30坪以内の家を建てるために考慮したい15のポイント【前編】
近年は土地価格や建築費が上昇し、注文住宅では予算の検討がこれまで以上に重要になっています。高度成長期には大きな家に住むことが豊かさの象徴のひとつとされていましたが、実際には広さだけで暮らしの豊かさが決まるわけではありません。
物を置き、持ち物が増え、インテリアを整えても、思ったほど心地よい空間にならないこともあります。これからは家を大きくすることだけを目指すのではなく、限られた面積の中で必要なものを選び、どんな暮らしをしたいのかを考えることが大切ではないでしょうか。設計の工夫によって、建築コストを抑えながら心地よい住まいを実現することもできます。
今回は「30坪以内の家を建てる際に考慮したい15のポイント」のうち、前編として7つのポイントを紹介します。
1. 引き算のデザインを考える
30坪以内の家を建てることは、単に小さな家をつくるということではありません。限られた面積の中で、暮らしに必要なものを選び、優先順位をつけていくことです。
これは建築コストを抑えることにもつながり、建築工事費全体の負担を軽減できます。小さな家をつくるには、設備や空間の使い方を見極める設計者の力量も問われます。小さいからこそ、室内のあちこちに心地よい居場所をつくる工夫が大切です。
2. あちこちに居場所を設ける
小さな家では床面積が限られるため、デザインや色彩、素材などを工夫しても、単純に床面積を広げることはできません。
そこで、食べる場所と寝る場所を分けて生活を豊かにする「食寝分離」の考え方を、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。畳コーナーなど、ひとつの空間に用途を限定しない居場所を設ければ、使い方を変えながら暮らすことができます。畳の上に洋寝具を置くなど、従来の使い方にとらわれず、小さな家だからこそできる工夫を考えてみましょう。
3. 敷地目一杯に建てない
一般に、家族4人で暮らすための広さは20坪程度がひとつの目安になります。敷地が広いからといって建物を大きくしても、敷地にゆとりがなければ、アウトドアリビングなど外部空間の楽しみは生まれにくくなります。
外部につながるデッキは、内と外をつなぐ中間的な領域として、空間に広がりや開放感を与えてくれます。バーベキューコーナーや家庭菜園など、暮らしを楽しむ場所にもなり、住まいにもうひとつの居場所をつくってくれます。
4. 対角線で活かす
対角線を活用することは、部屋を広く感じさせる基本的な手法です。正方形の部屋であれば、対角線は一辺より長くなるため、視線が抜ける方向をつくることで、実際の面積以上に広く感じられます。
周囲の環境によっては、外部からの視線を気にせず、窓の向こうへ視線が抜けるように計画することもできます。間取りを考える際には、リビングやダイニング、和室、キッチンなどの配置を工夫し、対角線方向に視線がつながるプランを検討してみましょう。開放感が生まれ、広さを感じられる空間につながります。
5. 建具を上手に使う
開口部の扉をドアではなく引き戸にするなど、建具の選び方も空間の使いやすさに影響します。引き戸は開閉時に扉のためのスペースを必要としないため、限られた面積を有効に使う工夫のひとつです。
また、敷地が小さい場合は、隣家からの視線も気になります。大きな開口部を設けると周囲からの視線が気になることがありますが、室内側にガラリ戸を設けたり、格子などをデザインに取り入れたりすることで、視線を和らげながら光を取り込む工夫も考えられます。
6. 素材の質感を大事にする
30坪以内の小さな家は、空間全体のボリュームが小さく、壁との距離も近くなります。そのため、素材の質感が空間の印象を左右する重要な要素になります。
素材の質感は、光の反射具合などによっても変わります。建築の質を生み出す視点として、素材選びを大切にしたいところです。具体的には、ビニールクロスやペンキ仕上げだけでなく、左官仕上げなども選択肢になります。こうした素材は空間に奥行きや表情を与えてくれます。
ただし、家族が集まるリビングなど、すべての場所に同じ仕上げを使う必要はありません。場所ごとの役割や使い方に応じて、素材を選んでみましょう。
7. バルコニーはインナーバルコニーで考えてみる
バルコニーは建物の壁より外側に設けられ、建築面積に算入されない範囲があるため、屋外物干し場などとして利用されてきました。
一方で、バルコニーが建物の外観に大きく影響し、街並みの印象を左右することもあります。注文住宅であれば、外に張り出したバルコニーだけでなく、インナーバルコニーも選択肢になります。
インナーバルコニーは、サンルームや物干し場、子どもの遊び場など、多目的に使うことができます。近年は共働き世帯も多く、天候に左右されずに洗濯物を干せる場所としても検討できます。花粉やPM2.5などへの対策を考える際にも、使い方を検討する価値があります。
外部空間をどのように取り入れるかは、住まい方を左右する設計上のポイントです。
8. 後編へ
今回は、30坪以内の家を建てる際に考慮したい15のポイントのうち、前編として7項目を紹介しました。
次回の後編では、天井の照明をできるだけつけない、小屋裏を利用する、階段をコンパクトにする、コンパクトなキッチンにする、見切り材を使わない、建具を天井までの高さをそろえる、屋上も利用する、といった工夫を取り上げます。
家の広さだけを豊かさの基準にするのではなく、設計の工夫で心地よい居場所をつくる。その視点を、これからの住まいづくりに活かしていただければと思います。
この記事を読んだあなたにおすすめの記事
佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。








