「土地活用」は、資産運用の基本的な知識を身に付け、税制や税法上の特例を理解したうえで、資産全体を総合的に把握することが大切です。また、立地条件や広さ・形等によってもベストな活用方法は異なります。本コンテンツは、土地活用のポイントをQ&A、ケーススタディで解説しています。
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資産を守り収益をあげる
Case4事業用資産として活用
老朽化のためテナントビルに建て替えた
安定した収益を確保
前提条件
更地:150m²
時価:9,000万円
駅前ビル
床面積:660m²
建築費:1億8,000万円(耐用年数34年(定額法償却率0.030))
解体費用等:2,000万円
借入金
元本:2億円
利率:3.5%
返済期間:30年
返済額(元利均等):月89万8,000円
不動産所得の計算
(1) 収入金額:2,400万円(家賃200万円×12ヵ月)
(2) 必要経費:1,726万7,000円(①~④の合計)
①固定資産税等:290万7,000円
土地の固定資産税(1.4%):88万2,000円(固定資産税評価額6,300万円×1.4%)
土地の都市計画税(0.3%):18万9,000円(固定資産税評価額6,300万円×0.3%)
建物の固定資産税(1.4%):151万2,000円(固定資産税評価額1億800万円×1.4%)
建物の都市計画税(0.3%):32万4,000円(固定資産税評価額1億800万円×0.3%)
☆土地の固定資産税評価額:6,300万円(時価9,000万円×70%)
☆建物の固定資産税評価額:1億800万円(建築費1億8,000万円×60%)
(注)固定資産税評価額については、第2章 Q1 遊休地を保有している場合、維持費はどれくらいかかるのでしょうか。、Q13 相続税と財産の評価の関係について教えてください。で解説しています。
②減価償却費:540万円
駅前ビル:540万円(建築費1億8,000万円×償却率0.030)
③借入金利息:696万円
④その他の経費:200万円
(3) 不動産所得金額:673万3,000円((1)-(2))
留意点
建築してから長期間が経過し、老朽化しているビルの建て替えを検討する場合があります。そのとき留意する必要があるのは、入居しているテナントの退去についてです。通常の賃貸借契約を締結していると、契約期間が満了したというだけで立ち退いてもらうことはできません(「正当の事由」が必要となります)。
耐震基準を満たしていないとか、アスベストの問題があるなどの理由で退去を要請しても、テナントが立ち退きに応じない場合があり、すべてのテナントが退去しない限り建て替えもできません。既存のテナントを退去させるためには、通常長期間の交渉を要し、やむなく訴訟等を提起せざるを得ないこともあり、それでも多額の立退料を支払う場合があることを念頭に置く必要があります。したがって、建て替えを考え始めたら、新たに入居するテナントとの間では定期建物賃貸借契約にするなどの対策をとる必要があります。
私鉄沿線の駅近くに、古い3階建てのオフィスビルを所有していました。老朽化が進み耐震性にも不安があったため建て替えを検討し、5階建てのテナントビルを新築することにしました。
建築費用は、旧ビルの取壊費用を含め2億円です。全額借入金で賄い、月々の返済が約90万円です。
家賃収入は月200万円、借入の返済が約90万円ですので、維持費・諸費用を差し引いてもかなり余裕があり、空室等のリスクにも備えることができます。