

相続の税務や贈与について、遺産を分割する場合に注意すべきこと、法人税など他の税法との関連、税務署の調査官の考え方などにも言及した実務アドバイスです。
換価遺言と譲渡所得
令和7年の確定申告も、やっとのことで落ち着いたので、このコラムに向かい合っています。
普段は、主に相続税の担当をしているのですが、確定申告時期には、贈与税と譲渡所得関係の申告が加わります。
特に今期の確定申告は換価遺言(遺贈)による譲渡所得の申告が必要な方がたくさんおられました。
「換価遺言」とは…。
相続財産を換価、つまり売却して金銭にし、それを分ける(遺贈する)という遺言です。
遺言で「遺言執行者」(金融機関や弁護士など)を定めて、遺産を全部いったん金銭に変えて相続させる又は遺贈するというものです。未払金や債務(病院や施設の費用など)、遺言執行関係の報酬や費用の負担についても、換価された相続財産で精算することが定められていることも多いようです。
「相続」なのに、確定申告?
相続財産を分ける際に現金化するための譲渡があった場合には、確定申告が必要になるケースが多いからです。
譲渡所得課税は、そもそも、資産の値上がりにより、その資産の所有者に帰属する値上がり益を所得として課税するものです。その所有者の手を離れてほかの人の所有になることをもってその値上がり益を精算します。
一方、相続などの場合は、無償で譲渡するものです。そのため、旧所有者(被相続人等)に、客観的な値上がり益(増加益)が顕在化しません。相続などの時点では、課税が繰り延べられることになり、所得税は課税されないのです。もちろん、そのまま所有を続ければ、所得税は課税されません。新所有者(相続人等)が、その後売却するなどして値上がり益(所得)が顕在化した時点で、はじめて譲渡所得が課税されることになります。
相続財産が、換価され金銭化された時こそが、値上がり益が顕在化したといえる時点なのです。
「値上がり益」が見込まれるものとは?
主に、不動産や有価証券です。話題の金・地金などもそうです。値動きのあるもののことです。
※預金は単に払い出しのため利益はないので、確定申告は不要です。ただし、外貨建ての場合は為替差益について雑所得が発生していて申告する必要があるケースが散見されますので注意が必要です。
「譲渡所得」の申告
課税が繰り延べられている、つまりは旧所有者の取得価額や取得時期をそのまま引き継ぐことになります。大昔に先代(先々代?)が取得していれば、利益が出でいるのは当たり前です。
「私は、現金をもらっただけで、自分で売ったわけではない。遺言執行者が手続きをして私の名義になったことは一度もない。」という見方もあると思います。
しかしながら、税法では「実質所得者課税の原則」に従って、その「資産から生ずる収益」、この場合は、売却代金を遺産として受け取っているという事実から、譲渡所得の納税義務者になるとしています。
例えば、相続財産を換価して、その後、1/4の財産を受け取った人は、換価した不動産などに値上がり益が生じていれば、その不動産の1/4の持分を譲渡したとして所得税の申告をする必要があるということです。
というわけで、有価証券や金・地金の価格上昇については皆様もご存知の通りですが、換価遺言があった場合は、譲渡所得が必要な割合がぐっと増えた印象です。
「税金がかかる」ということに、拒否反応のある方もおられますが、利益があったということなので、喜ぶべきことととらえてみてはいかがでしょうか。
※いつも申し上げていることですが、相続財産は、課税の繰り延べがされていますので、譲渡所得経費としての取得費は、先代からの取得費を引き継いでいます。もちろん、遺言執行での換価による譲渡所得の計算も同じです。取得費などの資料は大切に保管しておいてください。
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