

相続の法律制度(民法と相続税法の相続財産を巡る取扱の違い等)について、弁護士が解説したアドバイスです。
残念な出来事・・・独居高齢者の孤独死
今年のお盆は、長野県の少し標高の高いところで、一週間ほどのんびり過ごしました。
特に予定など無く、ゴルフをしたり、ランニングをしたり、たまに仕事をしたりと、時間に追われない8日間でしたので、かなりリフレッシュした感じで東京に戻ってきました。
さて、今回は、少し残念な出来事のお話です。
2024年3月号のコラムで、まとまった預金などもっておらず、年金収入しかない一人暮らしの高齢者の方の成年後見人をしているというお話を書きました。
ある日の午前11時頃、この高齢者の方(Aさん)の自宅に日曜日以外の毎日お弁当を配達しているお弁当業者の方から、「Aさんの昨日のお弁当が、取り込まれていません。」という電話がありました。
お弁当業者の方のお話では、「毎日11時頃お弁当を届けており、ご不在のときは、アパートのドアノブにお弁当の入ったレジ袋をかけておくのですが、いつもは、翌日配達に来ると前日のお弁当は取り込まれています。Aさんは、昨日ご不在だったので、いつものようにアパートのドアノブにお弁当の入ったレジ袋をかけておいたのですが、今日来てみると、昨日のお弁当がそのままになっていました。そこで、板橋区のお年寄りセンターに電話したところ、後見人さんに連絡するように言われたので、お電話しました。」ということでした。
この電話を受けて、直ぐにAさんの携帯電話に電話をかけましたが、何度かけても応答がありません。
また、ちょうどその日は金曜日で、Aさんに毎週のお小遣いを振込む日だったので、事務スタッフが朝一番でAさんの口座に1万円入金していました。
Aさんは、お金の管理ができず、お金があるとすぐ全部使ってしまうので、年金の入ってくる預金口座の通帳はこちらで管理し、Aさんには、別の口座のキャッシュカードを渡して、毎週1万円ずつその口座に入金し、Aさんがキャッシュカードで引き出すという方法をとっていました。
Aさんは、いつも、お金を入金すると待っていたかのように直ぐに引き出していたので、Aさんがお元気で外泊しただけということであれれば、いつもどおりお金を引き出しているだろうと思い、通帳を記帳してみましたが、引き出されていませんでした。
これらの事情から、私としては、かなり心配になり、その日の予定をキャンセルして、Aさんの安否を確認するために、Aさんの住むアパートに向かいました。幸いその日は、訴訟や調停の予定はなく、相談が2件あるだけだったので、相談予定の方に電話をして、相談日時を変更してもらいました。
Aさんの自宅アパートの近くの駅からタクシーに乗りましたが、Aさんの自宅の鍵を預かっていなかったので、タクシーの中からネットで検索した鍵屋さんに電話をして、事情を話してAさんの自宅アパートに30分以内に駆けつけてもらうようお願いをしました。
ちょうどその日は、Aさんの自宅アパート付近は、ゲリラ豪雨に見舞われており、タクシーがAさんの自宅アパートに着いたときは、雷が鳴り猛烈な雨になっていました。
13時30分頃にAさんの自宅アパートに着き、豪雨の中、鍵屋さんが到着するまでの間、何度もAさんの部屋の入口ドアをたたきながら、Aさんの名前を呼びましたが、全く応答がありませんでした。
少しして鍵屋さんが到着し、私の弁護士の身分証と裁判所の後見開始決定書を確認し、また、決定書に記載されているAさんの自宅アパートの住所と今解錠しようとしている部屋が同一の部屋であることも確認して、解錠に取りかかりました。
15分くらいすると、鍵屋さんが、「開きました。」といって、ドアノブを回し、ドアを開けました。
直ぐに、鍵屋さんに料金を支払い、Aさんの自宅アパートの中に、「Aさん、いますか?」と大声で呼びかけながら入りました。
1Kバストイレ付きのアパートですが、入口から入って直ぐの台所、トイレ、お風呂を順番に確認していき、最後に、居室の扉を開けて中を見ました。
居室の中では、布団の上にAさんが仰向けに横たわっており、テレビがつけっぱなしになっていました。Aさんは、何度大声で名前を呼んでも応答せず、それどころか、手も足も1ミリも動きませんでした。
よくドラマなどでは、生死を確認するために脈をとったりしていますが、私には、そんな度胸はなく、1メートルほどの距離から見て、お腹も胸も全く動いていないことから、呼吸をしていないことを確認しただけでした。
私は、確信はなかったものの、Aさんは亡くなっていると思い、110番と119番をして事情を話し、警察官と救急隊員に来てもらうようお願いしました。
15分ほどして、地域担当の警察官が、自転車で、駆けつけました。その後、救急車に乗った救急隊員、鑑識や捜査の警察署員が順次駆けつけ、Aさんの自宅アパートの周りは、やや騒然とした状況になりました。
この後、警察官や救急隊員とのやり取りが2時間ほどあり、16時過ぎに、やっとAさんの自宅アパートを離れることができました。
Aさんは、まだまだお元気で、毎週金曜日に振り込まれるお金を、次の金曜日より前に使い切ってしまうと、事務所や私のスマホに電話をしてきて、申し訳なさそうな声で、「もうお金がなくなってしまいました。少し早いですが、お金を入れてください。」と話していました。
Aさんからの電話は、ひと月に2回から3回はあったので、Aさんの後見は、これからも当分続くものと思っていました。
それだけに、Aさんが亡くなったのは、とても残念な出来事でした。
お弁当屋さんが連絡してくれたおかげで、亡くなって1日くらいでAさんご遺体を見つけてあげられたのが、不幸中の幸いでした。
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