競売による不動産の購入手続について
1 競売とは
競売とは、債務者が約定どおりに債務の支払ができない場合に、債権者が裁判所を通じて不動産を売却し、債権を回収するための手続です。以下の強制競売と担保不動産競売の2つの手続があります。
① 強制競売
物件所有者に金銭の支払いを命ずる判決等の公文書により、その所有者の不動産を差し押さえて売却し、その代金を債権者に配当する手続です。
② 担保不動産競売
抵当権等が設定された不動産を売却し、その代金を債権者に配当する手続です。
2 競売不動産は誰でも購入できる
不動産の競売の手続には原則として誰でも参加することができ、競売不動産は誰でも購入することが可能です。
ただし、競売事件の債務者については、自らが債務の支払をしないために競売となったわけですから、資金があるのであれば、まずはその債務の支払をすべきですので、買受けの申出をすることはできません。
これに対し、担保不動産競売の場合の債務者以外の者が対象不動産の所有者である場合(物上保証人)は、自己の不動産を確保するために買受けの申出をすることは可能です。
また、暴力団員及び暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者も買受けをすることはできません。
3 無剰余の取消し
競売の申立てをした債権者に売却代金の配当がなされないこと(無剰余)が判明したときは、裁判所は競売の手続を取り消さなければなりません。
不動産上の抵当権者や税金等の徴収機関は競売手続において優先権弁済権を有しているのに対し、一般債権者には優先弁済権がありません。競売の対象となる不動産には多数の抵当権が設定されていたり、不動産所有者である債務者が税金を滞納しているケースも多く見受けられます。
そのような不動産については、一般債権者が配当を受けられないことが多く、競売により売却に付される不動産は、1の①強制競売でなく、②担保不動産競売によるものが多いのが実情です。
4 競売手続の基本的な流れ
(1) 競売申立て・競売開始決定
債権者による競売の申立てがなされ、その申立てが適法であると認められると、裁判所は、競売手続を開始し対象不動産を差し押さえる旨を宣言する開始決定を発します。開始決定が発せられると対象不動産の登記簿に「差押」の登記が裁判所からの嘱託によりなされます。
(2) 現況調査、評価と物件明細書の作成
その後、執行官が対象不動産の現況を調査して現況調査報告書を、評価人が対象不動産の評価額を算出して評価書をそれぞれ裁判所に提出します。それらの資料に基づいて、裁判所は売却基準価額を決定し、対象不動産に関する裁判所の認識を記載した物件明細書を作成して、売却手続に付します。
(3) 売却手続
売却手続に付されると、裁判所は期間入札について公告を掲示し、その写し並びに①物件明細書、②現況調査報告書及び③評価書の写し(①~③をまとめて「3点セット」といっています。)を編綴したファイルを裁判所に備え置くことにより、買受希望者等の閲覧に供します。現在では、裁判所での備え置きに代わるものとして、裁判所が運営するインターネットシステム(BIT 不動産競売物件情報サイト)上での公開もされています。
期間入札とは、入札期間(1週間以上1か月以内の期間。東京地裁では原則8日間)を定め、その期間内に買受希望者に郵送などの方法で入札参加をさせ、開札期日に執行官が開札をして最高価買受申出人を定める方法です。従前は特定の入札期日に裁判所に出頭してその場で入札する形がとられていましたが、悪質な競売ブローカーが一般の買受希望者の入札を妨害するといった事態が生じており、それを改善するために導入されたものです。入札をする際には、原則として売却基準価額の2割の買受申出保証金を納付することが必要です。
期間入札で買受の申出をする者がいなかった場合には、先着順で買受人を決定する特別売却に付されます。
(4) 売却許可決定
開札期日に一番高い金額で入札した最高価買受申出人が決まると、売却決定期日において、その者に売却を許可するか不許可とするかの審理・決定がなされます。最高価買受申出人が債務者であるなど欠格事由があるとき、悪質な競売ブローカー等の関与があったとき、暴力団員等の手続関与があったとき、売却基準価額の決定手続に重大な誤りがあったとき、物件明細書の作成手続に重大な誤りがあったときなどは売却不許可事由に該当し売却が不許可となりますが、そのような問題がなければ売却許可決定が出されます。
(5) 代金納付・所有権移転
売却許可決定により買受人となった者は、入札申出額から保証金額を控除した残代金を裁判所に収めることになります(代金納付)。この納付によって、不動産の所有権が買受人に移転します。期限までに代金を納付しないと買受ける権利を失い、買受申出のために提出された保証金も返還されません。代金が納付されると裁判所は、登記所に所有権移転登記を嘱託します。
(6) 配当
裁判所は、配当期日において、差押債権者や配当要求をした他の債権者に対し、売却代金を配当します。裁判所は、法律で規定される権利の順番等に従って配当表を作成し、その配当表に基づいて配当が実施されます。
5 3点セット
競売不動産の買受希望者が購入を検討する上で重要な資料となるのが、現況調査報告書、評価書、物件明細書の3点セットです。前述のようにこの3点セットは、裁判所に備え置かれており、インターネットシステムでも閲覧することが可能です。
(1) 現況調査報告書
執行官が対象不動産の現況について調査した報告書です。土地の現況地目、建物の種類・構造など不動産の現在の状況のほか、不動産を占有している者の氏名やその者が占有する権原を有しているかどうかなどが記載され、不動産の写真などが添付されています。買受希望者にとって一番関心があるのが、対象不動産の占有状況であると思われますが、その情報がここに記載されています。
(2) 評価書
裁判所が任命した評価人(通常は不動産鑑定士です)が、対象不動産の評価額及び評価の過程を記載した書面です。不動産競売市場は、売主の協力が得られず、事前に物件内に自由に立ち入ることができない上、代金を即納しなければならないなどの特殊性があるため、評価額算出に当たっては競売市場修正として20%程度減価することとされています。
この評価額に基づいて対象不動産の売却基準価額が定められます。買受申出額は売却基準価額の8割以上でなければならないとされています。
評価書には、評価額の他に、対象不動産についての都市計画法、建築基準法等の公法上の規制も記載されており、その土地上にどのような建物が建てられるかを把握することができます。
(3) 物件明細書
対象不動産について、買受人が引き受けることとなる権利関係などの情報が記載されている書面です。買受人がそのまま引き継がなければならない賃借権などの権利があるかどうか、土地か建物だけを買い受けたときに建物のために地上権が成立するかなどの事項が記載されています。
物件明細書は、記録上表れている事実とそれに基づく裁判所の認識を記載したものにすぎず、当事者の権利関係を確定するものではありません。したがって、新たな事実の発生・発覚によって権利関係や対象不動産の状態が変わることもあるので注意が必要です。
6 内覧
従前、買受希望者が競売不動産の内部に立ち入って見学をすることはできませんでしたが、入札価額が低額となる一因と指摘されていたことより、平成15年の法改正により、売却実施前に執行官が買受希望者を競売不動産に立ち入らせて内部を見学させる内覧制度が新設されました。
内覧は、より高額での売却に有益である反面、現場でのトラブルのリスクもあることから、差押債権者の申立てがあることが必要です。申立てがあり、対抗権原を有する不動産占有者の同意があった場合には内覧実施命令が発令され、参加申出の期間、内覧実施日が公告されます。内覧を希望する者は、執行官に参加の申出をし、執行官は参加申出をした者のために内覧を実施しなければなりません。
ただし、執行官は強制的に解錠をすることはできず、占有者が存在せず所有者と連絡がとれない場合や、空き家で占有者の所在が判明しない場合などは、内覧を実施することはできません。
7 引渡命令
競売不動産は、売却され代金が納付されて所有権が移転するまでは、それまでの所有者が使用することができ、売却は現状のままなされます。したがって、買受人が代金を納付して所有者になったとしても、それまでの占有者がそのまま占有している状態であることが普通です。その場合に、従前の占有者の占有を解いて、買受人が引渡しを受けることができるようにする簡易な手続が引渡命令です。
引渡命令は、競売不動産の買受人の申立てにより発令されますが、代金納付から6か月以内に申立をする必要があります。
引渡命令の相手方となるのは、競売不動産の従前の所有者と買受人に対抗できる権原を有しない現実の占有者です。抵当権の設定登記よりも前から当該不動産を占有するなどして対抗要件を備えた賃借人は、賃借権を買受人に対抗することができますので、そのような者を相手方として引渡命令の発令を受けることはできません。
引渡命令が発せられ、それが相手方に告知されてから不服申立てがされずに1週間を経過するか、不服申立てが却下または棄却されると引渡命令が確定し、買受人は引渡命令に基づいて強制執行の手続を取ることが可能となります。
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