専門家執筆Q&A
奥野 尚彦

境界・筆界Q&A

境界・筆界
Q&A

土地家屋調査士
土地家屋調査士法人東西合同事務所
奥野 尚彦

境界について、改めて疑問を感じたときや問題が発生したときに気軽に参考として利用いただけるように、できるだけ普段使用している言葉で基本的な事項を実務に即して記載しています。

土地と土地との境界に関わる事柄をQ&A形式で解説しています。

縄のび

Q
よく縄のびという言葉を聞きますが、どういうことですか。
A

 地租改正による測量作業が行なわれたときに面積を過小申告したために起こった状況
 地租改正事業は徴収を目的としていたため、その際行なわれた測量は、できるだけ面積を少なく申告するようにする傾向がありました。その結果、実測面積が登記簿に記載されている地積より大きい「縄のび」という現象を生じる原因となりました。

 古い時代の区画整理、耕地整理などで形成した区画の寸法、面積が公簿上の値に対し不足することが無いように余裕を持たせた。
 耕地整理等による区画寸法を現地に設置する時に、計画寸法をそのまま現地に区画配置してしまうと境界点の設置位置に誤差があった場合一方の土地は寸法が大きく、隣接するもう一方の土地は寸法が少なくなってしまいます。
 この誤差による不公平となる現象を避けるため、計画を含む街区全体で2~3センチ程度(各区画の寸法にミリ単位の設置誤差があっても全体として誤差を吸収できる程度)の余裕を持たせた経緯があるようです。

Q
縄のびにより所有地に不都合なことがあるでしょうか。
A

 市街地の場合、縄のびによって通常不利益を被ることはあまりないと考えられますが、元の土地が市街地でなかった場合には、以下のようなことが考えられます。

 元々が農地、山林であった土地について合筆・分筆を繰り返した場合、分筆元地となる部分にその誤差が集約されるため、実測面積と登記地積とが大きく相違する結果になる可能性があります。
 分合筆を行なった元の土地に許容誤差を超えるような誤差があった場合に、合筆登記申請では地積の算出根拠となる地積測量図の提出を義務付けられていませんので、単純に合筆前の登記簿上地積が合計されるだけであり誤差が解消されません。
 合筆前の各筆の誤差が加重されるために、合筆後の土地は一層誤差が大きくなります。
 この土地を将来売却しようとするときあるいは相続を行なおうとするときなど実際に測量を行なった結果、登記情報記載の地積と異なることが判明した場合、地積更正登記を行なう必要が生じます。
 地積更正登記を行なった結果、土地の評価額、課税価格に影響を及ぼすこととなります。

 分筆登記を行なうにあたり許容誤差を超える地積の相違が判明したときは、地積更正登記を行なう必要があります。
 過去の地積測量図の規定では残地分筆が認められていたため、従来が山林、農地であった土地を複数回に分けて順次分筆していった場合、残地となる土地の実測面積と地積の相違が大きくなっていきます。
 例えば、現実の土地は宅地として100㎡あるのに登記上の地積は10㎡しかないといった事態が起こります。現在では、こういった事態が発生することを避けるため分筆地、残地含めて全ての区画の求積根拠を明らかにすることが求められ、かつ、これらの合計が元の土地の地積と比べて許容誤差の範囲を超えている場合は、分筆の前提として地積更正登記を行なうことが法律上規定されていますので、こういったケースは回避されています。
 地積更正登記を行なうと、固定資産税の課税台帳が修正されますが次年度より課税価格が大きくなるとともに、原則として、今まで課税されていなかった面積増加分の差額が5年程度遡って課税されることになります。