境界について、改めて疑問を感じたときや問題が発生したときに気軽に参考として利用いただけるように、できるだけ普段使用している言葉で基本的な事項を実務に即して記載しています。
塀、擁壁の境界
境界標が存在していたとしても同じことですが、境界標や構造物等があればそれにより境界そのものが決定するわけではありません。構造物等があるからといって境界の位置は動かしがたい、認めざるを得ないということはありません。
1.まず資料調査
既存の地積の測量図、登記所備付の地図及びその他の数値資料や売買契約書の特記事項、添付図面、建築確認申請図書などの過去の経過を示す資料を調べましょう。
ブロック塀、擁壁などが境界線付近と思われる場所にある場合は、過去に何らかの経緯があって築造されていることが多いと思われます。できる限り造成工事や建築計画の図書などの経緯を調べる必要があります。また、ブロック塀、擁壁などは地上に現れている部分だけでなく、基礎部分が大きな構造をしています。
例えば、コンクリート擁壁やブロック積擁壁では地中に基礎として擁壁を支える部分があり、御隣側に10センチ以上コンクリート基礎が入っている場合があります。コンクリート擁壁のように御隣に対して垂直に見える場合でも、勾配がついていて根入れと言われる地中部分が御隣側に数センチ程度存在することがあります。
2.各種測量実施
隣接土地双方の現況を検討する材料として、TS測量、細部測量を行ない検討材料となるデータを取得します。
①
測量結果を基礎として
イ)
既存の地積の測量図、登記所備付の地図及びその他の数値資料が存する
ロ)
現地において境界標に代わるべき構築物等により土地の区画が明瞭である
ハ)
位置及び形状がそれぞれの資料の持つ精度において誤差の範囲内である
ニ)
当事者間でそれらの構造物等を土地の境界として認めることができる資料があり、これについては異議がない
等の時は筆界として判断して良いと考えます。構造物等の経過を調べて納得がいけば境界を示すものとして扱って良いでしょう。
②
資料が乏しい場合
イ)
現地の状況が境界に代わるべき構築物等により土地の区画が明確である
ロ)
既存資料として入手できる範囲、現地精通者の証言等により対象地の位置、形状、周辺地との関係が矛盾なく確認できる
ハ)
対象とする双方の所有地を測量した結果の面積などの数値が何れかに偏ったものでないことが確認できたので、当事者間に異議が無い
等の時は筆界として判断することが可能と考えます。
3.土地家屋調査士の業務
各種測量作業につき土地家屋調査士の業務では以下の内容を行なうこととされています。
①
画地調整
基礎資料で得た筆界確定の要素、及び資料調査に基づき収集した既存資料とを照合・点検し、面積、辺長の調整計算を行ない、周辺土地との均衡調整を図り、筆界点を確定するための作業です。
②
筆界確認の協議
当事者に対して筆界及び所有権の及ぶ範囲の確認を求め、協議させる。この場合において調査結果、復元資料を示し、調査士の見解を利害関係者に示し、恣意的に筆界が定められることの無いようにします。
筆界を確認したとき、又は不調の場合においても、その立会状況、立会者及び経過を調査記録書等に明記します。
③
復元測量
既存の資料に基づき、亡失した筆界点等を復旧します。
以上の手続きを経て隣接土地所有者同士の合意が得られたときは、筆界として差し支えないと考えます。
④
土地の形状及び面積が登記所備付の地図等又は登記簿上の地積と相違しているときは、作業者は土地所有者に対し地図訂正又は地積更正等の必要性があることを助言する、と規定されています。
費用と日数を費やして合意した結果が現状の登記簿などの公簿と齟齬が大きい場合があります。この場合には、成果を反映する良い機会ですし、将来の紛争予防となりますので、必要な登記手続きを行なうことをお勧めします。合意時点の当事者では境界確認の経緯を身をもって経験していますので問題ありませんが、土地所有者に変化があった場合など公簿との齟齬の理由や確認経過がわかりませんので問題視される可能性があります。