

相続の法律制度(民法と相続税法の相続財産を巡る取扱の違い等)について、弁護士が解説したアドバイスです。
専業主婦名義の預金は、誰のもの? 専業主婦名義の預金の帰属についての裁判例
先日、長女夫婦や孫といっしょに、大きな公園に遊びに行きました。
4月上旬だったので、ちょうど桜も満開で、花見とピクニックを兼ねたような楽しい時間でした。
年甲斐もなく孫と鬼ごっこをしたのですが、青空を見上げながら、ふと、「この空にミサイルが飛び交っている国もあるんだよな~。」と思い、青空の下、桜を見ながら鬼ごっこができるなんて、日本はなんと平和なのだろうと、平和のありがたさを実感しました。
さて、今回は、少し興味を覚えた裁判例がありましたので、ご紹介したいと思います。
この裁判例は、東京高等裁判所の令和5年8月3日の判決です。
事案は、次のようなものです。
Aは、Bと結婚してX1とX2の2人の子供を作りましたが、Bと離婚し、その後、Yと再婚しました。
AとYの結婚生活は30年近く続きましたが、Aは、平成31年に約4カ月の入院生活の後に病死しました。
Aの相続人は、夫であるYと前夫との間の子供X1及びX2の3人であり、法定相続分は、Yが2分の1、X1とX2がそれぞれ4分の1でした。
Yは、Aの入院中に、A名義の3つの預金口座から合計3900万円を引き出しましたが、特にAの了解は得ていませんでした。
そこで、X1とX2は、Yに対して、不当利得返還請求訴訟を提起しました。X1とX2の主張は、上記3900万円の引出によりYは法律上の原因なくして3900万円を利得し、Aは同額を損失したので、Aは死亡時にYに対して3900万円の不当利得返還請求権を有していたが、X1とX2は、Aの死亡により、この3900万円の不当利得返還請求権の4分の1ずつを相続したので、Yに対してその返還を求めるというものでした。
この裁判の主要な争点は、A名義の3つの預金は誰のものかという点でした。
「預金は、預金の名義人のものに決まっているのでは、」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、裁判所は、ある人の名義になっている預金を、他の人のものと認定することがあります。
たとえば、お父さんが、子供のために、子供の名義で預金口座を作り、その口座に子供が成人するまで毎年100万円ずつ預金した場合、この預金の名義は子供ですが、実際は、お父さんの預金と認定されることがよくあります。
①お父さんが預金口座を開設した、②預金の原資はお父さんが出している、③通帳や印鑑の管理はお父さんがしているなどの事実があれば、お父さんの預金と見るのが、常識に合致していると言えるでしょう。
①②③の事実のすべてが、お父さんの預金という認定を裏付けています。
では、この事件では、どうだったのでしょうか。
まず、①の預金の開設者ですが、3つの預金のほとんどは定期預金であり、それらが、いつ、どのような経緯で預けられたかは不明でした。
次に、②の預金の原資ですが、YとAは同居し、Yは給与や独立後の事業収入を全てAに渡しており、Aがこれらの収入を管理して生活費を賄っていました。しかし、Aは専業主婦で収入はなかったので、預金の原資は、ほぼすべてYの収入でした。
そして、③の預金の管理ですが、Aの入院前は、預金の管理は、Aがしていました。
つまり、Aの預金という認定に有利に働くのは、③だけであり、①は中立(というか、定期預金は、預金の原資を出した人のものと考えられることが多いので、どちらかというとYの預金という認定に有利)、②はYの預金という認定に有利な事情だったので、とても微妙な事案でした。
このほか、この預金が、Yの事業資金に使われたりしたことはなく(これは、Aの預金という認定に有利)、また、Yが収入から生活費を除いた残りをAに全て贈与等をする意思であったことまでは認められませんでした(これは、Yの預金という認定に有利)が、どの事実も、決定打にはなりませんでした。
結局、この判決では、この預金をYのものと認定し、X1とX2の請求を棄却しました(ちなみに、第1審の判決は、この預金をAのものと認定し、X1とX2の請求を認めています。)が、どちらに転んでも、なんとなくすっきりせず、なかなか判断に迷う事案だったと思います。
まず、この事案で、預金を名義人であるAのものと考えると、夫が給料や収入をすべて専業主婦の奥さん渡しており、奥さんがお金を管理しているような夫婦で、奥さんが給料や収入の残りを全て自分名義の預金に預けた場合、その預金は、全て奥さんのもの認定されることになりかねず、釈然としないものが残ります。
逆に、この事案で、預金をYのものと考えると、およそ専業主婦の奥さん名義の預金は、全て夫のものと認定されることになりかねず、やはり釈然としないものが残ります。
この判決に対しては、上告がされているようなので、最高裁の判決を目にすることができたならば、またご紹介したいと思います。
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