

家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
これからの省エネ住宅を知って、暮らしを豊かにする
世界的なエネルギー情勢の変化や燃料価格の高騰によって、私たちの暮らしに欠かせない電気やガスなどのエネルギーを取り巻く環境も変わってきました。
これから家を建てるのであれば、単に「どんな設備を入れるか」だけではなく、住宅そのもののエネルギー性能をどのように高め、どのように使うのかを考えることが重要になってきます。
省エネ住宅というと、「エネルギーを我慢して使わない家」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、本来の省エネ住宅とは、断熱性能や設備の効率を高めることで、快適な暮らしを維持しながらエネルギー消費を抑える住宅です。
オール電化からZEHへ
住宅のエネルギーについて考えると、2000年代から2010年代にかけて普及したオール電化住宅が一つの転換点だったといえます。
IHクッキングヒーターやエコキュートなどが普及し、「これからはオール電化の時代」と期待された時期もありました。
しかし、2011年の東日本大震災・福島第一原発事故をきっかけに、「住宅で使うエネルギーをすべて電気にすることが本当に良いのか」という議論も生まれました。
その後、太陽光発電や蓄電池、高効率な給湯設備などを組み合わせ、エネルギーを減らすだけでなく、自らつくり、効率よく使うという考え方が広がっていきます。
その代表的な考え方がZEHです。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、住宅の断熱性能や設備の省エネ性能を高めてエネルギー消費量を削減したうえで、太陽光発電などによってエネルギーを創り、住宅全体の年間のエネルギー収支をおおむねゼロ以下にすることを目指した住宅です。
2027年から始まる「GX ZEH」
そして、これからの省エネ住宅を考えるうえで知っておきたいのがGX ZEHです。
ZEHについては、より高い省エネ性能や再生可能エネルギーの自家消費を促すため、2025年に新しい定義が公表され、2027年4月以降の適用が予定されています。
GX ZEHでは、これまでのZEHよりも高い性能が求められます。
例えば、断熱性能については断熱等性能等級6以上、再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量については35%以上の削減が基準となります。また、戸建住宅では高度なエネルギーマネジメントや蓄電池の導入も新しい要件として位置づけられています。
現在の「みらいエコ住宅2026事業」などで使われている「GX志向型住宅」も、高い省エネ性能を持つ住宅を対象とした制度ですが、これはGX ZEHとは別の制度上の名称です。2026年の補助制度では、GX志向型住宅に対して断熱等性能等級6以上、一次エネルギー消費量35%以上削減などの要件が設けられています。
では、これからの省エネ住宅では、具体的に何を考えていけばよいのでしょうか。
「断熱・省エネ・創エネ」の3つから考える
これからの住宅性能を考えるうえでは、「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つに分けて考えると分かりやすいでしょう。
断熱性能を高める
まず重要なのが、住宅そのものの断熱性能です。
断熱等性能等級は、現在では等級7まで設けられており、等級5がZEHの外皮基準、等級6はそれを上回る断熱性能となっています。
例えば東京などの地域区分6では、断熱等性能等級6のUA値は0.46W/㎡K以下が基準です。
UA値とは、屋根・外壁・床・窓などの住宅の外皮から、どれだけ熱が逃げやすいかを表す数値で、数値が小さいほど断熱性能が高いことを示します。
つまり、壁だけに断熱材を厚く入れればよいわけではありません。屋根、外壁、床、基礎、窓など、建物全体の外皮性能をバランスよく高めることが重要です。
省エネ性能を高める
次に、住宅で使うエネルギーそのものを減らします。
冷暖房や給湯だけでなく、換気、冷蔵庫、照明など、日常的に長時間使う設備を効率の良いものにすることが重要です。
さらにHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を活用すれば、住宅でどれだけ電気を使っているのかを見える化し、設備の制御にも活用できます。
これからは「高性能な設備を入れる」だけでなく、住宅全体でエネルギーを上手にコントロールするという考え方が重要になってくるでしょう。
創エネ能力を高める
そして最後が「創エネ」です。
使うエネルギーを減らすだけでは、エネルギー収支をゼロにすることはできません。そこで太陽光発電などによって、自らエネルギーをつくることが重要になります。
さらに蓄電池を導入すれば、昼間に太陽光発電で余った電気を蓄え、夜間や停電時に利用することもできます。電気自動車とV2H(Vehicle to Home)を組み合わせれば、車のバッテリーを家庭の電源として活用することも可能です。
これからの省エネ住宅とは
省エネ住宅は、単に「電気を使わない家」ではありません。
熱を逃がさない。
使うエネルギーを減らす。
必要なエネルギーを自らつくる。
そして、つくったエネルギーを上手に使う。
これらを組み合わせることで、住宅はより少ないエネルギーで快適に暮らせる場所になっていきます。
これから家を建てる方は、ZEHやGX ZEHという言葉だけを追いかけるのではなく、「この家で、どのようにエネルギーを使い、どのように快適に暮らしていくのか」という視点から住宅の性能を考えてみてはいかがでしょうか。
省エネ性能を高めることは、環境のためだけではありません。
快適な暮らしを、より少ないエネルギーで実現すること。
それも、これからの住宅に求められる大切な価値の一つだと思います。
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佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。






