

相続の税務や贈与について、遺産を分割する場合に注意すべきこと、法人税など他の税法との関連、税務署の調査官の考え方などにも言及した実務アドバイスです。
住宅取得資金贈与の前に知っておきたいあれこれⅡ
―「住宅用の家屋の新築・取得又は増改築をする」の本当の意味―
今回は、「住宅取得資金贈与」という文言の「取得」について少し掘り下げて考えてみたいと思います。
前回、土地の購入時にしか贈与された資金を充てていない場合は、特例の「住宅取得資金」には、該当しないことをお話ししました。
そもそも、贈与分を「住宅」の「取得資金」に充てるとは、どういう支出に充てることをいうのでしょうか。
通常、住宅を新築・取得する場合には、土地や建物そのものの対価以外にも、さまざまな費用が掛かります。ざっとあげてみます。
どこまでが「取得」の費用として非課税の特例対象となるか、考えてみてください。
売買で購入した場合は、
①売買契約書に貼付した印紙代
②不動産仲介手数料
新築や増改築の場合には、
③設計費用
新築・取得に限らず
④住宅用家屋と一体として取得した電気設備など付属設備
⑤不動産取得税等及び登録免許税
資金調達のためには
⑥ローン関係手数料など
ほかにも、家具など調度品を揃えるための費用や、引っ越し費用などトータルで考えてみるとどんどん膨らんできます。
改めて、受贈者の要件4(前月分のコラムより)を見てみましょう。
「4贈与年の翌年3月15日までに、住宅取得資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築・取得又は増改築をする」
贈与税の特例が認められる住宅取得資金の対価とは、取得(売買)の場合はその売買金額(同時購入の敷地も含む)です。新築 (住宅新築に先行して取得する敷地を含む)及び増改築(増改築とともに取得した敷地を含む)の場合は、その住宅用家屋の工事請負金の額とされています。これに充てないと贈与税は非課税にならないわけです。(たとえ、ほかの条件がすべてクリアされていても。)
上の①~⑥のうち、特例でいうところの住宅取得資金になるものは③と④くらいかと思われます。
③の設計費については、家屋の建築をするためには直接必要な費用とされています。仮に実際の建築業者以外の建築士に別注した場合でも、請負代金には含まれないものの、建物本体価格を構成するものと考えられています。そのため、新築の対価や増改築の直接費用として「住宅取得資金の対価」として計上して問題はありません。
④家屋と一体で取得した電気設備等については、少し、考え方が違います。本来的には、建物本体とは言えないのですが、新築工事の請負代金の額や、売買代金の額に含まれた状態で取引されるのが通常です。そのため、区分が困難であることから新築等の対価に充てられたとして差し支えないものとして取り扱うことができます。また、増改築の場合も、家屋と一体となって効用を果たす設備の取り換えや取り付け工事を含むこととされています。
①、②、⑤、⑥は、どれも確かに住宅の取得に関連した費用ですが、売買代金や請負代金にはあたりません。贈与を受けた資金をこれらの間接費用に充てた場合は、非課税にはならないため、自己資金、借入なども含め総合的に資金プランを立てる必要があります。どこに贈与された資金を投入するのかを考慮に入れて、その結果を適正な登記内容に反映させなければならないからです。
例えば、お金に色がついていないと言っても、家屋代金の支払いや登記をすました後に現金贈与を受けたりしては、取得のための支払い時には贈与以外の金銭を充てているのは明白ですよね。申告書提出後、忘れたころに税務署から指摘を受けてしまうかもしれません。
この特例を適用するには、支出の内容だけでなく、タイムスケジュールの管理がかかせません。
なぜなら、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに「住宅用の家屋を取得」しなければならないからです。
土地は、あくまで「居住用家屋」のオマケのようなものなのですから、土地を先行取得して、その持分を含めて特例対象としたい場合はなおさらです。
もしも、12月に土地を購入してしまうと翌年3月15日までに、家屋を建築してしまうということは、ちょっと難しそうです。
それならば、1月に土地の引き渡しを受け、贈与もそのころに行うと家屋の建築に1年以上の期間の余裕をもつことができます。(翌年の3月15日なりますから。)
特例の場合は、要件をクリアすることが、重要であり、一つでも欠けていると認められないことがほとんどです。その確認のための添付書類は必ず準備してください。(税務署も厳しくチェックするところです。あとで、指摘をうけてからだと、その資料を取得するのが難しいこともあります。)
また、特例の説明の中には、「住宅用の家屋の新築又は取得」という表記が度々でできます。
実は使い分けていて、施主として戸建てを新築する場合は「新築」、分譲マンションや建売住宅を購入される場合は「取得」とされており、取り扱いが異なる部分がありますので注意が必要です。
請負契約による「新築」は、新築に準ずる(翌年3月15日において屋根を融資、土地に定着した建造物と認められる状態)場合も、完成後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが確実な場合には、状況等を説明する一定の書類を提出することにより、最大、贈与を受けた翌年の12月31日まで、完成して居住する期限を待ってもらうことができるのです。
その場合も、贈与資金の全額を翌年3月15日までに、その家屋等の対価として支払っていないとならない点を、延ばしてはもらえません。
もちろん、贈与税の申告の際に提出することができなかった登記内容や居住した事実などを明らかにする書類などを、後日その都度税務署に提出する必要もあります。
他方、分譲マンションや建売住宅の「取得」は売主から引渡しを受けたことをいいます。ということは、ほぼ完成していたとしても、引き渡しを受けていなければ、特例を適用することはできないのです。言い換えれば、出来上がりを待ってもらえません。
この例を見てください。
令和8年にモデルルームを見て、分譲マンションの購入を契約。
令和8年に贈与を受け、購入代金に充当済み。
令和9年4月の完成予定。令和9年3月15日は、当然躯体工事も済み、屋根もあり、内装工事中。
ところが、このケースは、特例を適用することはできません。
分譲マンションでは、令和9年3月15日までに「引き渡し」を受けていないので、特例が適用できないことになってしまうのです。
「住宅取得資金の非課税」の特例は、居住用家屋がいつ「新築」できるのか贈与の翌年にずれ込むときは3月15日の工事進行はどこまでか、又は引渡しをうけて「取得」できるのか、その見極めをする必要があります。その日から逆算して、自己資金とともに、贈与資金をどの支払いに充てるのかを、贈与時期なども合わせて計画的に考えて、ミスのないようにしていただきたいと思います。
すべて、終わってしまってからだと、変更ができないこともあり、特例が認められないという最悪のケースになってしまっては大変ですから。
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