

不動産の売却を検討されている方向けに、不動産を巡る紛争を数多く取り扱ってきた弁護士から、売却時の様々な局面にスポットを当てて、気をつけるべきポイントをアドバイスいたします。
借地権の売却 建物の朽廃と借地契約の終了について
Q
私は、3か月前に父から土地の相続を受け所有している者です。その土地を売ろうと不動産会社に相談をしたところ、旧法(借地法)が適用される土地であると言われました。この土地上の建物(土地の借地人が所有する建物)は、木造で築60年、今は外壁に無数の亀裂が入り、屋根が既にボロボロで雨漏りも激しく、人も長年住んでおらず、中は家財なのかゴミなのかほこりや砂まみれで区別がつかず、外から見ると大きく傾いています。土地の賃貸借契約書をみると存続期間の定めはありませんでしたが、地代が安いこともあって、きちんと地代が支払われています。賃貸借契約を終了させ、建物を壊して更地の状態でこの土地を売りたいのですが、可能でしょうか。
A
1 なぜ未だに旧法?
現在、建物を所有する目的で土地を賃貸する場合、借地借家法が適用されます。借地借家法は、平成4年8月1日以降に新たに賃貸する場合に適用され、それ以前に新たに賃貸された場合には旧法(借地法)が適用されます。
ここで注意が必要なのは、当初の賃貸借契約が平成4年8月1日よりも前に開始され、契約が更新されている場合、借地借家法が適用されるのでなく、なお借地法が適用される点です。
そのため、土地賃貸借契約について、現在でも、借地法が適用される場合が少なからず存在するのです。
2 旧法だと不利になる?
借地法から借地借家法へと改正がなされた背景として、借地法における借地人保護が相当強く、土地の有効活用が妨げられてきた不都合を解消する点が挙げられます。これと同時に、抽象的で解釈に争いの余地を残す用語・概念を使わないように改められました。その一つが「朽廃」であり、借地借家法には「朽廃」の概念は用いられていません。
すなわち、借地法において、借地権に存続期間の定めがなければ、建物が「朽廃」した場合は借地権自体が消滅するものと扱われていましたが、借地借家法においては、「朽廃」の概念が用いられず、「朽廃」の状態にあったとしても、借地権は存続するものと扱われることになりました。
「朽廃」とは、一般に、経年劣化等の自然の推移により、建物が既に建物としての効用を全うすることができない程度に腐朽頽廃し、その社会的効用を失うに至ったことを意味するものと解釈されています。もっとも、具体的にどのような状態となれば建物が「朽廃」したといえるのかが明確でなく、「朽廃」したかどうかをめぐり、しばしば裁判で争われていたのです。このような事態を回避するため、借地借家法においては、「朽廃」の概念自体を用いないこととなり、仮に借地法の「朽廃」に当たる状態になっていたとしても、借地権は消滅しないことと整理されました。
とはいえ、借地権のない状態で売却したい土地所有者としては、「朽廃」になっている可能性のある建物であれば、むしろ借地法が適用された方が、土地賃貸借契約の終了を主張しやすいわけで、ご質問のようなケースであれば、建物が「朽廃」に当たるかを検討していくべきです。
3 ご質問のケースは「朽廃」に当たる?
「朽廃」とは、前記のとおり、経年劣化等の自然の推移により、建物が既に建物としての効用を全うすることができない程度に腐朽頽廃し、その社会的効用を失うに至ったことを意味するものと解釈されています。
ここでのポイントは①自然の推移であること、②社会的効用を失ったことの2点にあると考えられます。
まず、①自然の推移である点については、建物が社会的効用を失った原因が天災等の一時的な事情による場合、自然の推移でないため「朽廃」には当たらないものと解釈されています。意図的に建物を取り壊した場合も同様です。
次に、②社会的効用を失った点については、建物としての利用ができない状態に達していることが必要です。また、通常の修繕を施せば建物の効用を維持できる場合、社会的効用が失われていないものと解釈されます。
ご質問のケースの建物は、築60年の木造の建物であり、全体的に経年による劣化が進んでいるほか、居住者もいないまま長期間放置され、いわゆる保守管理も十分でない状況です。
加えて、外壁に無数の亀裂が入っていて、建物も傾き、雨漏れも激しい状況なので、基礎、土台、柱及び屋根といった建物の構造部分にほぼ全面的な補修を行わなければ使用できないものと考えられます。場合によっては、その補修に新築同様の費用が必要である可能性も十分にあります。
そうしますと、ご質問のケースの建物は、もはや建物としての社会的、経済的効用を失うに至り、「朽廃」しているものと考えられます。
そのため、土地の所有者としては、賃貸借契約の終了を主張し、建物を取り壊した上で土地の返還を受け、更地の状態で売却することが可能です。
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長町 真一Shinichi Nagamachi弁護士
弁護士法人 御宿・長町法律事務所 http://www.mnlaw.jp/index.php
平成16年弁護士登録 不動産をはじめ、金融・IT関連等多種多様な業種の顧問会社からの相談、訴訟案件を多数受任。クライアントのニーズに対し、早期解決、利益最大化を目指し、税務・会計にも配慮した解決方法を提案。経営者目線での合理的なアドバイスも行う。






