

相続の法律制度(民法と相続税法の相続財産を巡る取扱の違い等)について、弁護士が解説したアドバイスです。
限定承認という選択(2)
2025年1月のコラムで限定承認という選択(1)をお届けしました。遅くなってしまいましたが今回はその続きです。
(1)では、限定承認とはどういうものか、限定承認のメリットと注意点などを説明して、限定承認という選択も十分に検討に値するけれども、面倒な手続が待っているというところまでお話ししました。
今回は、限定承認の申立てとその後の具体的な手続についてご説明していきたいと思います。
1 限定承認の申述(申立て)
限定承認の申立ては、家庭裁判所に申述書を提出することによって行います。提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。そのため、被相続人の戸籍の附票または住民票の除票を取り寄せておく必要があります。
そのほかにも、申述人(申立人)が被相続人の相続人であることを示すため、申述人自身(相続人が複数のときはその全員分)の戸籍謄本も必要ですし、相続人全員で申述を行ったことがわかるよう、被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本も必要となります。
限定承認を行う旨の申述書とともに相続財産の目録を提出する必要がありますが、目録は完全なものである必要はなく、申立ての時点でわかっている範囲で記載しておけば結構です。
申立てにあたっては、相続人全員が共同して行う必要があること、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に行わなければならない(ただし家庭裁判所に申立てをしてその期間を伸ばしてもらうことができます)という期間制限があることに注意する必要があります。
限定承認の申立てを行うと、家庭裁判所から書面で照会したり直接事情を聴かれたりする場合がありますが、とくに問題がなければ限定承認の申述が受理されます。
その際、相続人が複数いるときは、家庭裁判所によってそのうち1人が相続財産清算人に選任されます。申立前に相続人間で話し合って相続財産清算人となる者を決めておき、申立書にその者を相続財産清算人に選任してほしい旨を記載しておけば、通常はその者が選任されます。
2 相続債権者及び受遺者に対する公告・催告
限定承認の申立てが受理されると、限定承認をした相続人が1人のときはその者が、相続人が複数のときは家庭裁判所に選任された相続財産清算人が相続財産の管理を行い、相続債権者への弁済に向けての手続を行うことになります。
限定承認をした相続人(相続財産清算人がいるときはその清算人)は、限定承認が受理された日(裁判所から送られてくる限定承認申述受理通知書を受領した日を基準とします)から5日以内(清算人が選任された場合は選任の日から10日以内)にすべての相続債権者と受遺者に対して、①限定承認の申述が受理されたこと、②一定の期間内(最低2ヶ月以上とされています)以内に債権の届出をするよう公告しなければなりません。
公告は、具体的には官報に掲載して行います。掲載する文書は、官報販売所などに官報公告をしたい旨を伝えれば文案を送ってきてくれます。
具体的な掲載文は次のようになります。
限定承認公告
本籍 〇〇県〇〇市…
最後の住所 〇〇県〇〇市… 被相続人 亡〇〇〇〇
右相続人は令和〇年〇月〇日死亡し、その相続人は令和〇年〇月〇日〇〇家庭裁判所にて限定承認をしたから、一切の相続債権者及び受遺者は、本公告掲載の翌日から2ヶ月以内に請求の申し出をして下さい。右期間内にお申し出がないときは弁済から除斥します。
令和〇年〇月〇日
相続人住所
相続財産清算人 〇〇〇〇
なお、相続人が自分の住所を官報に掲載したくないときは、弁護士を代理人に選任しておけば、その弁護士の事務所の住所を記載すれば大丈夫です。
また、限定承認をした者(または相続財産清算人)は、官報公告とはべつに、判明している相続債権者及び受遺者がいるときは、個別に官報公告の場合と同様に請求の申し出をするよう催告しなければなりません。
なお、債権者間の公平をはかるため、申出期間が満了するまでは、債権者等から支払いを請求されても拒絶することができます。
3 弁済の為の準備
公告・催告を行ったあとは、相続財産の範囲内で相続債権者らに対する弁済を行うため、必要があるときは相続財産を売却してお金に換えていく作業に入ります(換価)。
この手続や弁済のプロセス等については残った字数では書ききれないので、またあらためてとさせていただきます。
この記事を読んだあなたにおすすめの記事







