

賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
持分2分の1超なら、単独で契約締結できる?共有不動産の賃貸借契約
現在、訴訟事件や調停事件の期日は、ほとんどWebで行われていますが、この裁判の電子化の流れはさらに進み、今年の5月から、弁護士が裁判所に提出する書類は、原則として電子データ化してネット経由で提出することになりました。これは、弁護士の場合は義務であり、「私は、ネットが苦手なので、紙で提出しまーす。」というのは、許されません。
Webでの裁判期日は、teamsというマイクロソフトのアプリを使って行われていますが、電子データのネット経由での提出は、teamsとは別に裁判所側で作ったWebサイトにアクセスして行います。
この裁判所で作ったWebサイトの操作が簡単ではないことや事務所内で電子データのネット経由での提出や保管のルールを作るために、先日事務所の弁護士と職員全員で、ミーティングを開きました。
このミーティングでは、事前に解決しておくべきいろいろな課題が見つかり、なかなか大変なことが分かりました。
5月になって、電子データのネット経由での提出が始まったら、大きなトラブルなくスムーズに進めることができるのか、少し不安です。
さて、今回は、共有不動産の賃貸借契約のお話です。
先日、こんな相談がありました。
Aさんのお父さんが亡くなり、Aさんのお父さんが所有していた4階建のビルが遺産として残りました。相続人は、Aさん、Aさんのお母さん、Aさんの妹Bの3人です。
遺産分割の結果、ビル全体を相続人3人が法定相続分で共有することになったのですが、2階にはお母さん、3階にはAさん、4階にはBが、それぞれ居住しており、1階の店舗だけが、空室のまま残りました。
1階は、もともとは、Aさんのお父さんが、小さな時計店を営んでいたのですが、お父さんが高齢のために店舗を閉めた後は、数年間そのままとなっていたのです。
遺産分割が終わった後、Aさんとお母さんは、収入を得るために、空室となっている1階を第三者に賃貸しようと考えましたが、Bは、これに反対しています。
このため、困ってしまったAは、私の事務所に相談に来たのです。
このビルは、現在、Aさんのお母さんが2分の1、AさんとBがそれぞれ4分の1の持分を持つ共有建物ですが、このような場合、4分の1の持分を持つBが賛成しなければ、賃貸することはできないのでしょうか。
共有物の場合、共有物を保存する行為は各共有者が単独でできますが、共有物の管理は共有持分の過半数の賛成がなければできず、また、共有物の変更は、共有者全員の賛成がなければできません。
保存する行為というのは、共有物の現状を維持する行為であり、共有物を物理的に修繕したり、共有物を不法に占拠する者があれば、この者を排除したりすることが、例としてあげられます。
変更というのは、共有物の現状を著しく変えてしまうことをいい、物理的に農地を宅地に変更したり、法律的に譲渡したり、担保権を設定したりすることが例としてあげられます。
管理というのは、上記の保存と変更の中間であり、共有物を利用・改良することであり、リフォーム(修繕ではなく、価値を上げるようなもの)などが例としてあげられます。
共有建物を共有者以外の第三者に賃貸する行為は、この中のどれに当たるのでしょうか。
これは、賃貸借契約の内容によって異なります。
まず、賃貸借契約が、借地借家法の普通建物賃貸借にあたるものであれば、変更に当たります。
借地借家法の普通建物賃貸借にあたる場合、例え賃貸借契約期間が3年以内であっても、賃貸人の更新拒絶に正当事由がなければ賃貸借契約は終了せず、賃借人は賃貸建物を継続して使用し続けることができますので、賃貸人としては、一旦普通建物賃貸借として建物を貸してしまうと、長期間返還を受けられません。
従って、共有建物について、普通建物賃貸借契約を締結する行為は、共有物の現状を著しく変えてしまうものとして変更に当たることになります。
また、賃貸借契約が、借地借家法の定期建物賃貸借にあたる場合であっても、その期間が3年を超えるものは、やはり変更に当たります。これは、民法で、建物を処分(変更)する権限のない者が建物を賃貸するこることができる期間を、3年と定めているからです。
もっとも、例外的ではありますが、1階がもととも賃貸用の建物で、一時的に空室になっているような場合は、普通建物賃貸借契約の締結であっても、変更に当たらないとした裁判例もあります。
そうすると、共有建物であっても、原則として契約期間が3年以内の定期建物賃貸借であれば、共有物の変更に当たらないので、共有持分の過半数の賛成があればできることになります。
従って、契約期間が3年以内の定期建物賃貸借であれば、お母さんとAさんが賛成すれば、Bの反対があってもできることになります。
なお、お母さんとAさんが、1階について3年以内の定期建物賃貸借を締結した場合、原則として賃料から諸費用を引いた4分の1は、Bさんに分配する必要がありますので、注意が必要です。
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大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。







