

相続の法律制度(民法と相続税法の相続財産を巡る取扱の違い等)について、弁護士が解説したアドバイスです。
えっ、まだ効力が残っているの? 遺言内容のアップデートの必要性
2月中旬に、東京都内で気温が20度に達した日がありました。テレビのニュースでは、5月上旬の陽気と説明していました。
ところが、その数日後、一日中冷たい雨が降り、最高気温は10度に達しませんでした。とはいえ、まだ2月中ですから、時期的には、当たり前の気温に戻っただけです。
その日、仕事を終えて自宅に帰ったところ、自宅の玄関の階段に、一匹の大きなカエルが、まるで凍えているようにじっとしていました。
私は、動物には詳しくないので勝手な推測ですが、2月はまだ寒くてカエルが冬眠から覚めるには早すぎるため、きっと数日前の異常な温かさに騙されて、出てきてしまったのではないかと思いました。
カエルを見ていると、こちらまで寒さで震えそうになりました。
さて、今回は、自分のした遺言の内容を忘れてしまい、残された家族を困惑させてしまった遺言者のお話です。
先日、こんな相談がありました。
Aさんの父親は、半年前に亡くなりましたが、父親が亡くなる前に、実家に呼ばれ、父親から、不動産などの遺産は全てお前のものになるから、後は頼むと言われたそうです。
Aさんの母親は、10年ほど前に亡くなっており、また、Aさんは、一人息子で兄弟はいません。
父親の死後、Aさんが父親の遺品を整理していたところ、父親の公正証書遺言が見つかり、その内容を確認すると、全ての遺産は、父親の後妻のBに相続させると書いてあり、また、Bが父親より先に亡くなった場合は、Bの子供のCに相続させると書いてありました。
実は、父親は、Aさんの母親が亡くなった後に、Bと再婚しました。このBには、連れ子Cがいましたが、Cはもう成人していたので、父親は、Cを養子にはしていませんでした。
ところが、Bは、病気で父親より先に亡くなってしまい、また、Cも海外に行ったまま、連絡が取れなくなっていましたので、Aさんは、この2人のことを、すっかり忘れていました。
Aさんは、「父は、亡くなる前に、遺産は全部お前のものになると言っていました。父の意思に明確に反しているこの公正証書遺言は、無効ではないでしょうか。」と質問されました。
しかし、たとえ父親が亡くなる直前にどのような意思を持っていようとも、また、それを明言していようとも、遺言書という形で残しておかないと、結局、その意思や言葉は、何の効力もありません。この場合、他に遺言があれば、その遺言が効力をもつのです。
恐らく、父親は、Bが父親より先に亡くなった場合には、Cがすべての遺産を相続するという予備的遺言をしたことを忘れており、Bが先に亡くなったので、もう公正証書遺言には効力がないと思い込み、亡くなる直前に、Aさんに対し、「遺産は全部お前のものになる。」と言ったのでしょう。
このような予備的遺言は、公正証書遺言を作成する場合には、しばしば行われます。遺言者、特に男性の遺言者は、配偶者や子供が、自分より先に亡くなるなどとは思っておらず、念のためという程度の軽い気持ちで予備的遺言をします。
このため、今回のケースのように、予備的遺言をしたこと自体を忘れてしまうことがあり得ます。
Aさんが親族に相談したところ、親族から、「Bは亡くなっているし、Cは行方不明なので、そのままお前が相続してしまえばいい。」と言われたそうです。
確かに、父親は、Cと養子縁組していないので、戸籍上、父親の相続人はAさんのみですから、この公正証書遺言はなかったことにして、父親の遺産を相続してしまうことは可能です。不動産の相続登記も、特に問題なくできるでしょう。
しかし、万が一、Cが帰国して父親が亡くなったことを知り、公証役場で公正証書遺言書を検索して発見すれば、Aさんは、全ての遺産を取り戻されてしまいます。
それどころか、遺言書を隠匿したとして、相続権自体を奪われてしまうかもしれません。
では、このような場合、どうしたらよいのでしょうか。
Cの行方が分からないのであれば、Cの財産管理人の選任を家庭裁判所に申請し、家庭裁判所の選任した財産管理人を相手方として、遺留分侵害額の請求をするということになると思います。
いずれにせよ、遺言書を作成した人は、配偶者や子供の死亡などの親族関係に変動があったときは、遺言の内容を確認し、必要な変更をするように心がけるべきでしょう(もっとも、遺言書作成後に認知症などで遺言者が遺言能力を失ったときは、打つ手はありません)。
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