

相続の税務や贈与について、遺産を分割する場合に注意すべきこと、法人税など他の税法との関連、税務署の調査官の考え方などにも言及した実務アドバイスです。
『お金の使い方』
税金とは直接関係はないのですが、実は私「お金」の使い方に少し興味があります。
フィナンシャルプランナーとしての視点もさることながら、職業病というか、長年税務調査に携わってきた悪癖なのか、ついついキャッシュフローに目がいってしまうのです。(自分のことは棚に上げているくせに、です。)
ある日、相続税の申告が完了したことをご報告に上がった時のことです。
「すいません。相続税の報酬のお支払いをもう少しあとにしてもらってもよろしいでしょうか。」と奥様から、お話をいただき少し驚きました。(十分なご遺産がありましたので。)
「ええ、それは大丈夫です。」と答えましたが、何かご事情があるご様子。
ご主人が亡くなられて、奥様とご長男が相続人。ご長男のご家族4人という3世代同居のご家族です。後をご長男に託して、ほとんどの財産をご長男に相続させるとの遺言による申告を提出したあとのことでした。
不動産を多数所有しておられることから、先代の相続時には相続税で少し苦労したとうかがっていました。
そのこともあってか、生活費を親世代が負担して、相続財産を少なくするとともに納税資金をご長男の預金で確保させようという相続対策を長年続けてこられたようです。
ご自慢のお孫さんの教育費もすべておじい様であるご主人がご準備されて、そのかいあって難関大学に合格されたとのことでした。
ところが、ご長男が、一家のすべての責任が一度にのしかかったプレッシャーのせいなのでしょうか、家出してしまったらしいのです。
「事件などではないことまでは確認できたものの、まだ、自宅にはもどってきていないのです。自由に使える預金も今の私たちにはほとんどなくて、何とか息子の相続税は、立て替えて支払うことができましたが、必ずお支払いしますので。」と。
その後、しばらくして報酬を頂戴し、少し落ち着かれたようで安堵いたしました。
確かに、相続税は大きなウエイトを占める問題ではあります。けれども、相続税のためにご自身やご家族の生活を必要以上に制限したり、変更したりするものではないと思うのです。
まずは、ご自身の生活を守ることを一番に考えていただくべきだと思います。
援助や投資は、余力の部分で検討していただくのが基本です。
また、別の方からはこんなご相談も。
ご主人の相続後に、遺族年金になり、収入が減少したにもかかわらず、今まで通りの資金援助を子供や孫にしていたのですが、気が付いたら老後の資金が急激に減ってしまっているのであわてているとのこと。
ご家族を気遣って言い出せなかったようですが、今後想定されるご自身に必要な資金を考慮して、支出を抑えていただくようご提案させていただきました。
(税理士の職分を少し逸脱しているかもしれません…。)
その方もこころを決めて、今後はいままでどおりの援助は難しいと切り出したところ、ご長男、ご長女とも「自分たちでやっていけるよ。お母さんには、もっと自分のためにもお金をつかってほしいと思っていた。」「早く話してくれればよかったのに、お母さんごめんね。ありがとう。」とおっしゃったとのことです。
遺言作成や遺産分割のアドバイスの折には、必ず親世代の生活をまず主眼に置いて、特にご主人が亡くなられた場合は、奥様の今後の生活費や施設入居費用などを考慮していただきたい旨をお伝えしています。
もちろん、相続税対策も子や孫へのサポートも大切なことですが、何事もバランスが重要でご自分の生活が立ち行かなくなってしまっては本末転倒ではないでしょうか。
長寿国の日本、ライフスタイルも変化しています。家族構成も多様化しています。
「お金」は「使い方」(貯蓄や投資も含めて広い意味で)にこそ価値があります。今一度、ご自分の「お金の使い方」について考えてみてください。
それは、ご自身とご家族の未来を考えることなのです。
特にお仕事をリタイアしたタイミングや、相続が発生し遺産分割が必要になった時など、節目に当たるときには、「お金の使い方」や「お金の管理」について考えてみるよい機会ではないかと思います。
その後も、ライフスタイルは変わっていきますので、5年おきを目安に見直ししていただくことも大切です。
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