

家づくりの「心」を「かたち」に、具体例を交え心の家づくりを解説した一級建築士のアドバイスです。
「ここに付ければ良かった…」を防ぐコンセント計画の考え方
住宅が完成し、新しい生活が始まると、
「ここにコンセントを付けておけば良かった……。」
そんな後悔の声を耳にすることがあります。
家づくりでは間取りやデザイン、住宅設備に目が向きがちですが、毎日の暮らしやすさを左右するのは、実はコンセントの位置や数かもしれません。
コンセントは完成してしまうと簡単に増やすことができません。そのため計画段階でしっかり考えておくことが大切です。
しかし、コンセント計画が難しい理由は、「今の暮らしだけを基準に考えてしまうこと」にあります。
暮らし方は時代とともに変化する
住宅設備や家電は年々進化しています。
以前は掃除機といえばコード式が一般的で、階段や廊下にも掃除機用のコンセントが必要でした。しかし現在ではコードレス掃除機が普及し、以前ほどコンセントを意識しなくても掃除ができるようになっています。
一方で、新たに必要になったものもあります。
スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなど、一人が複数の電子機器を所有する時代になりました。さらに近年では、コロナ禍をきっかけに在宅ワークが普及し、ダイニングやリビングで仕事をする家庭も珍しくありません。
つまり、コンセントを必要とする場所そのものが、以前とは大きく変わってきているのです。
住宅は何十年も住み続けるものです。
現在の生活だけで判断するのではなく、これから先のライフスタイルの変化まで考えながら計画することが、後悔しない家づくりにつながります。
「どこで使うか」ではなく「どう暮らすか」を考える
コンセント計画では、「家電をどこで使うか」という視点だけで考えがちです。
しかし建築家としては、それよりも家族がどのような暮らしを送るのかを想像することが重要だと考えています。
例えばダイニングでは、食事をするだけでなく、お子さんが宿題をしたり、ご夫婦がノートパソコンを開いて仕事をしたりすることもあるでしょう。
リビングではスマートフォンやタブレットを充電しながらくつろぐこともあります。
こうした日常の風景を具体的に思い描くことで、本当に必要なコンセントの位置が少しずつ見えてきます。
暮らしを具体的にイメージしてみる
コンセントの位置を決める際には、図面だけを見て考えるのではなく、家具や家電を配置した状態までイメージしてみることが大切です。
例えばキッチンでは、冷蔵庫や電子レンジだけでなく、炊飯器やコーヒーメーカー、電気ケトルなど、日常的に使用する家電が数多くあります。最近では調理家電も充実しており、ライフスタイルによって必要なコンセントの数は大きく変わります。
洗面室でも同様です。ドライヤーや電動歯ブラシ、シェーバー、美容家電などを使う機会は年々増えています。将来、家族構成が変わることで使用する家電が増えることも考えられるため、少し余裕を持った計画をしておくと安心です。
リビングやダイニングでは、スマートフォンやタブレットの充電だけでなく、パソコンで仕事をしたり、お子さんが宿題をしたりと、多目的に使われる空間になっています。また、ロボット掃除機を使用する場合は充電ステーションの位置もあらかじめ考えておきたいポイントです。
さらに見落としがちなのが、Wi-Fiルーターの設置場所です。インターネットが生活に欠かせない今、住まい全体に電波が届きやすい位置へ設置することが大切です。
家具の配置や配線計画も考慮しながら、あらかじめルーター用のコンセントを計画しておくことで、見た目もすっきりとした空間を保つことができます。
寝室ではベッドの位置を想定し、スマートフォンの充電や照明、加湿器などの使用も考慮しておくと、住み始めてからの満足度が大きく変わります。
こうした一つひとつの積み重ねが、「使いやすい家」につながっていくのです。
コンセントは「家具」とセットで考える
コンセントの位置は、家具の配置によって使いやすさが大きく変わります。
せっかく設けたコンセントが家具の裏に隠れてしまったり、テレビボードや食器棚の位置と合わなかったりすると、延長コードで対応せざるを得なくなります。
延長コードは見た目が雑然とするだけでなく、掃除のしにくさや安全面にも影響します。
だからこそ、コンセントだけを考えるのではなく、「家具をどこに置くのか」「その場所で何をするのか」まで含めて計画することが重要なのです。
建築家が考えるコンセント計画
建築家はコンセントの数を増やすことを目的に設計しているわけではありません。
大切なのは、その家でどのような暮らしが営まれるのかを想像することです。
朝起きて身支度をし、朝食をつくり、仕事や学校へ出かける。帰宅後は食事をして、家族と過ごし、一日の終わりを迎える。
そんな「朝・昼・夜」の暮らしを思い浮かべながら図面を見ると、自然と必要なコンセントの位置が見えてきます。
住まいは完成した瞬間がゴールではありません。
その家で何十年と暮らしていく時間こそが、本当の住まいづくりです。
だからこそ、今だけではなく、数年後、十年後の暮らしまで想像しながら計画することが、後悔しない家づくりにつながるのではないでしょうか。
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佐川 旭Akira Sagawa一級建築士
株式会社 佐川旭建築研究所 http://www.ie-o-tateru.com/
「時がつくるデザイン」を基本に据え、「つたえる」「つなぐ」をテーマに個人住宅や公共建築等の設計を手がける。また、講演や執筆などでも活躍中。著書に『間取りの教科書』(PHP研究所)他。






