受けられない場合
上記②の要件を満たす場合であっても、次のいずれかに該当する場合は、この特例の適用は受けられません。
- イ.
- 譲受人が特殊関係者である場合
3,000万円特別控除の特例の場合と同じです。(2. (1)②イ参照) - ロ.
- 前年または前々年の譲渡所得について、この特例の適用を受けた場合
- ハ.
- 居住用財産の買換え・交換、収用等についての特例制度の適用を受ける場合
④課税される所得税等の税額の計算方法
この軽減税率の特例の適用を受ける長期保有に係る居住用財産の長期譲渡所得については、他の土地建物等の譲渡所得と区分したうえで、その長期保有に係る居住用財産の長期譲渡所得に課税される所得税等の税額を計算することとなります。
- イ.
- 長期保有に係る居住用財産の課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下である場合
長期保有に係る居住用財産の課税長期譲渡所得 × 税率 = 税額

- ロ.
- 長期保有に係る居住用財産の課税長期譲渡所得金額が6,000万円を超える場合
(長期保有に係る居住用財産の課税長期譲渡所得 - 6,000万円)× 税率 + 612.6万円(住民税240万円)= 税額
