

賃貸経営をされている方にお役に立つ法律について、最新判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。
警告!騙されないようにしてください。マネーロンダリング詐欺
司法試験に合格すると、司法修習生となり、司法研修所で実務の研修をします。現在の修習期間は1年ですが、私が司法試験に合格した37年前は、2年でした。
司法修習生は、合格した年によって、第○期司法修習生と呼ばれるのですが、私は、第43期司法修習生でした。
先日、この第43期司法修習生の35周年の同窓会があり、出席してきました。当時の司法試験合格者数は、年間500人強で、司法研修所では、50人ずつ10組に分かれて、教室で高校生のように机を並べて実務の勉強をしたのですが、同窓会では、この約500人のうち約300人が出席していました。
2次会は、クラス毎に分かれて居酒屋に行きましたが、話すことと言えば、孫のこと、病気のこと、引退のことばかりで、やっぱり年を取ったんだなと実感しました。
さて、今回は、賃貸経営とは直接は関係しませんが、大家さんのお父さんが騙されそうになったマネーロンダリング詐欺のお話です。
先日、ある大家さん(Aさん)から、「父(85歳)が詐欺に遭っているかもしれないので、話を聞いてやって欲しい。」と言われました。
私が、Aさんに、「お父さんからは、どんな話を聞いていますか?」と聞くと、Aさんは、「父は、警察官と守秘義務契約を結んだから、弁護士さんにしか話せないと言って、何も話してくれないのです。」と言っていました。
そこで、早速、Aさんのお父さんに事務所に来てもらい、お話を伺いました。
お父さんの話の概要は、次のとおりです。
・ある日、自宅に電話があり、「警察の者だが、○○銀行××支店にあなた名義の預金口座が開かれ、マネーロンダリングで使われているようです。」と言われた。お父さんが、半信半疑で聞いていると、電話の相手は、お父さんの家の電話番号を知っていただけでなく、名前と生年月日を正確に知っていた、お父さんは、とても驚いた。
・極秘捜査なので、守秘義務契約を結ぶといわれ、お父さんが承諾すると、「録音しましたから、違反するとペナルティがあります。」と言われた。
・この事件の番号として、12345678というような、8桁の数字の番号を言われた。また、何かの公文書番号として、123456というような、6桁の番号を言われた。
・電話の相手は、最初は警察官と言っていたが、「これから、検事に替わります。」と言って、検事が電話口に出てきた。
・その後は、ラインを作らされ、ラインでも連絡を取るようになった。
・ラインか電話かよく覚えていないが、「他にも、マネーロンダリングに使われている口座があるかもしれないので、あなたの持っている預金口座の銀行名、支店名、口座番号、暗証番号、現在の残高を教えて欲しい。」と言われて、全て教えてしまった。
・「全ての預金口座を調べるために、一旦それらの預金口座内の預金を避難させる必要があるので、警察の方で、新しくあなた名義の預金口座を作る。そのために、免許証かマイナンバーカードの画像を送ってほしい。」と言われ、送ってしまった。
・預金口座ができたので、その預金口座に、当面の生活費だけを残して、他の預金を全て送金して欲しいと言われた。
弁護士が聞けば、直ぐに嘘だらけと分かる内容ですので、私は、お父さんに、「明らかに詐欺ですので、送金してはいけません。明日、警察に相談に行ってください。」と言いました。
お父さんは、ホッとしたように、「相談して良かった。最近このことが気になって、何も手に着かなかった。明日、警察に行ってきます。」と言っていました。
相手の話のどこから、嘘とわかるのでしょうか。
・ある日、自宅に電話があり、「警察の者だが、○○銀行××支店にあなた名義の預金口座が開かれ、マネーロンダリングで使われているようです。」と言われた。お父さんが、半信半疑で聞いていると、電話の相手は、お父さんの家の電話番号を知っていただけでなく、名前と生年月日を正確に知っていた、お父さんは、とても驚いた。
→これらの個人情報は、いろいろなところから流出し、ネット上で、やりとりされています。
また、警察官は、まず所属を言います。
・極秘捜査なので、守秘義務契約を結ぶといわれ、お父さんが承諾すると、「録音しましたから、違反するとペナルティがあります。」と言われた。
→警察は、守秘義務契約など結びません。
また、電話で話したことを、「録音しましたから」などと言いません。
・この事件の番号として、12345678というような、8桁の数字の番号を言われた。また、何かの公文書番号として、123456というような、6桁の番号を言われた。
→通常、事件番号や文書番号には、担当する公務所がどこか分かる用語や何年のどんな種類の事件あるいは書類かわかる文字が入りますので、全部数字などということはありません。
・電話の相手は、最初は警察官と言っていたが、「これから、検事に替わります。」と言って、検事が電話口に出てきた。
→警察と検察は、別の組織で、同じ役所では仕事をしていませんので、警察官からかかってきた電話に、その場で検察官が出ることはありません。
・その後は、ラインを作らされ、ラインでも連絡を取るようになった。
→警察官は、民間人とラインでやりとりなどしません。
・ラインか電話かよく覚えていないが、「他にも、マネーロンダリングに使われている口座があるかもしれないので、あなたの持っている預金口座の銀行名、支店名、口座番号、暗証番号、現在の残高を教えて欲しい。」と言われて、全て教えてしまった。
→警察官は、電話で、このような重要な個人情報を聞いたりしません。
・「全ての預金口座を調べるために、一旦それらの預金口座内の預金を避難させる必要あるので、警察の方で、新しくあなた名義の預金口座を作る。そのために、免許証かマイナンバーカードの画像を送ってほしい。」と言われ、送ってしまった。
→警察が、民間人に代わって、その人の預金口座を作ることはありません。
また、ラインで、免許証やマイナンバーカードのデータを送信させたりしません。
・預金口座ができたので、その預金口座に、当面の生活費だけを残して、他の預金を全て送金して欲しいと言われた。
→警察が、お金の送金を指示することはありません。
つまり、最初から最後まで、全部真っ赤な嘘と言うことです。
ただ、警察や検察の実務を知らない人が、この電話の話を聞くと、信じてしまいそうです。
お父さんも、事件番号とか公文書番号という言葉を言われ、検察官が電話に出たので、信じてしまったと言っていました。
しかし、お金を送るという話が出たときに、「なんで?」と疑問に思ったそうです。
とにかく、おかしいと思ったら、本当の警察署に行って相談するのが、最も賢明な対応です。
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大谷 郁夫Ikuo Otani弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。
仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。







