専門家執筆Q&A
奥野 尚彦

境界・筆界Q&A

境界・筆界
Q&A

土地家屋調査士
土地家屋調査士法人東西合同事務所
奥野 尚彦

境界について、改めて疑問を感じたときや問題が発生したときに気軽に参考として利用いただけるように、できるだけ普段使用している言葉で基本的な事項を実務に即して記載しています。

本コンテンツの内容は、平成27年6月30日の法律に基づき作成されております。
土地と土地との境界に関わる事柄をQ&A形式で解説しています。

官民査定とは

Q
官民査定とはどういったものでしょうか。
A

1.官民査定とは

 官有地と民有地の境界を確定することです。
 戦前まで官民の境界は境界査定という行政処分によって、行政庁が一方的に決定した経緯があり査定と呼びました。規定が変わった現在も官民境界確定のことを習慣的に査定という呼ぶことがあります。
 ただし、現在では行政庁が境界を一方的に決定するのではなく両者の契約と考えられていますので、中身は戦前でいう査定とは全く異なります。
 一般的に先例では「境界確定は、各省各庁の長と隣接地所有者とが対等の立場で境界を協議し、両者が合意に達した場合に成立するもので、その性質は財産所有者としての国と隣接地所有者との契約と解すべきである」とされています。

2.公共用地境界明示申請手続き

 同じような言葉として「明示」という言葉が使用される場合もあります。いずれにしても、法律に基づく制度ではなく、都道府県の要綱(公物管理権)などに基づき、官有地と民有地の境界紛争を事前に回避し官有地の管理保全を図るといった立場から定められた制度であり、名称はいろいろありますが官民境界確認手続きとしては、同様な手続が行なわれます。

まず、官有地と接する土地の所有者から官有地の所有者(管理者)へ境界確定申請をします。官庁によってさまざまですが、申請時に申請人の印鑑証明書の添付を要求するところもあります。また、相続などによって登記簿上の所有者と申請人が一致しない場合は、登記簿上の名義を一致するように求めるか、相続の分割協議のためなどの場合には証明書を添付して相続人全員で申請を行なうことが要求されます。

官有地の管理者が窓口となる担当者を決めます。担当者と申請人(代理人)は過去の資料、現在の構造物等の現況について照合し、境界線の協議を行ないます。

ある程度協議が整って境界線についての方向性がでたら隣接地所有者、対側地所有者などと現地立会を行ない、境界点がどのような位置関係にあるか確認します。

立会った結果、両者が合意したら、境界標を設置して合意した旨の確定図、あるいは協議書に署名 捺印を行ない提出します。

確定協議書、官民境界明示書、明示指令図など管理者によって異なりますが、互いに合意したことを証明する書類を交付します。

官民境界確認は行政処分ではありませんので、不服があれば、境界確定訴訟、所有権確認訴訟を求めることができます。

Q
通常の官民境界確認手続きについて注意することは何でしょうか。
A

1.管轄

 接する官有地の所有者若しくは管理者により官民境界確定手続きを行なう窓口が異なりますので、事前に管轄についての調査が必要です。
 一般的にいって、

現況では公図上に存在する無番地などの存在が明確でない場合などは、財務省の管轄となり窓口としては各地に存する財務事務所などが窓口となります。

都道府県が所有する普通財産、都道府県道、はその都道府県の出先機関である土木事務所が申請窓口となります。

国が管理する国道、河川は、国土交通省の機関である国道工事事務所、河川工事事務所の出先機関である管轄の出張所が窓口となります。

市区町村が所有若しくは管轄する道路、河川、普通財産は市区町村にあるそれぞれ担当する部署が窓口となります。

2.申請の当事者

 官有地に接している土地の所有者が申請当事者となります。所有者が法人の場合は、処分権限を有する代表者が申請人です。法人所有の土地で、信託登記されている場合は、原則として委託者と受託者が申請人となりますが、受益者が定められている場合には、受託者と受益者が申請人になります。
 また、共有地の場合には共有者全員の申請が必要です。マンション敷地などのように、区分所有者間で管理組合の規約の定めに基づいて代表者を決定し、その代表者が申請することも可能です。
 登記名義人に相続が発生している場合は、法定相続人全員が申請を行なう必要があります。ただし、公正証書遺言、裁判所の審判・調停により権利者が定められている場合は、その権利者から申請することになります。
 所有者の一部からでも行なえる筆界特定制度と大きく異なる点です。

3.申請にあたり要求される書類等

 管轄が国、都道府県くらいまでは、申請人の印鑑証明書が要求されることが多いです。管轄が市区町村の場合は、各管理者により印鑑証明書を必ずしも要求されるとは限りません。
 また、申請人が登記情報の所有者と異なる場合には、申請人の適格者であることを証明する書類が要求されます。法人の場合は、代表者事項証明書又は法人登記の謄本と印鑑証明書が、信託登記がなされている場合には信託目録が、共有者の管理規約がある場合は管理規約の写しと総会議事録が、相続が発生している場合は相続関係説明図及び戸籍謄本、住民票、分割協議書等の原本及び写しが、さらに相続権利者が定められている場合は、遺言公正証書、裁判所の審判・調停調書等権利関係を証する書面とその写しが要求されます。
 その他特別な場合として、土地所有者が未成年の場合、差押え・競売開始決定などの登記事項記載がある場合など、事例に応じた書類が要求されますので、事前に確認が必要です。

Q
官民境界確定に要する期間はどれくらい見込めば良いでしょうか。
A

 管轄となる国、都道府県、市区町村により異なります。一般的にいって、一度官民の境界確認を行なったら、以後その内容が引き継がれていき、過誤など相当な理由がない限り再度境界確認を行なわない管轄者の場合は、手続き完了までの期間が長く、必要が生じる度ごとに境界確認手続きを行なう管轄者の場合には、手続き完了までの期間が短いといえます。
 再度の境界確認を行なわない管轄者では既存境界確認の証明書が発行されますが、必要な都度境界確定を行なう必要がある管轄者では証明書が発行されません。
 都道府県及び特別区の境界確認では通常、3か月~4か月程度期間を見込む必要があります。
 特に、近年の国道の境界確認は要注意です。人員削減の影響をもろに被っており、関東地方管内では通常でも6か月程度の日数を要します。実際に国道の確定作業において、境界が確定して関係人の署名捺印も全て取り終った図面を国道事務所に提出してから、決済まで2か月を要した事例もあります。

Q
官民境界確定は何に基づいて行なわれるのでしょうか。
A

 道路台帳、河川台帳、森林簿、保安林台帳備付地図、旧土地台帳附属地図があります。これらは明治時代から実測されており、比較的精度が高いものです。
 民地側で官庁が保存している以上の資料を得るのは非常に難しいので、境界線の検討は官庁主導で行なわれることになります。

 資料に基づいて、現場に官有地の方向と幅員が示されます。昔の青地、赤道のように資料として旧土地台帳附属地図しか存在しない場合は、この地図の位置、寸法を現地に復元するということが行なわれます。
 したがって、昔は実際に3尺(約91センチ)の水路(水の流れる部分)に過ぎなかったものであったとしても、一般的には水路に必要な畦畔(あぜなど)や泥揚場(水路管理に必要な一定幅の部分)などを含めると概ねその2~3倍程度の範囲を官有地とみなしますので、現実の認識よりも広くなってしまうことが多々あります。

Q
境界確定の線に納得できないとき
A

 現行の境界確定手続きは行政処分ではないので、一度確定した官民境界であっても納得できない場合は、筆界特定手続きや境界確定訴訟、所有権確認訴訟などの民事訴訟で争うことができます。
 ただし、官公庁が保管する地図等より信用できる地図はそうそうありませんので、勝訴は容易でないと思われます。
 官庁の規定により隣接地、対側地の同意を要求されますが、隣接地、対側地がマンションのような多数の共有者が存在する場合、あるいは官民の境界線について隣接地、対側地の所有者から承諾が得られない場合は、官民境界確定が結了できません。このような申請人の力が及ばない理由で官民の境界確定が出来ない場合などは、筆界特定手続きが有効です。

Q
親の代から居住していた建物敷地を調査したところ無地番の土地が存することが判りました。将来のためにキチンとしたいのですが、どういう手続きが必要でしょうか。
A

 官民境界確定を行ない、可能であれば公共用地の払下げあるいは時効取得手続きを行なう。
 私的区画整理のような宅地造成、分譲を行なった地域や、古くから青地、赤道等の現況がなく他の土地と一体利用されてきたところでは、敷地の中に無地番の土地を取り込んだまま利用されているケースがあります。改めて建物建替えのために法務局の公図を調べたところ所有する土地の一部に無地番の国有地等が存することが判明し、この処理をしないと建物を建てられないことになります。
 いくら現在道路や水路などの現況がなく、宅地と一体として利用しているからといって、公図上記載されている土地を削除することはできませんので、通常は管轄となる財務省などで無地番土地の境界を確定し、売払い手続を行なうか、借地契約を結ぶかということになります。現実に道路・水路として機能しておらず、官公庁の方針として処分することが決まっている場合は売払い(払下げ)手続きがあり、20年以上の期間にわたって建物敷地の一部として利用しているなどの事情がある場合は時効取得する手続きが認められる場合があります。
 各地域によって無地番土地の取り扱い方針や地域ごとの歴史経過があり一概には言えませんので、事前に所轄となる官庁で調査確認する必要があります。

1.官民境界確定

通常の官民境界確定を官有地と接する申請人土地だけではなく、隣接土地、対側土地との間についても行ない、対象となる官有地の区画を確定する必要があります。

財務事務所の手続きでいいますと、本件地土地の所有者が申請人となり官有地との境界確定申請を行なった際に、隣接土地と官有地、対側土地所有者と官有地の境界確定書類も同時に作成し対象となる無地番土地の区画全体を確定する、といった手続きを行ないます。

この申請では、申請人だけではなく隣接地所有者、対側地所有者も実印の押印、印鑑証明書の添付が要求されます。

2.売払い(払下げ)手続き若しくは時効取得手続き

官民の境界が確定したら、官庁から官有地を取得する手続きとなりますが、売払い若しくは時効取得のいずれの手続きが可能かによって内容に差が出ます。

売払い手続の場合は、手続き当時の時価で買い取ることになります。また、それまでは官有地を使用していたということになりますので、過去5年間にさかのぼって借地料を支払い精算する必要があります。売払い手続が認められると、該当地の売買契約を行ない売払い費用の支払いと同時に売買が成立し必要書類が交付されますので、この関係書類を添付して「土地表題登記申請」「所有権保存登記」を行ない申請人の取得を登記します。通常は、売買契約から1か月以内に上記登記処理を終え、結果の登記情報を官庁に報告することが求められます。

これに対し、建売等の分譲業者から土地建物を購入してから20年以上経過している、あるいは前所有者から土地建物を購入したあと建物を建て替えてから20年以上経過しているなど、実際に建物敷地として20年以上利用してきたなどの理由で「占有」が認められれば、時効取得が可能となります。
 この場合は無償で取得することができます。時効取得を証明する書類を添付して「土地表題登記」「所有権保存登記」を行ない公簿上に記載します。