

賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
どんな事情があれば、建物使用を必要とする事情となるのか?
更新拒絶の正当理由
先日、ある事件で、相手方から書面をもらいました。
この相手方には、弁護士がついていなかったのですが、なかなか良くできた書面で、弁護士に書いてもらったのではないかと思いました。
相手方にお会いしたとき、相手方にそのことを伝えると、「AIに書いてもらいました。」と言われました。私は、それを聞いて、「AIは、かなりのレベルに達している。」と驚きました。
現在のAIは、弁護士3年目くらいの仕事はできると言われているようですが、確かにそうかもしれないと思わせる出来事でした。
今回は、普通建物賃貸借契約の更新拒絶のお話です。
最近、こんな相談がありました。
Aさんは、都内の自己所有マンションに家族(奥さんと子供2人)と居住していますが、最近、埼玉県の実家に住む母親が亡くなりました。
Aさんの父親は、もう10年近く前に亡くなっており、母親は一人暮らしでしたが、この母親が亡くなったことによって、Aさんの実家の建物は、空き家になってしまいました。
Aさんとしては、この実家の建物を処分したいと思っていますが、建物の中に、Aさんや両親の思い出の品が沢山あり、また、高価な家具やピアノなどもあるので、実家の建物を処分するために、これらの物をどこかで保管しなければならなくなりました。
幸いAさんは、自宅マンションの近くに、賃貸用マンションを1室所有しており、現在入居している賃借人Bとの賃貸借契約の契約期間は、あと残り8か月でした。
そこで、Aさんは、Bとの賃貸借契約の更新を拒絶し、Bに賃貸用マンションから退去してもらい、そこに、実家の動産類を保管しようと考え、Bとの交渉を依頼するために、私の所に相談に来ました。
賃貸経営の法律Q&Aに詳しい説明がありますが、大家さんが、契約を更新したくない場合、すなわち契約期間が満了したら借主に出て行ってもらいたい場合は、契約期間の満了の1年前から6か月前までに、更新拒絶の通知をしなければなりません。
また、大家さんが更新拒絶の通知をしたにもかかわらず、借主が契約期間終了時に建物に居座っているときは、大家さんは、借主に対して、速やかに異議を述べなければなりません。
しかも、この大家さんの異議には、正当事由がなければなりません。
この正当理由というのは、これも、賃貸経営の法律Q&Aに説明がありますが、分かり易く言えば、大家さんが賃貸中の建物を自ら使用しなければならない事情、すなわち「建物使用の必要性」です。
ただ、この場合の大家さんの「建物使用の必要性」というのは、文字通り自分で使わなければならない事情だけでなく、次のような事情も含みます。
1 貸している建物を自分や家族の住居などとして使用する必要がある。
2 貸している建物を事業のために使う必要がある。
3 貸している建物を建て替える必要がある。
Aさんの場合は、上記の1ですが、さすがに、実家をかたづけるための倉庫代わりに使いたいというような事情では、大家さんの「建物使用の必要性」としては、弱すぎます。
では、具体的には、どんな事情があれば、正当事由が認められるのでしょうか。
一番分かり易いのは、災害などで、大家さん自身が自宅を失い、賃貸中の建物を明け渡してもらって居住する必要があるような場合です。
そのほか、地方に住む大家さんが、東京に転勤になり、東京に所有している賃貸建物に居住する必要がある、単身の大家さんが高齢になり、介護のために長男一家と同居することが必要となったが、大家さんの家も長男の家も、2世帯が居住するほど広くないので、2世帯が居住できる賃貸建物を返してもらう必要がある等といった場合です。
上記の事情は、実家をかたづけるための倉庫代わりに使いたいというような事情と比べて、明らかに大家さんが賃貸建物を使用しなければならない必要性が高いと言えます。
もちろん、裁判所は、大家さんの建物使用の必要性が多少弱くても、立退料を払うことによって、正当事由を認めることがあります。
しかし、立退料は、あくまで補強材料であって、本体である大家さんの建物使用の必要性があまりに弱い場合は、立退料で補強することはできません。
従って、例え裁判を起こしても、実家をかたづけるための倉庫代わりに使いたいというような事情では、立退料で補強しても、正当事由が認められることはないのではないかと思います。
もっとも、極めて高額な立退料であれば、賃借人は和解して出て行ってくれるかもしれません。
しかし、極めて高額な立退料を払うのであれば、トランクルームを借りた方が安上がりなので、経済的な合理性はありません。
結局、Aさんには、「Aさんのご希望に添うのは、ちょっと難しいです。」とお答えしました。
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大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。







