専門家執筆Q&A
奥野 尚彦

境界・筆界Q&A

境界・筆界
Q&A

土地家屋調査士
土地家屋調査士法人東西合同事務所
奥野 尚彦

境界について、改めて疑問を感じたときや問題が発生したときに気軽に参考として利用いただけるように、できるだけ普段使用している言葉で基本的な事項を実務に即して記載しています。

本コンテンツの内容は、平成27年6月30日の法律に基づき作成されております。
土地と土地との境界に関わる事柄をQ&A形式で解説しています。

測量の種類、費用

Q
一口に測量といってもいろいろ種類があるようです。その相違はどのようなものですか。
A

 土地の境界確定に関係する測量の種類は、測量方法で分けると「多角測量」「放射測量」、測量の目的で分けると「一筆地測量」「復元測量」「地形測量」「高低測量」「真北測量」、使用する器械で分けると「平板測量」「TS測量」「GPS測量」といった分類になります。

 主に、以下の内容の測量が、測量の目的に応じて組み合わされて実施されます。

1.多角測量

 通常は、トータルステーション(「TS」)等の観測により、既知の基準点を利用して新たに基準点として「多角点」を設ける測量です。
 これらの多角点を基準点として利用し、土地境界確定の目的となる筆界を、測量した時点での他の筆界点、基準点、その他周辺の地物との相対的な位置として座標値で示します。
 この基準点の原点を全国的に統一されたものにすると、成果も統一されたものとなり別々に測量作成された成果を接合したり、位置の特定を行なう場合に非常に都合が良いのです。そこで、現在の不動産登記法上の規定では、国が法律で定めた原点に基づいた公共基準点を、原則、使用することになっています。とはいえ、公共基準点が必ずしも概ね100メートル以内に数点存在するとは限りませんので、その場合は、局地的な座標系(任意座標)を使用することができる取扱です。局地的な座標値に基づいて任意座標で表示した場合は、他で測量された座標値とは整合性がありません。例えば、御隣の土地につき任意座標で表示した地積測量図の備付がある場合には、本件地と隣接地の座標系を統一するなど検討に一手間が必要となります。

2.器械点を多角点とする多角測量

 上記の多角測量で基準点を設置しても、なお境界確定の対象となる一筆地の筆界点を測量することが困難な場合は、基準点からさらに測量器械を設置する点(器械点あるいはTS点)を設置します。器械点を設置する作業方法、誤差の管理は多角測量に準じて行ないます。

3.一筆地測量

筆界点等の測量
 基準点、多角点、器械点、既設の筆界点(以下、「観測点」といいます。)に基づき、筆界点、分割点、復元点、引照点等(以下「筆界点等」といいます。)の位置を測定する作業です。

TS測量が一般的
 観測点の1点に器械を設置し、他に観測するもう1点からスタートして、筆界点等を視準し器械が示す角度と距離を次々に読み取ります。基準となる観測点2点の座標値に対する相対的な位置として筆界点等の座標値を計算します。
 測量の進め方によって、器械点を順次移動して筆界点等の測量を行なう多角法、1点を器械点としてTSを設置し、次々に角度と距離を測量する放射法があります。

その他の測量方法

イ)

平板法:
昭和50年代まで一般的に行なわれていた平板測量を行なう方法です。観測点に平板を設置し図上法により筆界点等の位置を測定する方法です。

ロ)

GPS測量法:
筆界点等にGPS器械を設置し、直接座標値を読み取ります。測量技術の項目で記載した通りの制約がありますので、筆界点等の測量に使用するより、基準点、多角点の設置に威力を発揮する場合が多いと考えます。

4.分筆測量

 土地を分筆するために行なう測量で、原則として分割前の土地の全部について行なう必要があります。過去には、分筆する土地に関する部分のみ測量することがありましたが、新たに筆界が創設される分筆登記でありながら残地部分に誤差が累積される原因となっていました。
 これを防ぐため残地部分の測量も行ない、敷地全体として許容誤差を超える面積、寸法となる場合には地積更正登記を必要とするなどの規定が設けられました。
 同じ主旨により、同一所有者が連続する数筆の土地を所有している場合は、自己所有地間の境界はあまり明確でない場合が多いので、同一所有者の土地を1団の土地としてその外側の他人が所有する土地との境界を明らかにするよう求められます。分筆する土地が同一所有者の複数の土地に及ぶ場合で所有する土地間の境界が不明のときは、土地所有者の同意が必要となりますが、1筆に合筆してから分筆するよう求められる場合があります。事情により合筆しない又は出来ない場合は、各所有土地間の境界を境界標などで明確にする必要があります。
 ただし、「特別の事情」が認められた場合は、この限りではありません。
 例えば、分筆しようとする土地の境界が地積測量図、境界標などで明らかな場合は同一所有者が所有する土地全体を測量せずともよく、あるいは広大な土地の一部を分筆する場合などは土地全体を測量せずに、分筆する土地に関係する境界線の範囲を測量すればよいなどの特例が認められる場合があります。
 分割する筆界点には永久標識を設置する必要があります。ただし、分筆線上に建物など構造物がある場合や、宅地分譲地など造成工事が行なわれている最中であるなど事情により直ちに永久標識が設置できない場合は、計算点表示とするか、仮標識、控え杭、引照点杭を設置し現地でその位置が特定できるようにしておき、地積測量図などにその旨を明示して作成します。後日、事情が替わって設置可能となった段階で、永久標識を設置します。

5.復元測量

 既存の資料に基づき、亡失した筆界点等を復旧する測量です。
 地図、地積測量図など復元の基礎となる数値資料がある場合は、測量した成果と既存の資料を照合し復元点を割り出すことになりますが、地図や古い土地区画整理図面しかないなど数値資料が無い場合には、より広範囲を測量する、関係者の立会による確認作業を行なうなど、境界確定作業が必要になります。

6.地形測量

 単に筆界点等だけではなく、境界線付近の建物、擁壁、側溝などの構造物やマンホール、電柱、法面など対象となる土地の現況を示す地物などを測量し、境界点等と一緒に示す測量です。境界点付近の構造物を利用して、境界点の様子が図面的に把握できるようにする詳細図を作成したり、境界線を越えて存在する越境の状況を示す図面を作成したり、現状の土地利用を示す目的で行なわれます。
 境界確認書類を作成したときに境界確定図面として筆界点等のみを示すのではなく、地形測量成果を盛り込むことによって、当時の土地の状況、境界点の状況が把握することができます。
 将来、復元測量などの時に境界付近の状況が相違しているかの参考資料になります。

7.高低測量

 建物建築の際に要求されるもので、本件地、周辺土地の地盤高、構造物、道路などの高さを測量するものです。どこか基準になる点を定め、その高さを仮に10.000メートルとした(仮ベンチマーク=BMといいます。)場合の比較高として表示されます。これは計画する建物敷地の道路との取り付け、敷地の下水、雨水を公共の下水施設に流す計画、周辺土地との高低差がある場合のコンクリート擁壁など計画を決めるなど、直接工事の実現や費用に関わる重要な資料となります。これは一現場単位に独立した建物計画を立てるために要求されるものであり、統一した原点は求められませんので仮BMで定めるのが通例です。
 ただし、河川の護岸近くの土地のように、建築計画のなかで河川の管理上必要な地盤高が要求される場合があります。この場合は、官公庁が管理している基準に基づいた高さで表示することになります。例えば、TP+○○。○○○、OP+○○。○○○といった表示が行なわれます。
 また、比較的規模の大きい建物(マンションなど)の建築計画のために供するものとして、隣接地の建物の高さ、窓位置及びその高さを測量する場合もあります。本件地周辺の建物、窓位置などを高さ表示して立面図を作成する場合もあります。

8.真北測量

 建築計画にあたり、磁石が示す北ではなく公共基準点の原点が示す北を測量し図面に記載するものです。太陽観測により計算して求める方法、緯度経度の公共基準点から計算して求める方法などが一般的です。
 主に日影計算などを行なう場合に、利用されます。

Q
建物を建て替えるためにする測量について教えてください。
A

 建物建替えを行なう場合、境界確定は必ずしも必要ではなく、建替える前の敷地利用状況を前提としてその範囲を測量し、敷地面積、新築する建物の計画に必要な図面を作成することになります。
 したがって、内容としては任意座標による一筆地測量、地形測量、高低測量が一般的に必要となります。建物計画の内容によっては、真北測量も要求されます。
 本件地主目的にして境界付近の周辺地を含める対象とした局地的な測量ですので、比較的早く成果を出すことができます。

Q
元々あった境界標を復元する測量について教えて下さい。
A

 元々境界標が存在したということは、過去に何らかの境界設定行為(区画整理、分筆登記等)があったか、隣接地所有者の間で境界確認行為があったと考えられます。
 この場合は復元測量を行なうことになりますが、本件地、隣接地、周辺地に関する境界についての資料を集めて検討する必要があります。
 地図、地積測量図、最近の境界確認書添付図面のように数値資料がある場合は、本件地、隣接地、周辺地の筆界点、引照点、TS点その他資料検討に必要な点を測量し、資料との整合を照査し復元点を割り出します。筆界点を復元して境界標を設置する場合には、事前にペイントなどで復元点を隣接地所有者とそろって確認したうえで境界標を設置します。
 作業の締めくくりとして、境界標復元の記録を是非残すようにお勧めします。復元にあたり収集した資料、測量結果、検討資料、復元した境界標の写真、立会確認の記録とともに纏めて互いに保管するようにします。
 また、数値資料が無い場合は、地図、公図、登記情報に基づいて復元点を特定することが難しいので、あらかじめ関係者の立会により確認作業を行ない、それらを確認する材料のため復元測量を実施します。現地構造物の状況、登記情報の面積・寸法との整合、互いに認め合える占有状況を考慮して復元点を計算し求めます。
 この場合は、互いに確認し境界点の復元に合意できたら、数値資料の添付された境界確認書の様式で書類を交換するのが良いと思います。

Q
御隣との境界線上に互いに越境物があります。将来のために覚書を締結したいのですが、どんな測量が必要ですか。
A

 隣接地所有者同士で境界線に関する合意ができている場合は、合意された境界線とその付近の地形測量を行ない、現況測量図を作成したうえでこれを添付した覚書を締結し、将来の紛争を避けるように努めましょう。
 地形測量ですが、建物や塀など直接反射板など道具を使用できる対象物は良いのですが、越境物が空中、地下にある場合など反射板などの道具を使用できない場合もあります。この場合は、反射板を使用しない器械測量もあるのですが、若干精度が悪くなります。
 いずれにしても、越境物の測量は精度が筆界点等の測量に比べて悪くなりますので、ミリ単位等の細かい寸法やこれを利用した細かい面積計算はできる限り避けた方がよいと考えます。測量器械自体に測角、測距の誤差がミリ単位でありますのであまり意味が無いからです。

Q
兄弟で相続した土地を分割したいのですが、どんな測量が必要ですか。
A

 一筆の土地を相続する持分に応じて分割するなど、分筆測量を行なうことになります。対象となる土地が数値資料などが無い未確定の土地の場合は、まず、境界確定作業を行ない官民、民民の境界確定を行なう必要があります。
 このために、基準点、器械点を設ける多角測量をまず行ない、一筆地測量により敷地全体の境界を明らかにするのですが、境界確認書締結に必要な地形測量も併せて行なわれます。
 境界確定した後、分筆測量を行なうことになります。(詳細は【一口に測量といってもいろいろ種類があるようです。その相違はどのようなものですか。】を御参照ください)
 分筆測量の成果である地籍測量図を添付して土地分筆登記申請を行ない、分筆する元の土地には分筆後の地積と分筆の旨が記載され、分筆土地は新しい登記情報が作成されます。
 相続する土地につき分割協議が調っている場合には、当該土地の相続人から被相続人名義のまま分筆登記を行ない、分筆後の各土地につき直接相続人名義で相続登記を行なうことができます。分割協議が調っていない場合は、法定相続人全員で行なう必要があります。

Q
過去に御隣と境界確認をしたことがありません。将来のために境界を確定して明らかにしたいのですが、どんな測量が必要ですか。
A

 境界確定を行なうにつき必要な、多角測量、一筆地測量、地形測量を行なう必要があります。具体的な境界確定手順については、【境界を決めるにあたって考慮される要素(占有の客観的な状況、土地登記簿(土地台帳)や公園等)】を御参照ください。