

家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
断熱等級って何ですか?
断熱等級は4以上が最低基準です
断熱等級の正式名称は「断熱等性能等級」といって、住まいの断熱性能がどのくらいかを示します。等級には1~7の段階があり、数字が大きいほど断熱性能が高いことを示しています。これは、気候変動問題への解決に向けての取り組みのひとつです。先の断熱性能を上げることで、エネルギー消費に伴う排出する炭素量を減らし、将来的な脱炭素化をめざしている施策です。 その一段階として今年(2025年)の4月より新築住宅はすべて、断熱等級は「4以上」が最低基準と義務づけられました。
さらに 2030年には「等級5」が義務づけられる予定になっています。ちなみに等級5は簡単に言うと、「年間の一次エネルギー消費量※の収支をゼロにすること」を目指した住宅です。具体的には住まいの断熱性能の向上と、高効率な設備を採り入れて大幅な省エネルギーを実現し、さらには再生可能エネルギー等の導入も行います。
断熱等級を上げることで省エネはもちろん、室内での温度差がなくなり、快適な室内環境にもつながります。健康的な暮らしの実現にむけて、断熱をどのように取り組んでいけばよいのかを考えていきましょう。
※一次エネルギー消費量とは
冷暖房機や家電、照明など、住宅で使用する各設備機器が消費するエネルギーの量を熱量に変換した合計値のことです。
断熱等級は1~7まで
断熱等級(断熱等性能等級)とは2000年に施行された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)で定められた住宅の断熱性能を示す指標です。断熱等級は現在1~7まであり、等級7が最高等級となります。
断熱等級の満たすべき数値は2つ
断熱等級は日本全国を8つの区域に分け、それぞれに満たすべき値の基準値が定められています。UA値(ユーエー)とηAC値(イーターエーシー)という2つの数値で決定されます。
UA値とは室内、室外間の熱の通りやすさを示す値で、ηAC値は冷房期にどのくらい太陽の日射熱が住宅内に入るかを示す値です。
いずれも数値が小さいほど断熱性能が高くなります。参考に関東地域と北海道地域の数値をあげておきます。
| 等級 | 項目 | 関東地域 | 北海道地域 |
| 等級5 | UA値 | 0.6 | 0.4 |
| ηAC値 | 2.8 | - | |
| 等級4 | UA値 | 0.87 | 0.46 |
| ηAC値 | 2.8 | - |
断熱等級の主な特徴
断熱等級はそれぞれに到達すべき性能数値が定められていることを先の項目でお伝えしました。それは住まいの床、壁、開口部や天井(屋根)などで使用される建材の性能数値を踏まえてどの断熱等級に該当するかが決まってきます。
断熱等級4…
これまで基準が定められていなかった、窓や玄関ドアといった開口部についても断熱が求められるようになり、住宅建築においての最低基準となった等級です。
断熱等級5…
断熱等級を4から5に上げた時に、約20%省エネにつながるレベルとされています。
断熱等級6…
北海道などの地域で冬の室温がおおむね15度、それ以外の地域でおおむね13度を下回らない基準です。断熱等級を4から6に上げたときに約30%の省エネにつながるレベルとされています。
断熱等級7…
北海道などの地域で冬の室温がおおむね16度。それ以外の地域でおおむね15度を下回らないことが求められ、断熱等級よりさらに断熱性を高める工夫が必要となります。断熱等級を4から7に上げたときに約40%の省エネにつながるレベルとされています。
断熱等級を高くするメリットとデメリット
<メリット>
・快適な室温を保ちやすい
・ヒートショックリスクの低減
・光熱費が抑えられる。
家の断熱性能を高めると家の中の温度変化が小さくなるので、快適で健康的な室温を維持することができます。そのためヒートショックのリスクやストレスの軽減にもつながり、光熱費が抑えられることがメリットと言えます。
<デメリット>
・建築工事費が高くなる
・窓の大きさや開閉方法を考慮しながら通風計画もあわせて検討しておく必要がある。
断熱性を高くするためには高性能な断熱材を使う、ガラスを複層ガラスやトリプルガラスといった対応が求められます。これらの対応で建築コストが上がってしまいます。家の広さや建てる場所によって違うので一概にはいえませんが、仮に断熱等級4から等級5に上げるには、おおよそ30~50万円位高くなることが予想されます。
佐川からのアドバイス
一般に日本の住まいは南側に大きな開口を設けて、北側は小さな窓が多く並びます。南側にはリビングやダイニング、あるいは和室など家族が集まるパブリックスペースが配置されるからです。日当りも大切ですが、その分熱もあたりますので、その熱の対処の方法も考えておく必要があります。
断熱性能を考える際、断熱材の厚さや品質に注目しやすいですが、空気の流出入は開口部によって変わります。あわせて熱の対処も十分考えておきましょう。室内に熱が留まらず、気持ちの良い風が抜けることを意識した風の通り道をつくってあげることで、湿気や結露を防ぐことができます。
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佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。






