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相続の税務Q&A

相続の税務Q&A

相続の税務
Q&A

税理士
JTMI税理士法人日本税務総研
田中 耕司

相続税は一般的に増税になったといわれていますが、特例の拡大や創設などが行われており、工夫次第では相続税や贈与税の節税が合法的にできます。合理的で無理のない節税を解説しています。

※本コンテンツの内容は、平成28年4月1日現在の法律に基づき作成されております。
相続の税務についてQ&A形式で解説しています。

相続税の基礎知識

Q
相続税の課税方式について説明してください。
A

 現在の相続税法が規定する相続税の課税方式は、相続人が法定相続分で分割したものと仮定して相続税の総額を計算する「法定相続分課税方式」を採用しています。この課税方式の特徴は、実際の遺産の分け方により相続税の総額が変わらない仕組みになっていることです。


相続税の計算手順

相続税を計算するためには、4つの段階の計算が必要です(図表8 参照)。


Step1

 相続や遺贈で取得した財産から、債務及び葬式費用を控除し、課税価格を計算します。

 ①相続時精算課税制度を適用した贈与財産や、②相続などで財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けていた財産(贈与財産が非課税とされるもの及び贈与税の配偶者控除など一定のものを除きます。)も相続税の課税財産に含まれます。

 相続税の納税義務者は原則として個人です。課税価格の合計額は各人の課税価格を合計して計算します。

KEYWORD
3年以内贈与加算

 相続などで財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けていた財産の価額は、相続税の課税価格に加算されます。

・ 贈与時の価額で加算されます。

・ 贈与税の基礎控除(年間110万円)以下の贈与も加算されます。

・ 相続等により財産を取得していない人に対する贈与は加算の対象となりません。

・ 贈与税の配偶者控除を適用した財産(2,000万円まで)や、一定の住宅取得資金などは加算されません。

【 誤りやすい例 】

 贈与税の3年内加算の対象となる人は、相続又は遺贈(死因贈与を含む)により財産を取得した人です。法定相続人ではありません。


Step2

① 基礎控除額を計算します。

KEYWORD
法定相続人の数

 相続税法における法定相続人の数も、原則として民法の規定に従いますが、相続を放棄した者があった場合は、その放棄がなかったものとして相続人の数を計算します。また、被相続人に養子がある場合、法定相続人の数に算入する養子の数は、次の制限があります。

●実子がいる場合……養子のうち1人までを法定相続人の数に含める。

●実子がいない場合…養子のうち2人までを法定相続人の数に含める。

② 課税価格の合計額から基礎控除額を控除し、課税遺産総額を計算します。
以下、Step1で算出した課税価格の合計額が1億6,000万円、相続人は配偶者と子2名(合計3名)と仮定して計算例を示します。

③ 課税遺産総額を(相続税法上の)法定相続分で案分します。

④ 法定相続分で案分した金額に対する税額を相続税の速算表(図表7参照)で計算します。

⑤ 計算した税額を合計し、相続税の総額を算出します。

図表7 相続税の速算表(平成27年1月1日以後相続開始)

Step3

 相続税の総額を各人が取得した財産額に応じて配分し、各人の算出税額を計算します。

Step4

 各人の算出税額から税額控除を差し引き、各人の納付すべき税額を計算します。

KEYWORD
相続税額の2割加算

 財産を取得した人が、被相続人の父母、子、配偶者でない場合は、算出税額の2割が加算されます。相続人が兄弟姉妹の場合は2割加算の適用がありますし、いわゆる孫養子の場合も2割加算されます。ただし、孫が代襲相続人である場合は2割加算の適用はありません。

【誤りやすい例】

 相続税の2割加算の対象となる者は、配偶者及び一親等の血族(一親等の血族の代襲相続人を含む)以外の者です。法定相続人以外の者ではありません。

図表8 課税価格の計算
Q
課税価格の合計額が基礎控除以下なら相続税の申告はしなくてもよいのですか。
A

 課税価格の合計額が基礎控除以下なら相続税の申告は不要です。

(注) ここでいう課税価格の合計額とは「小規模宅地等の課税価格の計算特例」などの特例を受ける前の価格をいいます(Q 小規模宅地等の特例を受けるための手続きを教えてください。参照)。

Q
配偶者は基本的に税金がかからないシステムになっていると聞いていますが本当ですか。課税されない場合、相続税の申告書も提出しなくていいのですか。
A

 配偶者は相続する財産が法定相続分相当額か1億6,000万円以下なら相続税はかかりません。

 各相続人の納付税額を求めるときに各種の税額控除を適用できますが、その代表的なものが「配偶者の税額の軽減(税額控除)」です。

 夫婦の財産は2人の協力で築かれたものという考え方に基づき、残された配偶者の負担を軽減しようという配慮から生まれた制度で、配偶者の相続する財産(課税価格)が1億6,000万円以下であれば、税負担はありません。また、それ以上であっても法定相続分までの額であれば同様に税負担はありません。

 この配偶者の税額軽減を受けるためには、必ず相続税の申告書を提出しなければなりませんので、注意が必要です(配偶者の取得する財産が遺言や分割協議で確定していることが必要です。)。ただし、相続税の申告書又は更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告期限から3年以内に分割したときは、税額軽減を適用できます。

Q
二次相続を考慮した遺産の分割方法のモデルを示してください。
A

 配偶者の税額軽減を適用すれば、1億6,000万円までは無税です。ところが、この配偶者の税額軽減を全て活用すると、将来配偶者が亡くなったとき(「二次相続」といいます。)の相続税の負担が重くなることがあります。

 課税価格が1億6,000万円であった場合を考えてみます。

 相続人は、配偶者と子2人とします(合計3名)。

 配偶者が全ての財産を相続すると、一次相続の相続税は無税です。

 仮に、そのままの財産を維持した状態で配偶者が将来亡くなったときには、課税価格1億6,000万円を子2人で相続するので、相続税の総額は2,140万円です。

 これを避ける為に、一次相続のときに、配偶者は二次相続の基礎控除の額である4,200万円の財産を取得し、子2人が残りの1億1,800万円を取得した場合、一次相続のときには子2人は約1,269万円の相続税を納付することになりますが、二次相続のときには基礎控除以下となり無税です。

 以上は、単純な計算例です。実際に税務上有利な配分額を検討する際には配偶者本人の資産の額も考慮しなければなりません。また一次相続と二次相続で適用できる非課税規定や特例も事前に検討しておいた方がよいでしょう。

 なお、一次相続の分割割合を決めるときは、税負担の試算にだけ捉われるのではなく、配偶者の住居や生活資金を確保することが重要です。そのうえで、最適な分割割合や分割財産の中身を検討することが望ましいといえるでしょう。

Q
相続税の総額を算出した後、実際に納付する相続税額は加算されて増えたり、控除されて減ったりするのですか。
A

 相続税の納付税額の計算に際しては、税額控除だけでなく税額が加算されることもあります。配偶者に対する税額軽減以外の税額控除は図表9のとおりです。

 なお、相続時精算課税分の贈与税相当額については、還付を受けることもできます。

拡大図はこちら


※1 KEYWORD 相続税額の2割加算 参照

※2 Q 配偶者は基本的に税金がかからないシステムになっていると聞いていますが本当ですか。課税されない場合、相続税の申告書も提出しなくていいのですか。 参照

※3 相続時精算課税贈与について贈与税の外国税額控除を適用していた場合は、その金額は還付税額から除かれます。

図表9 2割加算及び税額控除各種一覧表
Q
相続税の課税対象とされる財産は、相続財産に限らないそうですが本当ですか。
A

 相続税の課税の対象となるのは、(民法上の)相続財産だけではありません。相続税法により課税対象とされる財産(みなし相続財産)や一定の生前贈与に対しても相続税は課税されます。

Q
相続税が課税される(民法上の)相続財産はどのようなものがありますか。
A

 原則として、個人が相続又は遺贈によって取得した財産のすべてが相続税の課税対象となります。

 相続税法では、金銭的に見積もることができる経済的価値があるもの全てが相続財産とされ、不動産や預貯金、有価証券、無体財産権や書画骨董、家庭用財産などのほか、営業権のようなものも課税対象とされています。

Q
みなし相続財産とはどのようなものをいうのですか。
A

 被相続人の死亡を原因として相続人等に支払われる保険金や退職金などは、法律的には、相続又は遺贈により取得したものではありません。しかし、このような財産も、相続税法では相続又は遺贈により取得したものとみなして相続税の課税対象としています。

Q
相続開始前に贈与された財産も相続税の課税対象とされることがあるのですか。
A

 相続又は遺贈により財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合には、原則としてその財産の贈与された時の価額を相続財産の課税価額に加算します。

 被相続人から相続時精算課税制度の適用を受ける財産を贈与により取得した場合には、贈与財産の贈与時の価額を相続財産の価額に加算します。相続時精算課税制度は平成15年4月1日に施行されました。最も古い申告は10年以上前のものとなっています。相続税の申告をするときに忘れないように気を付ける必要があります。

Q
死亡保険金に対する税金は相続税とは限らないそうですが、どのようなケースでどのような税金が課税されるのでしょうか。
A

 死亡保険金に対する税金は、保険料の負担者や保険金の受取人により異なり、所得税や贈与税が課税される場合もあります。

 被相続人が保険料を負担していたものは、相続税の課税対象となります。

 一方、保険金を取得した相続人等が保険料を負担していたものは所得税の対象とされますが、保険料の負担者が受取人と異なる場合は、受取人に対し贈与税が課税されます。

Q
Aが亡くなりました。相続人は子Bだけですが、Aの妹が死亡保険金を受け取りました。保険料はAが負担していました。この場合、相続税の課税対象となりますが、死亡保険金は法定相続人一人当たり500万円まで非課税となるので、妹が相続した死亡保険金に税金はかかりませんか。
A

 いいえ、課税されます。被相続人が保険料を負担していた保険契約に基づき支払われた保険金は、相続税の課税対象となります。

 このうち、相続人が取得した死亡保険金については、

までの金額は非課税となります。

 お尋ねのケースでは、Aの妹は法定相続人ではありません。法定相続人以外の人が取得した死亡保険金は非課税とはされません。

KEYWORD
相続人と法定相続人の数の違い

 相続人は、民法が定める相続人をいい、相続を放棄した者及び相続権を失った者を含みません。

 相続税法における法定相続人の数は、相続の放棄があった場合でも、その放棄はなかったとした場合の相続人の数です。法定相続人としてカウントできる養子の数には制限があります(Q 相続税の課税方式について説明してください。)。

Q
死亡退職金も法定相続人一人につき500万円まで非課税になるそうですが。
A

 死亡保険金と同様に、死亡退職金も相続人が取得した死亡退職金については

 までの金額は非課税です。

Q
お墓は相続税の課税対象とはされない非課税財産だということですが、そのほかに非課税財産はどのようなものがありますか。
A

次の財産には、相続税は課税されません。

(1) 墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの

(2) 一定の公共事業を行う者が取得した公益事業用財産

(3) 条例による心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権

(4) 相続税の申告期限までに、国や地方公共団体、特定の公益法人又は認定特定非営利活動法人に寄附した財産

Q
自宅の敷地や商売に使っている土地の相続税が安くなる特例(小規模宅地等の課税価格の特例)があるそうですが、どのような趣旨からできている制度ですか。
A

 相続又は遺贈により取得した宅地や借地権(宅地等といいます。以下同じ。)のなかには、自宅の敷地や商売をしている店舗の土地、賃貸している貸地など相続人や受遺者の生活基盤であるため売ってしまうとそれまでの生活が維持できなくなるおそれが生ずる宅地等があります。このような宅地等に対して通常の相続税を課税すると、納税資金が不足し、引っ越しを余儀なくされたり、店舗を失い廃業を検討せざるを得なくなったり、生活の基盤を失うことにもなりかねません。

 そのため、相続又は遺贈により取得した一定の宅地等を一定の者が取得する場合には、相続税の申告等を要件として、一定の課税価格の減額をして相続税額を計算することができる制度(小規模宅地等の課税価格の計算特例)があります。

Q
被相続人の自宅の敷地は、一定の要件を備えると最大80%課税価格が減額されるそうですが、特例の要件を教えてください。
A

 被相続人の居住の用に供されていた宅地等を配偶者や同居の親族などが相続又は遺贈により取得した場合、その宅地等の課税価格を最大80%減額することができます。

 この特例(特定居住用宅地等の課税価格の特例)を適用できる面積は、最大で330㎡までとなっています(平成26年12月31日以前相続開始分は240㎡でした。)。

 たとえば、自宅の敷地(260㎡)の相続税評価額が5,000万円の宅地ならば、一定の者が取得すると、5,000万円の80%が減額され税金の対象となる課税価格は1,000万円で良いという特例です。よく「評価額が80%減額される」という「専門家」がいますが、自宅の敷地だからといって相続税評価額が少なくなるというわけではありません。本来ならば「相続税評価額」=「課税価格」なのですが、この特例の要件を備えると課税価格は80%減額され、「相続税評価額」×20%が「課税価格」とされるのです。

 特例の適用を受けるための要件は次表のとおりです。

図表10 特定居住用宅地等計算特例の要件一覧表

拡大図はこちら


*居住継続と所有継続の期間は、ともに相続税の申告期限までです。

(1) 対象となる宅地や借地権の用途は、被相続人の居住の用です。被相続人Aさんの友人・知人の誰もが「Aさんの自宅はあの家ですよ」という場所が被相続人Aさんの居住の用に供されていた家です。
Aさんが老人ホームで亡くなった場合、老人ホームに転居する直前までAさんの居住の用に供されていた家の敷地が80%減額特例の対象となるかについてはQ 被相続人が亡くなるときに老人ホームに入所していた場合、空家になっている自宅の敷地は80%減額特例の対象になるのでしょうか。を参照してください。

(2) この特例を適用するためには、一定の者が取得しなければなりません。第一順位は配偶者と同居の親族です。

① 配偶者が取得した場合は、居住継続等の要件はありません。生前仲が悪く別居していた配偶者でも適用できます。配偶者が取得した場合は、直ぐに売ってしまっても特例は適用できます。

② 同居の親族は、被相続人と相続開始直前に同居していた親族です。法定相続人に限りませんが、法定相続人以外の同居の親族に取得させる場合には遺言が必要です。

③ 同居の親族が取得した場合には、相続税の申告期限までその家を売ってはいけないだけでなく、継続して居住していることが条件です。介護をしていた親が亡くなったので、一人では広すぎるからといって相続税の申告期限前に転居した場合には適用できなくなるので気を付けてください(もちろん、申告期限前に売却してもダメです。)。

(3) 別居の親族が取得した場合は、次の条件のいずれも満たす場合に特例を受けることができます。

① 被相続人に配偶者も同居の法定相続人もいない場合

② 相続開始前3年以内に持家に居住していない者

・ 持家とは、日本国内にある自己又は自己の配偶者の所有する家屋をいい、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。なお、その親族が日本国内に住所がなく、かつ、日本国籍を有していない場合は、この特例の適用はありません。

・ 法定相続人とは、相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人です。

Q
被相続人の自宅の敷地の課税価格が最大80%減額される特例は、被相続人と生計を一にする親族の居住用の敷地にも適用できるそうですが、その要件を教えてください。
A

 被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供していた宅地や借地権を配偶者やその生計を一にする親族などが相続又は遺贈により取得した場合も、その宅地等の課税価格を80%減額することができます。

KEYWORD
生計を一にする

 生計を一にするとは、同一の生活共同体に属し、生活の資を共にしているということですが、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

 「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

図表12 小規模宅地等フローチャート(居住用)

*持ち家とは、日本国内にある自己又は自己の配偶者の所有する家屋をいい、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。
なお、その親族が日本国内に住所がなく、かつ、日本国籍を有しない場合はこの特例の適用はありません。

*法定相続人とは、相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人です。

Q
被相続人が亡くなるときに老人ホームに入所していた場合、空家になっている自宅の敷地は80%減額特例の対象になるのでしょうか。
A

 次のような理由により、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等について、一定の要件を満たす場合には、特例の適用ができます。ただし、被相続人の居住の用に供さなくなった後に事業の用又は被相続人等以外の者の居住の用とした場合を除きます。

(1) 要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人が次の住居又は施設に入居又は入所していたこと

① 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム又は有料老人ホーム

② 介護老人保健施設

③ サービス付き高齢者向け住宅

(2) 障害支援区分の認定を受けていた被相続人が障害者支援施設などに入所又は入居していたこと

(注)被相続人が介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたかどうかは、その被相続人が相続の開始の直前において要介護認定等を受けていたかにより判定します。したがって、老人ホーム等に入居等をする時点において要介護認定等を受けていない場合であっても、その被相続人が相続の開始の直前において要介護認定等を受けていれば、老人ホーム等に入居等をする直前まで被相続人の居住の用に供されていた建物の敷地は、相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになります。

Q
被相続人が居住していた住宅は娘家族も住んでいる二世帯住宅でした。被相続人が住んでいた部分以外のもっぱら娘家族が住んでいる部分の敷地についても80%減額特例の適用はありますか。二世帯住宅は一階に被相続人が二階に娘家族が居住しています。
A

 平成26年1月1日以降に開始した相続に関し現行法は、特定居住用宅地等の前提となる「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」の範囲を「被相続人とその親族(子など)が一棟の建物のなかで居住していたときは、その建物の構造にかかわらず、その親族が居住の用に供していた部分の敷地に対応する部分も、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に含まれる」としています。

 ただし、上記の一棟の建物が「『建物の区分所有等に関する法律』第1条の規定に該当する建物」(原則、区分所有建物である旨の登記がされている建物をいいます。)に該当する場合には、建物の敷地のうち被相続人が居住の用に供していた部分に対応する部分のみが、被相続人の居住用の宅地等とされるので、注意が必要です。

Q
賃貸アパートの敷地やアスファルトを敷設している駐車場用地にも適用できる小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等の特例)があるそうですが。
A

 被相続人や被相続人と生計を一にする親族が「貸付事業用に供していた宅地や借地権」を被相続人の親族が相続又は遺贈により取得して申告期限まで継続して所有し、かつ、貸付事業を継続していた場合には200㎡までの部分を50%減額できます。

図表13 貸付事業用宅地等の要件

拡大図はこちら


(注)小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は、建物又は一定の構築物の敷地に限られます。

 ただし、この特例は、被相続人等の自宅の敷地についての減額特例(特定居住用宅地等)とは完全併用はできません。たとえば、自宅の敷地につき限度面積の半分を適用した場合には、貸付事業用宅地等の特例については100㎡までしか適用できません。


・特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等を併用する場合の限度面積計算式

Q
貸付事業には、事業と称するに至らない不動産の貸付けで相当の対価を得て継続的に行うもの(準事業)も含まれますか。
A

 小規模宅地等の特例は、生活の基盤となっている土地の所有を継続できるようにするための特例ですから、貸付事業の規模にかかわらず適用できます。貸付事業には、事業と称するに至らない不動産の貸付けで相当の対価を得て継続的に行うもの(準事業)も含まれます。

Q
青空駐車場も賃貸していることに変わりはないのですが、200m²まで50%減額される特例の適用はないとのことです。なぜですか。
A

 小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は、建物又は一定の構築物の敷地に限られます。アスファルトなど一定の構築物の敷地となっていれば特例の適用がありますが、青空駐車場など一定の構築物の敷地となっていないものについては特例の適用はありません。

 なお、土地を利用するための土盛り、地ならし、埋め立て、たとえば道路面より低い土地の盛土等のような土地の改良のためのものと認められる場合の工事費用(整地費)は、土地の取得費に算入され、独立した構築物とすることができない場合があります。注意してください。

Q
自宅や貸付用不動産以外にも特例の対象となる宅地等はあるのでしょうか。
A

 特例の対象となる宅地等には、次表のとおり特定居住用宅地等、貸付事業用宅地等のほかにも、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等があります。

 特例の適用ができるのは、いずれも要件を備えた相続人や親族が取得した持分の割合に応じた部分に限られます。

図表14 特例が適用できる宅地等
Q
特定同族会社事業用宅地等とはどのような宅地等をいうのでしょうか。
A

 特定同族会社事業用宅地等とは、被相続人等(注1)が発行済株式総数(注2)の50%超を有する法人(注3)の事業の用に供されている宅地等で、次の要件を満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。

拡大図はこちら

*法人税法第2条第15号に規定する役員(清算人を除きます。)をいいます。

(注1) 被相続人及び被相続人の親族その他被相続人と租税特別措置法施行令第40条の2第12項に定める特別の関係がある者(詳細は税理士等の専門家にご相談ください。)

(注2) 発行済株式の総数(又は出資の総額)には、法人の株主総会又は社員総会において議決権を行使できる事項の全部について制限された租税特別措置法施行規則第 23 条の2第6項又は第7項に規定する株式又は出資は含まれません (詳細は税理士等の専門家にご相談ください。)。

(注3) 相続税の申告期限において清算中の法人を除きます。

・ 同族法人に対しては相当の対価で継続的に貸付けられている必要があり、同族法人に対して無償で貸付けられている場合は小規模宅地等の特例の適用はありません。

・ 特定同族会社の「事業」には、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業は含まれません。同族法人の事業が不動産貸付業等である場合、同族法人に対して相当の対価で継続的に貸付けている場合はQ 賃貸アパートの敷地やアスファルトを敷設している駐車場用地にも適用できる小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等の特例)があるそうですが。Q 貸付事業には、事業と称するに至らない不動産の貸付けで相当の対価を得て継続的に行うもの(準事業)も含まれますか。の貸付事業用宅地等に該当します。

Q
特定事業用宅地等とはどのような宅地等をいうのでしょうか。
A

特定事業用宅地等とは、相続開始直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除きます。)の用に供されていた宅地等で、次の要件のいずれかを満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます。

図表15 特定事業用宅地等の要件
Q
被相続人の居住の用に供されていた宅地等であっても、小規模宅地等の特例の適用がない土地があるそうです。どのような点に気を付けたらよいでしょうか。
A

 相続開始前3年以内の贈与財産や相続時精算課税の適用を受けた財産は相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていても小規模宅地等の特例の適用はありません。

 また、申告期限までに分割されていない宅地等については小規模宅地等の特例の適用はありません。

 ただし、申告期限までに一定の手続きをしておくことによって、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合は、後日特例の適用を受けて納めた相続税の一部の還付を受けることができます。

Q
限度面積の計算はどのようにするのでしょうか。
A

 特例の対象となる宅地等が複数ある場合の限度面積の計算は、限度面積の異なる複数の小規模宅地等について次の算式によります。

(1) 選択特例対象宅地等のうちに貸付事業用宅地等がある場合

(2) 選択特例対象宅地等のうちに貸付事業用宅地等がない場合
AとBは完全併用できます。A≦400㎡であり、B≦330㎡であればよいので、Aが400m²以上、Bが 330m²以上ならば合計で730m²まで80%減額特例を適用できます。

Q
小規模宅地等の特例を受けるための手続きを教えてください。
A

 この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。

 小規模宅地等の特例の適用は申告が要件となっていますので、小規模宅地等の特例を適用した結果、基礎控除以下となる場合でも、相続税の申告は必要です(Q 課税価格の合計額が基礎控除以下なら相続税の申告はしなくてもよいのですか。参照)。