道路位置指定の取消し
【Q】
私は、分譲住宅の敷地となっていた数筆の土地と各土地から公道へ通じる位置指定道路を含む一帯の土地(本件土地)を所有しています。
現在、本件土地は空き地となっており、位置指定道路も道路としての使用実態はありません。本件土地を売却するため、道路位置指定を取消したいと考えています。
道路位置指定を取消すことはできるでしょうか。
【回答】
道路位置指定を受けた後、土地の利用状況が変化し、道路位置指定の必要性がなくなった場合、特定行政庁に対して、道路位置指定の取消しを求めることができます。
ただし、道路位置指定の取消しによって、その道路に接する敷地が接道義務違反となる場合には、指定の取消申請は原則認められないと考えられます(建築基準法45条1項)。
1 位置指定道路
(1)道路位置指定
位置指定道路とは、幅員4m以上の私道であり、一定基準に適合するものについて、建築基準法42条1項5号に基づき、特定行政庁から位置の指定を受けた私道をいいます。
位置指定道路は、建築基準法上の道路として扱われ、位置指定道路に2メートル以上接する土地は接道義務を満たし、同土地上に建物を建築することができるため、大きな区画を宅地分譲する際に、各宅地の接道義務を満たすために位置指定道路を設けることが行われています。
位置指定道路は、指定を受けた後も私道であり、原則、指定部分所有者が道路の管理義務を負いますが、法律上の道路として扱われるため、指定部分に建築物を建築することはできない等の制限を受けます。
道路位置指定を受けるためには、土地の所有者等が、特定行政庁に対して道路位置指定の申請を行い、特定行政庁が要件適合性について判断の上で指定が行われます。
申請に際しては、指定部分の土地所有者や沿接土地の所有者等の一定の権利者の承諾書の添付が求められます。
(2)道路位置指定の取消し
道路位置指定を受けた後、土地の利用状況が変化し、道路位置指定の必要性がなくなった場合、特定行政庁に対して、位置指定道路の指定取消しを求めることができます。
ただし、道路位置指定の取消しによって、その道路に接する敷地が接道義務の規定に抵触することとなる場合、特定行政庁は、その私道の変更又は廃止を禁止し又は制限することができます(建築基準法45条1項)。
道路位置指定の取消しによって、隣接土地が接道義務違反となる場合には、指定の取消しは原則認められないと考えられます。
一方、道路位置指定の取消しは、指定部分の土地に対する建築制限等の権利制限の解除であり、特定行政庁は法令上の規定によらずに、指定の取消しを制限すべきではないと考えられています。
下記裁判例では、道路位置指定の取消しによって、隣接土地が接道義務違反とならない事案において、特定行政庁が指定の取消しを認めない処分をしたことの適否が争われています。
2 裁判例
(1)東京高裁平成28年11月30日判決では、かつて宅地分譲された際に位置指定道路が設けられましたが、その後宅地上の建物が解体撤去され、宅地及び位置指定道路が一体の土地として売却され、購入者は一体の土地の中に位置指定道路が含まれるとの認識がないまま、位置指定道路を含む土地全体を敷地として建築確認を得てマンションを建築し、40年以上道路としての使用実態がなかった事案において、土地所有者(原告)による道路位置指定の取消申請に対して、特定行政庁は、位置指定道路の隅切り部分の隣接土地所有者の承諾がないことを理由として、道路位置指定の取消申請を却下する処分をしたため、原告は同却下処分を争う訴訟を提起しました。
(2)これについて東京高裁は、「昭和46年に位置指定道路の「道」は壊されてマンションの敷地に取り込まれ、「道」があった期間の2倍以上の期間にわたって「道」がない状態が継続し、公法上も私法上も何ら紛争がない状態が続いてきた。
そうすると、位置指定道路は、「道」が壊されて無くなった時点において道路位置指定をする必要性が消滅し、接道義務を満たさない土地が発生するなどのトラブルが生じない場合には、法42条の道路には該当しないものとみるのが自然である。
このような場合、特定行政庁は、法42条の「これから築造しようとする道」が無くなったものとして、申請がなくても道路位置指定の取消処分をすべきであり、道路敷地所有者の承諾は不要である。」として、道路位置指定の取消しを義務付ける判断をしました。
同裁判例では、位置指定道路の一部分を所有する隣接土地所有者が、位置指定道路の実態が長期間なく、原告が指定の取消申請をする予定であることを知りながら、隣接土地上に位置指定道路を前提とした規制緩和を受けた建物を建築するために、原告の指定取消しに承諾しなかったという事情も判断に影響していると考えられます。
3 まとめ
本件設例の様に、道路位置指定を受けながら、その後、道路としての使用実態がなくなり長期間経過すると、位置指定道路が含まれるとの認識がないまま土地が取引されるケースも考えられます。
取引される土地の中に位置指定道路などの「道」が存在しているかを確認するには、行政の各部署にある資料や現況の調査を行う必要があります。
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